女性誌『Suits WOMAN』で注目を集めた「貧困女子」。これは、普通の毎日を送っていたはずが、気がつけば“貧困”と言われる状態になってしまった女性たちのエピソードです。

今回お話を伺ったのは、都内のビジネスホテルの清掃スタッフとして働く、米原恵美さん(仮名・39歳)。彼女は今、東京都台東区の下町エリアにある築35年のアパートで独り暮らしをしています。

「やっと気温が下がって、害獣や害虫が少なくなってホッとしています。今日は夜勤明けなので、ちょっとお腹が空いていて……何か頼んでもいいですか?」

朝10時のファミリーレストランでインタビューだったのですが、和食のモーニングセット、サンドイッチをまたたくまに平らげ、食後に生クリームとアイスクリームが乗ったパンケーキをオーダーしました。

「掃除したり、荷物運びをしたり、夜勤明けはお腹がすくんです。家に帰って、コンビニ弁当を2個食べても足りない時があります。業務用食品を扱うスーパーで1リットルの水ようかんが売っているんですが、それもペロッと食べられるんですよね。きっと、ホテルには変な悪霊がいて、私に憑依していろんなものを食べさせるんだと思います」

恵美さんは身長166cm、体重は100kgを超えたこともあるといいます。背中のお肉がむっちりしており、毛玉だらけのブルーグリーンのチュニックははち切れそうです。素足に白い合皮のサンダル、爪は白くなっており、かかとはカサカサ。手元を見ると指先の皮がむけており、爪は噛んだような跡があります。バッグは黒い合皮のトートバッグで、薬局で処方された薬の袋、医療用ワセリンの缶、パンパンになったピンク色の長財布などが入っています。

「今、ホテルでの仕事のメインは清掃なのですが、月収が13万円くらいしかなくて。でも、来月からはシフトを増やしてもらえそうなのですが、急激に太ったから腰痛がひどいし、慢性的な膀胱炎がつらくて。1時間に1回はお手洗いに行かなくちゃならないから、デスクワークや接客業がムリなんです」

この2年間で30kg近く太ってしまったと語る恵美さん。今までのキャリアを伺うと、宮沢りえさんに憧れたステージママの影響で、小学生の頃より芸能事務所に所属。通販カタログのモデルなどをして、チャンスを待っていたと言います。

「中学時代にタレントさんと共演し、地方のCMなども出たことがあるんですよ。当時の憧れはパリコレモデル。ナオミ・キャンベルとか、ケイト・モスとかモードっぽい人に憧れて、英会話専門学校に進学し、卒業。その後は、レストランでアルバイトしながら、企業のイメージモデルのオーディションを受けまくっていました。モノ扱いされて、一瞬で判断され、落とされることに耐え切れず、22歳のときに芸能界を引退しました」

結婚はしたものの、支配しようとする夫のもとで過食に走り出す……

その後は、男性に生活の面倒を見てもらったり、一時的に結婚したりして、特に困ることもなく34歳まで過ごしていたと言います。

「普通の女の子よりもかわいいと、仕事しなくても食べていけるんですよ。でも、25歳を超えると男の人から見向きもされなくなる。若作りやダイエットを命削って頑張らないとダメで、それに疲れちゃったんですよね。私は小学生時代から、人に見られる仕事をしているから、お腹いっぱいモノを食べたことがないんですよ。誕生日ケーキも口に含んでもぐもぐしただけで、ペッと吐き出していましたからね。トップモデルの人たちが、テレビや雑誌で“ご飯もパンもバランスよく食べてます”なんて言うのは大ウソですよ。みんなほとんど食べていません」

28歳から34歳までの6年間、結婚をしていたといいます。

「地方で飲食チェーンを展開している会社の社長で、東京在住のバツ3。私は4人目の妻でした。当時住んでいた中央区勝どきのワインバーで知り合って、なんとなく流れで結婚しました。最初は楽しかったのですが、会話が噛み合わず、口論するように。彼は自分の思った通りに行動しないとイライラして、それが加速すると暴力までふるいはじめるんです。スケジュールや返事のタイミングも、彼の意のままにしないとダメなんですよね。私が太り始めると、“痩せろ”と言って外食に行っても食べ物を頼んでくれないし。私が食べると怒るから、夫が寝た後に、夫の財布からお金を抜いて、コンビニに行って3000円分くらいの食料品を買って、お腹がはち切れるくらい食べていました」

マンションの共有スペースで、コンビニ弁当、菓子パン、スイーツ、揚げ物、プリン、ケーキなどを貪るように食べる習慣が止められなかったとか。朝起きて台所にゴミがあると夫が激怒するから、食べた後は共同のゴミ捨て場に捨てに行っていたそうです。

「深夜のマンションのゴミ捨て場は、大量の黒い害虫がいて、扉を開くとサッと黒い粒粒が物陰に隠れるんですよ」

食べても食べてもお腹がすく恵美さんの好物は、デリバリーピザ。給料日の贅沢として楽しみにしている。

恵美さんをバカ扱いする夫は、連休明けにいなくなっており、秘書から半強制的に立ち退きと離婚を勧告される……〜その2〜に続きます。