【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】カタルーニャ独立とバルサ(後編)

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 FCバルセロナの持つナショナリスティックな側面は、レアル・マドリードとの試合を、世界のフットボール界で最も人気のあるライバル対決と位置づける要因にもなった。フランコ将軍の独裁下、多くのバルサファンはレアル・マドリードを中央政府の代表のようにみなしていた。過激な一部のファンは、今もその気持ちを持ち続けている。

 多くのカタルーニャ人が日曜日ごとに、バルサの本拠地カンプノウでナショナリズムを発散させる。それはまさに、彼らが「国」という枠組みを通してできないことだからだ。

 とはいえ、大半のカタルーニャ人が自分たちの「国」を欲しがっているというわけではない。これまでカタルーニャで行なわれた世論調査で、独立支持が過半数を占めたことはほとんどなかった。どうやらFCバルセロナをサポートするだけで、ナショナリズムを十分に発散できている人たちもいるようだ。


バルセロナ対ラス・パルマス戦が行なわれたカンプノウのモニターには「民主主義」の文字が(photo by Getty Images)

 しかし最近になって、バルサは国内的にも国外向けにも、独立を問う住民投票に注目を集める役割を果たすようになっていった。住民投票が近づくにつれ、カンプノウのファンは「投票しよう!」というチャントを叫び、独立を支持する歌を歌ったり、横断幕を掲げたりした。

 バルサが発する政治的な声明は、どんなものであろうと、すぐさま地元テレビのニュースになる。9月20日に治安警察が州政府機関を急襲し、住民投票の準備に携わっていた職員14人を逮捕したときも、バルサは即座に非難の声明を発表した。

 クラブのディフェンダーでスペイン代表の一員でもあるジェラール・ピケは住民投票を支持する発言をしていたし、バルサの主将と監督を務めたジョゼップ・グアルディオラ(現マンチェスター・シティ監督)は国際社会に対して、住民投票への支持を呼びかけた。今まで「カタルーニャ」の名を聞いたことがなかった中国人も関心を向けたことだろう。

 これらは、いずれも大きな意味を持っていた。カタルーニャの分離独立派にとって必要だったのは、単に住民投票で勝つことではない。スペインの中央政府と国際社会に自らの要求を真剣に受け止めさせるには、多くの有権者が投票所に出向き、大差で勝つことが必要だった。だから中央政府は、投票を阻止するためにできる限りのことをした。

 住民投票の結果が今後の流れにどうつながるかは、不透明な部分が大きい。しかし、いつの日かカタルーニャが独立を勝ち取ったとしても、バルサはリーガエスパニョーラの一員でありつづけるだろうと、バルサのサポーターは確信している。

 なぜか。もしバルサが脱退すれば、リーガは一気に寂しくなってしまう。そればかりか、レアル・マドリードも最大にして唯一のライバルを失って寂しい思いをするにちがいないからだ。
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