<先月の議会選挙でメルケルの4期目続投は確実になったが、反EUの極右政党の躍進に押されて独仏協調のEU改革は困難に>

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は4期目の続投を確実にしたが、その表情は冴えない。

9月24日に実施された連邦議会選挙(下院選)でメルケル率いる与党・キリスト教民主・社会同盟(CDU・CDS)は第1党の座を維持したものの、得票率は33%で過去最低レベル。呉越同舟のゴタゴタを覚悟で新連立を組むか、前例のない少数与党政権を発足させるしかない。

しかも今回の選挙では極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が国政進出を果たし、議会の第3党に躍り出た。

一方で中道左派の社会民主党(SPD)は惨敗を喫し、連立から離脱。メルケルは企業寄りの第4党・自由民主党(FDP)、第6党でFDPとは反りが合わない緑の党と大連立を組む可能性が高い。

今回の結果と対照的なのは、今年4〜5月に行われたフランスの大統領選挙と6月に行われた国民議会選挙(下院選)だ。エマニュエル・マクロンは大統領選の決選投票でほぼ3分の2の票を獲得。下院選では彼が率いる「前進する共和国(REM)」が、共闘を組む政党と合わせて国民議会の6割強の議席を獲得した。

マクロンの圧勝を受けて、メディアは一斉に「欧州の民主主義を脅かすポピュリズム旋風に歯止めがかかった」と歓喜の声を上げた。欧州統合を引っ張ってきたドイツとフランスが再び「1つの欧州」の旗振り役となり、延び延びになっていた改革を主導して、EUの経済的・政治的基盤を強化する――そんな期待も膨らんだ。

だがメルケルの「苦い勝利」で欧州の民主主義とEUの統合推進の行方は楽観視できなくなった。現状ではメルケルの続投はむしろEUの結束にマイナスになりかねない。

ドイツの今回の選挙結果を見て、フランスに続きポピュリズム勢力を抑え込めたと思うのは誤りだ。独仏の選挙制度は異なるから単純な比較はできないが、試しにドイツの今回の議会選とフランスの議会選の第1回投票を比べてみると、結果はほとんど変わらない。

フランスもドイツも与党は3分の1前後の票を獲得。フランスの極右政党・国民戦線もドイツのAfDも得票率は13%前後だった。フランスの極左の得票率は14%前後。ドイツの極左政党の得票率は9%前後にすぎなかったが、緑の党には中道に加え極左グループが含まれているから、極右と極左のポピュリズム勢力はドイツでもフランスでも同程度の力を持つとみていい。

[2017.10.10号掲載]

エリック・ジョーンズ(ジョンズ・ホプキンス大学ヨーロッパ研究教授)、マティアス・マティース(同助教)