子猫の時はヒナと仲良しだが…。

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フワフワした猫の可愛らしさに癒される人は多いが、実は小動物にとっては恐ろしい凶暴な肉食獣であることを忘れている。オーストラリアでは毎日100万羽の鳥が猫に殺されているという研究を豪州の大学が発表、愛猫家の間に衝撃を与えている。

それをはるかに上回る猫による大規模な小動物の捕食被害が米国でも発表され、生態系に脅威を与えることから「CATS WARS」(猫戦争)という言葉まで生まれている。わがニャンとどう接したらよいのだろうか。

ハワイ島では海鳥を守る8キロの猫よけフェンス

J-CASTヘルスケア記者は、これまで4匹の猫を千葉県の郊外で飼ってきた。自由に野外に出る「外猫」だ。周囲には畑や森林が多く、よくネズミやモグラ、ヘビ、スズメ、ムクドリなどを捕ってくる。つくづく猫は「名ハンター」「小さなヒョウ」であると実感する。時々、家の中に鳥を生きたまま捕まえてきて放し、もう1度狩りの喜びを再現しようとする行動には閉口する。逃げ回る鳥の羽毛が飛び散るからだ。もちろん、すぐに窓を開けて鳥を逃がすが、家族が留守の時にコレをやられると、家の中は目も当てられない惨状に......。

猫の野生動物の被害は、日本でも奄美大島で国の天然記念物のアマミノクロウサギが猫に捕食されたり、小笠原諸島で海鳥の営巣地が襲われたりす例が報告されている。

AFP通信の2017年10月4日付「オーストラリアの猫、毎日100万羽以上の鳥を殺す」によると、豪チャールズ・ダーウィン大学のジョン・ウォナースキー博士は学術誌「バイオロジカル・コンサベーション」に驚くべき研究結果を発表した。毎年3億1600万羽の鳥が野生化した猫に、6100万羽がペットの猫に殺されているという。この数字は、猫の個体群密度や食事内容を調べた合計200件近い研究論文を参考に割り出した。

ウォナースキー氏はAFPの取材に対し、「猫が鳥を殺すことは誰でも知っています。豪州には数百万匹の野生猫がいますが、今回の研究で、豪州全体でみると猫による捕食が驚異的な規模であることが明らかになりました。多くの種類の鳥や小型哺乳類の減少と絶滅に拍車をかけています」と語っている。

猫の脅威は米国でも社会問題になっている。ロイター通信は2013年1月30日付「猫は小動物に深刻な脅威、年間200億匹を捕食」で、衝撃的な数字を紹介した。それによると、米国には約6000万匹の飼い猫と、その半数近い野生猫がおり、毎年、鳥37億羽と小型哺乳類207億匹が猫に殺されている。米魚類野生生物局とスミソニアン保全生物学研究所が共同で調査し、科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表した。

猫に殺されている鳥の多くはコマドリやフィンチ、コガラなどの在来種。また、都市部では外来種の大型ネズミ、郊外や農村部では在来種の小型ネズミやリス、ウサギなどが獲物になっている。研究者は「自由に歩き回る猫が一部の鳥や小動物の絶滅の一因になっている証拠が山のようにある」と指摘した。

愛猫家が多い米国では、野良猫の殺処分はほとんど行なわれず、「トラップ・ニューター・リターン」(TNR)という方法がとられるケースが多い。「捕獲・避妊手術・返す」という意味だ。野良猫が50万匹もおり、海鳥の捕食被害が大きいハワイ島では、海鳥の営巣地を全長8キロもの高い猫よけフェンスですっぽり囲う方法がとられるなど、全米各地に猫よけフェンスが無数にある。

「あらゆる手段で猫を排除」が火に油を注ぐ論争に

「ネイチャー・コミュニケーションズ」の調査発表に喜んだのが米国の愛鳥家たちだ。野鳥保護団体のスポークスマンはロイター通信の取材に「猫の飼い主や地域社会への警鐘になる。われわれも可愛くてフワフワした猫は大好きだが、この捕食者が自由に行動するのをこれ以上見過ごすことはできない。すぐにでも対策が必要だ」と語った。これには愛猫家たちが「猫を殺すのか!」と反発した。

この調査をまとめたスミソニアン保全生物学研究所の研究員ピーター・マラ氏は、その後「CATS WARS」(猫戦争)という本を出した。ナショナル・ジオグラフィック誌日本版の2016年9月13日付「野外のネコは排除されるべきか、米で議論」によると、マラ氏は「CATS WARS」の中で、野外にいる猫を捕まえて避妊手術を施してから野生に戻すという方法を批判、根本的な問題解決を図るには安楽死を含めて「あらゆる手段」を講じるべきと訴えた。

これには愛猫家団体はもちろん、生物学者までが激怒した。米コロラド大学の生態学教授マーク・べコフ氏は米ハフィントンポスト紙に寄稿、「著者がいう『あらゆる手段を講じて』のイメージは、『わなを仕掛ける、毒を盛る、殴る、銃で撃つ』などだ。科学の名のもとに暴力がまかり通るようになる」と指摘した。愛護団体会長のベッキー・ロビンソン氏も「人々の不安をかき立て、猫を悪者に仕立て上げる人々は昔から存在し、この本もその1つだ」と批判した。

一方、マラ氏はナショナル・ジオグラフィック誌の取材に、もうお手上げといった表情でこう語った。

「マスコミは私がまるで殺人鬼であるかのように書き立てていますが、私たちは人間が見ていない時、猫たちは何をしているのか、猫カメラで追跡しました。猫は野外から排除しなくてはいけません。野猫に里親が見つからず、シェルターにも空きがなかった場合、安楽死させるしか方法がないでしょう」

この発言がまた、火に油を注ぐ結果になり、全米で「CATS WARS」論争が広がっているという。