10月6日午前、希望の党は次期衆院選の選挙公約を発表した(写真:日刊現代/アフロ)

「これまでのアベノミクスに代わりましてと申しましょうか、それに加えましてと言った方が正しいかもしれませんが、マクロ経済にもっと人の気持ちを盛り込んだ、『ユリノミクス』とでも称します、こういった政策をしっかりと入れ込んでいきたいと考えております」

希望の党は10月6日午前、衆院選の選挙公約を発表した。壇上に上がった同党代表の小池百合子東京都知事は、「消費税増税凍結」「原発ゼロへ」「憲法改正」を3本柱とすること、そして「『希望への道』しるべ」として仝業ゼロ、隠ぺいゼロ、4覿斑賃慮ザ皀璽蹇↓ぢ垉〇童ゼロ、ゼ動喫煙ゼロ、λ員電車ゼロ、Д撻奪箸了処分ゼロ、┘奸璽疋蹈好璽蹇↓ブラック企業ゼロ、花粉症ゼロ、移動困難者ゼロ、電柱ゼロの「12のゼロ」を打ち出すことを明言した。

「キボウノミクス」ではないのは何故?

これらの政策について、政府・与党からは批判が相次いでいる。菅義偉官房長官は同日の会見で、「選挙の前に示された政策が具体的にどう示されて行くのか、国民にしっかり説明される必要があるだろうと思う」と中味の不完全さに言及した。

自民党の片山さつき政調会長代理もツイッターで、「いろんな政党が過去に持ちだしたテーマを拾い集めて並べ、ゼロ、で語呂合わせしたように見え、『政策』と呼べるほど煮詰まってない!」と批判した。

それにしても、希望の党の公約が「キボウノミクス」ならともかく、「ユリノミクス」とはどういうことか。公約発表以前に一部に流布された政策集では、「コイケノミクス」と称している。

そもそも小池知事は、「次期衆院選での出馬はない」と断言している。民進党の前原誠司代表が強く出馬するよう説得したにもかかわらず、頑として受け入れなかった。

にもかかわらず、「ユリノミクス」とは、あたかも小池知事が国民と約束するかのような名称である。やはり小池知事はぎりぎりのタイミングで衆院選に出馬するのではないか。さもなければ、「ユリノミクス」などと自分のファーストネームを入れ込んだ公約を掲げはしないだろう。

都議会公明党との微妙な関係

都議会の最終日である10月5日、多くのことが動いた。

国政で自民党と連立を組む公明党は、小池知事の国政転出に強く反対してきた。小池知事が9月25日に希望の党代表に就任した時、連携の解消も囁かれた。だがここに来て、連携の解消はなくなった。理由は都議会の最終日に、公明党が推進してきた「子どもを受動喫煙から守る条例」が本会議で可決されたことだ。さらに22年ぶりに女性副知事を登用する人事案が了承されたことも、その一因となっている。

新副知事に就任予定の猪熊純子会計管理局長は、1981年に一橋大学を卒業後に東京都庁に入庁。父は公明党の参議院議員を2期務めた故・猪熊重二氏である。

「受動喫煙条例と女性副知事人事で、小池知事がすり寄ってきているのは明らか。こちらとしても、都政の安定を考慮しなくてはいけない」。ある都議会公明党関係者は「連携維持は苦肉の策」と説明した。

「苦肉の策」との表現に表れているように、都議会公明党と小池知事との間には、かつてのようなハネムーン関係はないようだ。会期末の10月5日、小池知事は各会派の控室をまわって挨拶したが、公明党の控室では都議たちは拍手をもって出迎えず、握手もなかった。小池知事も「みなさん、素晴らしいご活躍、有難うございました」などと簡単に挨拶した後、さっさと立ち去っている。

同じ5日には小池知事が実質的オーナーである「都民ファーストの会」でも分裂があった。音喜多駿都議と上田玲子都議の離党だ。

そもそも音喜多氏と上田氏は、2016年の都議選から小池都知事を応援。2人は両角穣都議とともに「かがやけTOKYO」を構成していたが、小池都政の発足で都民ファーストに合流。音喜多氏は当時、幹事長を務めていたが、やがて干されていく。

