乾貴士(撮影:佐野美樹/PICSPORT)

写真拡大

ニュージーランド戦で、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はいろいろな選手を試しました。その中で一番存在感を示したのは乾貴士だったと思います。

70分、武藤嘉紀に代わってピッチに立つと、乾はたちまち攻撃の基点になりました。決勝点も乾のクロスから。乾はボールを持つと常に仕掛けて、相手が警戒していたのにもかかわらず、見事にゴールに結びつけました。また単に突破するだけではなく、小林祐希のシュートをアシストするなど中の選手もうまく使っていました。

武藤や久保裕也ががむしゃらにアピールしていたのとは違い、乾には余裕がありました。落ち着いていましたし、ボールがあってもなくても輝いていたと思います。さすがスペインでポジションを確保しただけではなく、中心選手として相手からも広く知られるようになっただけのことはありました。

ワールドカップでは、相手の大柄なDFが日本の前に立ち塞がることになるでしょう。そのとき、小柄ながら相手をタイミングや緩急の変化だけでキリキリ舞いさせられる乾は、大きな戦力になると思います。僕はその体格差を克服した部分が、乾の一番の成長点だと思っています。

ただ、日本代表のテストとしては、僕は不満に思う部分もありました。それは組み合わせをあまり試せなかったこと。

もちろん個人の能力がどれくらいかというテストは必要でしょう。ですが、たとえば乾は入った途端、長友佑都との絶妙なコンビネーションを見せてくれました。もしかすると、60分に退いていた香川真司は乾とともにプレーしたら、もっと香川が生きたかもしれません。そういう、個人が生きるような組み合わせは試されませんでした。

第155回のコラムでも書きましたが、個々の選手のテストとともに組み合わせのチェックも大切です。吉田麻也のように絶対的な選手がもしケガをしたとき、どんな組み合わせがいいのかということを試せる機会はもうあまりありません。

10日のハイチ戦ではぜひいろいろな組み合わせを試してほしいと思います。そしてたくさんの選手に、今日の乾のように輝いてほしいと願っています。