モーニング娘。’17が新体制で示す、伝統と新しさ 64thシングル収録曲から分析

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 今年、結成20周年を迎えたモーニング娘。’17が64thシングル『邪魔しないで Here We Go! / 弩級のゴーサイン / 若いんだし!』を10月4日にリリースした。トリプルA面の本作は、4月に卒業を発表した10期メンバー工藤遥のラスト参加シングルであり、ハロー!プロジェクト新体制に伴い、カントリー・ガールズとの兼任という形でモーニング娘。に加入した14期メンバーの森戸知沙希の初参加シングル。人生の次のステップへと歩を進めようとする女子の心情を、ムーディに、アッパーに、メロウに、それぞれの切り口から表現した3曲となっている。

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 2017年は、ハロプロにとって激動の一年だった。ハロー!プロジェクト・キッズ時代から数えれば15年間も活動してきた℃-uteの解散と嗣永桃子の卒業。​カントリー・ガールズのメンバー、森戸のモーニング娘。、梁川奈々美のJuice=Juice、船木結のアンジュルムへの移籍とカントリー・ガールズとの兼任発表。研修生からは、段原瑠々がJuice=Juice、川村文乃がアンジュルムに加入し、一岡伶奈をリーダーとした新グループの立ち上げも発表された。この激しい人事異動に、ファンの間ではハロプロが全く別物へと変わってしまうことを危惧する者も少なくなかった。しかし、新体制移行後、初めてのモーニング娘。によるシングルは、ハロプロの伝統的な側面と新しい側面がバランス良く配置された構成になっており、新体制に懐疑的だったファンの多くも溜飲を下げるに違いない。

 「邪魔しないで Here We Go!」は、いかにもつんく♂らしいウェットな作詞作曲が光る一曲。大久保薫による編曲で、音数を抑え目にしつつも複雑な音の抜き差しで魅せていくサウンドプロダクションにも、モーニング娘。らしさが全開だ。一般的に言えば、モーニング娘。と言えば「LOVEマシーン」以降の躁的なファンク路線のイメージが強いかもしれないが、本来はこのマイナー調のダンス歌謡こそが「サマーナイトタウン」や「Memory 青春の光」といった初期から続くモーニング娘。の真骨頂。また、モーニング娘。は2012年以降、EDM路線を展開してきたが、この曲はアッパーなEDMのブームが落ち着き、よりゆっくりとしたR&B寄りのBPM、削ぎ落とされたプロダクションが主流となりつつある世界的な趨勢と奇しくもリンクしている。

 ポップミュージックの世界的な潮流とのリンクという点では、「若いんだし!」がより顕著で分かりやすい。同曲における、遅めの四つ打ちダンスビートにメロウなエフェクトを組み合わせたサウンドは、近年EDM以降のダンスミュージックシーンで一大ムーブメントとなっているトロピカルハウスの流れを汲むもの。歌メロのビルドアップ(徐々に盛り上がっていく箇所)から、ブレイクを挟んで印象的なシンセリフでドロップ(最も盛り上がるサビ)という構成も、EDM〜トロピカルハウスの基本形だ。その爽やかな曲調に、女優を目指してモーニング娘。を卒業する工藤の決意を重ね合わせ、晴れやかな卒業ソングに仕上げた点も心憎い。

 つんく♂プロデュースによる「邪魔しないで Here We Go!」「若いんだし!」の二曲は、“次なる一歩”を踏み出す心境をコインの裏表のように描き、世界的な音楽シーンの潮流を意識しつつもモーニング娘。らしさへと落とし込んだ良曲。ただ、J-POPとしては少なからずフックに欠ける部分もあるだろう。そこを更に補完するのがもう一曲の「弩級のゴーサイン」だ。つんく♂が総合プロデューサーから降りた2014年以降、ハロー!プロジェクトにソングライティング面で最も大きな貢献をしてきた作詞家の児玉雨子と作曲家の星部ショウが組み、編曲にアニソンなどを数多く手がけるYockeを迎えた同曲は、かなりアッパーなJ-ROCKナンバー。ブリッジにクラシックを思わせる壮大な転調部を入れ込み、一捻りの癖を加えている点はハロー!プロジェクトらしいとも言えるが、全体的にはライブ映えしそうな勢いのあるロックチューンとなっている。この曲は歌唱メンバーとダンスメンバーに分かれていることもあり、ライブパフォーマンスでこそ真価を発揮しそうだ。

 現在、モーニング娘。は“誕生20周年記念”と銘打ったコンサートツアー『2017秋〜We are MORNING MUSUME。〜』の真っ最中。そこでは、この最新シングル3曲はもちろんのこと、過去20年を彩る数々の名曲と、さらには未発表の新曲までが披露されている。常に形を変えつつも、20年間の歴史と伝統を受け継ぎ未来へとたすきを繋いでいくモーニング娘。。彼女たちの変わるものと変わらないもの、その両方がこの最新シングルには詰まっている。(青山晃大)