9月29日にオープンした「ロウリーズ・ザ・プライムリブ 赤坂」(写真:ワンダーテーブル)

いわゆるバブル世代を中心に、静かな人気を維持し続けている「プライムリブ」をご存じだろうか。プライムリブはつまり“グレードの高いリブ肉”という意味で、肉自体のランク・部位を表す言葉でもあり、それをローストビーフにした料理を指す場合もある。アメリカでは、ステーキほどではないが、「プライムリブを食べに行こう」と言って通じるぐらい、ほどほどにポピュラーな料理だという。

そして1938年にロサンゼルスに誕生したプライムリブの専門店が、「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」。まるでUFOのようなシルバーカートに載せられた肉を客の目の前でカットをするなど、ダイナミックな演出を特徴とする。そのほか、ホテルなどで車寄せに乗り付けて係に駐車を任せる「バレーパーキング」という仕組みや「ドギーバッグ」(残った料理の持ち帰り)などを考案するなど、アメリカのレストラン文化を創造してきた存在でもある。

「約300坪」というスペースにこだわった

そのロウリーズ・ザ・プライムリブの日本における3店舗目が、9月29日に赤坂にオープンした。

実は同店にとって、赤坂という土地には縁(ゆかり)がある。16年前、初めて日本でオープンした店がやはり赤坂だったからだ。13年間営業し、ビルの建て替えに伴い近隣で移転先を探したが条件に合うところがなかなかなく、2004年に恵比寿で再オープン。というのも、「約300坪」というスペースにこだわったためである。

同店を運営するワンダーテーブルの秋元巳智雄社長は、旧赤坂店オープンの経緯について次のように語る。

「20年前に、前社長の林祥隆と共に本店を見に行ったとき、“衝撃的にはやっている、そして、衝撃的なパフォーマンスだ”と感じました。“日本市場に存在しないものをつくりたい”と思っていたので、これはぜひ日本に持ってきたいと。3年半の交渉を経て、旧赤坂店のオープンが実現したわけです」(秋元社長)

日本での店舗展開にあたっては、本店側からさまざまな指定があった。肉の質や調理法はもちろんのこと、テーブルのサイズ、動線といった細部についても本店のコンセプトを踏襲したそうだ。また、空間の大きさについても、本店のこだわりでもあり、「変えてはならない」と秋元社長自身が感じたところだった。

「赤坂という土地で300坪の店舗を展開し、はやらせるというのは正直、きつい。特にオープン後すぐにBSEが発生、それが収まったら今度はアメリカでBSEが発生し、骨付き肉を仕入れられなくなりました。そういったこともあり、旧赤坂店にて当初目標の年商10億円を達成するのには数年かかりました」(秋元社長)

日本ならではのサービスで乗り越えた危機

BSEという大きな痛手を乗り越える一助となったのが、開業当初は行っていなかった日本ならではのサービス。たとえばランチ時間帯に“プライムリブ重”といった和のメニュー提供やサラダブッフェを始めたほか、ディナーではガーリックライスを提供し始めるなどだ。マダムデジュネ(ランチを楽しむマダム)をはじめとする女性客を取り込んだことも、認知度を高めるうえで役立った。

恵比寿ガーデンプレイス店への移転後は、2年目で10億円を達成。客層が赤坂と異なり、プライベート需要が中心となったという。

「成功の理由としては、独特のコンセプトを持ち、まねができないので競合しづらいこと。味も日本人の好みに合っていて、肉が軟らかく、ステーキよりペロリと食べられます」(秋元社長)

ローストビーフというと、冷菜や前菜が思い浮かぶが、プライムリブはまったく違う料理。肉の塊をローストしたものを客の好みの厚さにカットし、温かいソースに浸したものだ。ナイフで切る必要もないぐらい軟らかく、質感も長時間煮込んだ肉を思わせる。同店では、「ヨークシャープディング」が付け合わせられており、ソースをつけながら、肉とともに食する。日本限定の「トーキョーカット」(4000円)から骨付きの特大カット「ダイヤモンド・ジム・ブレーディーカット」(9600円)まで5種類が用意されている。いちばん小さいサイズでも、コースを頼むとかなり満足感が高い。


約300グラムの「ロウリーカット」は6900円(写真:ワンダーテーブル)

外観や内観のゴージャスさもあり、「高級な店なのでは」と二の足を踏んでしまうが、実際には客単価が1万〜1万5000円程度。焼き肉やステーキではもっと高い店もあるし、ハレの気分を味わうための価格としては妥当だと考える客も多いだろう。実際、恵比寿店では日に300〜400人中、2割が記念日利用だそうだ。

そして今回、日本で初めてオープンした土地であり、“ホームグラウンド”である赤坂へとリターンを果たす。2017年8月に竣工した複合施設、赤坂インターシティAIRの3階。やはり、およそ300坪、天井高さ約5メートルの巨大な空間を活用し、独特の世界観を展開している。

「商業施設のテナントとしては、小さい店をバリエーション豊かにたくさん詰め込む方法が流行していますが、それとは真反対ですね。たまたま、テナントのコンサルティングを担当している人に縁があり、早いうちに入居が決まり、施設のディテールを固める前に、いろいろと要望を伝えることができました」(秋元社長)


ワンダーテーブルの秋元巳智雄社長(筆者撮影)

同店が入っているインターシティービルには、1階ロビーに大きく店名が記されている。このように、店のいわば「顔」を目立つ場所に出すことも、入居にあたっての条件なのだそうだ。同店のように実績のある店舗の場合、その店が“マグネット”となってほかのテナントを集めやすいという、ビル側のメリットもある。ちなみに、恵比寿ガーデンプレイス店についても、店が入っている建物自体にロゴが大きく示されている。

オープンの3〜4カ月前から予約を受け付けており、オープン日の客入りは、予約だけでも91組、309人。

「オープン時にはとにかくオペレーションをスムーズに回すため、予約を控えめに調整していました。事前予約としてはよいスタートです」(秋元社長)

「世界のロウリーズを牽引する」

コンセプトは、シンプル&スタイリッシュ。旧赤坂店では「古きよきアメリカ」の雰囲気を伝える本店と同じ内装や食器のデザインを採用していたが、このたびは「世界のロウリーズを牽引する」(秋元社長)との意気込みを込め、クールで未来的なデザインを採用した。銀器ではなくステンレスのシルバー類にしたことや、テーブルクロスを使わず、テーブルの木目を生かしたことなども、思い切った変更点だ。

価格やメニュー、サービスについては、これまでと同様。照明を抑えた落ち着く雰囲気で、ゆったりと配された220席のテーブル席のほか、3室の個室が用意されている。

「赤坂と恵比寿では客層が異なり、恵比寿ガーデンプレイス店では、旧赤坂店にいらしていたお客様が2割もいませんでした。今回、旧赤坂店に来ていただいていたお客様、インバウンドを含め、さらに幅広いお客様にご利用いただければと考えています。ビジネスマンが接待やパワーディナーに安心して使える、『この店はいいな』と思っていただけるような店にしたいですね」(秋元社長)

目標としては、最初の1〜2年で10億円を達成、3年目からは10億円以上を目指したいという。オープンにあたっての販促にも力を入れ、メディアや大使館関係者、インフルエンサーなどを対象としたディナーレセプションを3日間にわたって開催した。合計で850人が訪れたという。11月末まで、すでに予約は1320件、5152人が入っているという。赤坂におけるプライムリブ・インパクトはしばらく続きそうだ。