<先進国の人々が消費意欲を失って内に籠もる一方で、新興国のツアー客が世界中の観光名所にあふれる>

この夏はどこへ出掛けた? バリ? スペインのイビサ島? それとも近場のビーチ?

休暇旅行に出掛ければ、グローバル経済にささやかな貢献をすることになる。あまり知られていないが、観光産業は世界経済の強力な牽引車だ。世界旅行観光評議会によると、観光産業は世界のGDPの10%以上を占め、約3億人分の雇用を生んでいる。

その観光産業でここ10年ほど、大きな変化が起きている。世界各地の観光名所に押し寄せるのは、もはや欧米人のツアー客ではない。金融大手クレディ・スイスが行った大規模な調査では、新興国の消費者の大半が「何にお金を使いたいか」と聞かれて、「バカンス」をトップか上位に挙げた。台頭目覚ましい新興国の中間層が観光産業の「上得意」になっているのだ。

ご多分に漏れず、この分野でもブームの最大の担い手は中国人だ。国連世界観光機関(UNWTO)によると、昨年外国旅行をした中国人はざっと1億3500万人。彼らが使ったカネは2610億ドルで、ギリシャやポルトガルのGDPを上回る。

ドナルド・トランプ米大統領は中国の「不正な貿易慣行」をやり玉に挙げるが、アメリカの旅行業界はカナダ人、メキシコ人に次ぐ最大のお得意さまになりつつある中国人観光客の誘致に余念がない。旅行業界の関係者がいま一番知りたがっているのは、「中国人観光客を引き付けるのは何か」だ。

答えはずばりショッピング。米商務省旅行観光局の調べによると、中国人旅行者が最優先するのは買い物で、僅差で観光、その後に食事が続く。

「希望の格差」が広がる

アメリカの大手ホテルチェーンは早くから中国人客のニーズに応えようと、かゆや麺類をホテル内のレストランのメニューに加えるなどサービスに努めてきた。

メリーランド州に本社を置くホテルチェーン、マリオットは今年8月、中国の電子商取引最大手アリババ・ドットコムとの提携を発表。アリババ傘下の電子決済サービス、支付宝(アリペイ)で宿泊料を支払えるなど、中国人客の便宜を図る。

マリオットだけではない。ラスベガスのカジノホテル、シーザーズ・パレスも中国人客のためにアリペイの主要なライバルである微信(WeChat)の決済プラットフォームで支払いができるサービスを導入している。

[2017.10.10号掲載]

アフシン・モラビ(ジャーナリスト)