まずは人事だ。9月に都民ファーストでは代表交代があったが、それを決したのは小池知事を含む3名のみだったという。また知事から築地市場の移転問題を任されていた小島敏郎元青山学院大学教授が都民ファーストの会の政務調査会事務総長に就任した経緯についても、ほとんどの都議に知らされなかった。

政務活動費から月額15万円と月額6万円の党費が吸い上げられているが、その使い道が不明瞭だと音喜多氏や上田氏は訴えた。

都知事としては完全に行き詰まっている

それ以上に問題は、都議としての活動を阻害するほどの閉鎖性だ。「議会での質問内容をチェックされ、文書質問も禁じられた」と上田氏は離党会見で述べている。

「本当に小池知事になって以降、自由な議員活動とはほど遠い状態だ」。そう話すのは都議会自民党の川松真一朗都議。「我々が都の職員に資料請求や問い合わせをすると、それがそのまま小池知事側に上がっていく。そして答えていいものかどうかを検討するようだ」。

実際に川松氏は、9月21日に開かれたオリンピック・パラリンピック及びラグビーワールドカップ推進対策特別委員会で小池知事がどのように判断したのかについての資料を求めたが出てこなかったという。「小池都知事になって、都政はさらに悪くなった」という声は少なくない。

こうして見ていくと、都政において小池知事は成功しているとは言い難い。築地市場移転問題も滞ったままで、いたずらに維持費の負担だけが増えていく状態だ。環状2号線問題の解決のめどもたっていず、2020年五輪に間に合うかどうかはわからないと言われている。まさに問題山積。都知事として、こうした問題に真摯に向き合っていく意欲は失せているのではないだろうか。

この状態で都政を投げ出してしまえば、常識的な論評として「政治家として無能」のレッテルが貼られてしまうはずだ。しかし、小池知事はそうは考えないだろう。これまでの発言を振り返る限り、「国政を変えなければ都政は変えられない」という論理を振りかざし、一気に国政に打って出て、政権獲りを目指したいのではないか。


安倍政権をひと呑み? 10月6日、「東京味わいフェスタ2017」に参加した小池知事。都知事としては青、希望の党代表としては緑色とカラーを切り分けているようだ(写真:つのだよしお/アフロ)

しかし、風の流れを読むのが得意な「政界風見鶏」ともあだ名される小池知事。気にしているのは、民進党から候補を受け入れる際に「政策協定書」にサインさせ、公認料に加えて「上納金」を課すという方法が世間の不興を買ってしまった点だろう。

小池知事の側近である若狭勝前衆議院議員は「民進党からおカネをもらうことはない」と綺麗事を言っていたが、民進党からかつての所属議員や候補内定者を通じて希望の党に7億円以上の資金が流れたことは事実である。

また踏み絵のような「政策協定書」の内容に不満を抱いたため、篠原孝前衆議院議員はその文書にサインしなかったが、なぜか第1次公認候補に選定されるという不思議なことが起こっている。篠原氏はさっそく公認を辞退したが、小池知事のやり方に反感あるいは不快感を持っている元民進党関係者は他にも多くいる。

小池人気が根強いのは事実

しかし、小池知事が向かう先には多くの有権者が集まり、熱烈な応援の声が投げられる。多くのメディアの報道ぶりは「アンチ小池」になっているものの、広範な有権者の間で根強い人気を誇っていることは間違いない。そこに政権交代へ向けた一縷の可能性を見い出すのであれば、都政の全ての矛盾を後継者に押し付け、国政の場で気持ちを新たに政権を狙っていく、というのも視野のうちだろう。

「ユリノミクス」などと自己顕示まるだしのネーミングを嬉々として披露するその姿を見ると、小池知事はやはり国政に出たくて仕方がないのであろう。公示日の10月10日に突然のサプライズ出馬を表明する可能性は、まだまだ否定できない。