”長澤スマイル”をみせる長澤まさみ

 【取材雑感】先日、女優の長澤まさみ(30)主演映画『散歩する侵略者』(公開中)のトークイベントを取材した。長澤と言えば笑顔が象徴されるように明るい印象だが、この日はおっとりとした雰囲気が漂い、場内の空気も長澤のペースにのまれている感じだった。

 長澤が主演を務めた映画『散歩する侵略者』(公開中)は、劇作家・前川知大さん率いる劇団イキウメの同名舞台を映画化したもので、数日間行方不明になっていた夫が侵略者にのっとられ、妻の元に戻ってくるというアイデアをもとに、夫婦が住んでいる町に様々な事件が起こるというSFサスペンスとラブストーリーを取り込んだもの。事態に巻き込まれる主人公・加瀬鳴海を長澤が、その夫を俳優の松田龍平が演じている。

 この日、トークイベントに出席した長澤は赤い柄物のシャツに、黒のロングスカート。どこか大人の雰囲気を漂わせていた。この日は長澤の他に、同作の監督を務めた黒沢清氏(62)、映画監督・映画評論家の樋口尚文氏(55)も出席した。

 長澤は、今作で黒沢監督の映画に初出演した。「油断してると撮影がどんどん進んでいって終わってしまうような現場でした。監督、早いんですよね。そのペースに負けないようにお芝居を準備していかないと、というプレッシャーが日々あったという感じでした」と撮影を振り返っていたが、そんな長澤も口調はゆったりとして、ペースを作っていた。

 その長澤の独特の雰囲気、ペースは撮影現場にも表れていたようだ。黒沢監督は、長澤の撮影現場での印象を以下の通りに述べた。

 「とにかく芝居が上手い方でした。でも、その前の衣装合わせとか、打ち合わせとかだと、嫌がっているのかなと。煮え切らない感じがね。でもその煮え切らなさがこの方の独特な個性なんだと思いました。芝居となると一気に自分がやるべき事、物語上、何を望んでいるのかを瞬時に理解して、あっという間に素晴らしいところに到達出来るんです。でもそうなる前は、『は〜い…』とか『出ま〜す』とか(笑)。(監督からみて)不安な気分になる、びくびくする現場でした」

 長澤自身は「嫌がってはいないんですけど、昔からよく言われるんですよね。やる気がなさそうとか、あとで『怒ってるの?』とか。自分のその時の感情を、人に伝えるのが恥ずかしいタイプです」と自身を分析していた。

 “独特のペース”は「感情を伝えるのが恥ずかしい」というところからも来ているのだとこの時、感じ、改めて彼女の魅力を再確認した。この日のトークイベントでみせた、おっとりとした雰囲気も「恥ずかしさ」から来ているのだとすれば、更にグッと心が惹き込まれる思いだ。【取材=橋本美波】