元プライベートバンカーで、現在はフィンテック企業の経営者として金融情報に精通する著者が、その知識と経験を初めて公開する『プライベートバンクは、富裕層に何を教えているのか?』がついに発売! この連載では、同書の一部を改変して紹介していきます。

今回からは、ついにプライベートバンクが富裕層に提供している、具体的な資産運用法の一端を紹介していきます。

富裕層しか買えない商品?

 ここからは、プライベートバンクが富裕層の資産運用のお手伝いをするときに、どのような資産運用法を提案しているのか紹介していきます。

 プライベートバンクでも、証券会社の営業マンと同じように、一般の人でも買える株式や投資信託、債券などの伝統的資産を顧客に勧めることはあります(その比重は会社、プライベートバンカー、富裕層のランクなどによってケースバイケースです)。

 こではそういった一般的な商品については踏み込まずに、数千万〜億単位の投資ができる富裕層ならではの金融商品、いわゆる「オルタナティブ投資」の商品を中心に取り上げたいと思います。

「なんだ、富裕層しか買えない商品なのか……」とは思わないでください。ここで紹介する商品が果たす投資的な機能のうち、かなりの部分は別の方法でも代替することができます。その方法は『プライベートバンクは、富裕層に何を教えているのか?』で解説していますので、ぜひご参照いただければ幸いです。

ただのラップ口座とはまったく違う、
エグゼクティブ専用ラップ口座

 TVコマーシャルや駅ナカ広告などで「ラップ口座」という言葉を聞いたことがあると思います。「ラップ=包む」という名のとおり、基本的には投資信託をひとまとめにした商品です。

 より正確に説明すれば、一般向けに広告されている「ラップ口座」の大半は、正確には「ファンドラップ」という名称の金融商品です。ひとまとめにする商品をファンド=投資信託のみに限定しているために、一般向けに広く売り出すことができているのです。

 しかし、世の中には富裕層にしか利用できない特別なラップ口座もあります(というより、こちらが本来の意味でのラップ口座なのですが)。

 その名はSMA。Separately Managed Accountの略で、直訳すれば「個々に管理された口座」のこと。「エグゼクティブラップ」とも呼びます。

 通常のラップ口座との最大の違いは、SMAでは運用する商品(ラップする商品)を運用会社がフルカスタムメイドで選んでくれること。当然、投資信託以外の商品もポートフォリオに組み込むことができます。

 SMAも一般のラップ口座(ファンドラップ)も、「投資一任(ディスクレショナリーアカウント)」という契約形態をとります。商品選定や売買のタイミングといった投資判断を金融機関に全面的に任せ、いざ投資が始まったら顧客は基本的に口を挟まず、毎月届く報告書でその内容と成績を確認するだけです。

 日本のプライベートバンクは、基本的にこのような運用商品を通じて投資一任サービスを提供しています。プライベートバンクで、ファンドラップやSMAのような投資一任運用商品としてではなく、顧客と結ぶ契約形態として投資一任を用意しているのは、UBS、クレディ・スイスやロンバー・オディエの日本支社くらい。なので基本的には、日本のプライベートバンクにお金を預けて、「あとはよろしくね」とは言えないのです。その例外がSMAということになります。

 SMAは当然、(投資信託以外の)株式を扱いますし、数年前までは国債で運用するコースも扱っていました。特に国債100%でポートフォリオを組むコースは本当に優れた商品で、私も顧客によく推奨していたのですが、低金利になり国債のみで利益を出すのが難しくなったために、今は一時的に新規契約が停止されています。

 さて、「エグゼクティブラップ」というくらいですからSMAは大口顧客しか買えません。

 たとえば、大和証券が提供するダイワSMAは1億円から、三菱UFJ信託銀行が提供するプライベートアカウント(資産運用口座)という投資一任も5000万円からです。

 SMAを契約すると、販売元から専任の担当者がやってきて投資目的のヒアリングをしてくれます。そして目標が明確になったら、あとは顧客の代わりに最適な商品を市場の中から選んで資産を運用してくれるのです。

 運用手数料については、SMAは運用資産残高に応じた管理手数料を取リます。この点も、手数料にプラスして中身の投資信託の信託報酬までも取る一般のラップ口座(ファンドラップ)とは異なるところです。なお、一般のラップ口座はその結果として合計の手数料が3%を超えることもあるため、手数料的にいえば、あまり推奨されるべき商品ではありません。

 ただし、SMAも選択する運用戦略によっては、手数料が一般のラップ口座のように割高になることが少なくありません。しかし、債券100%のポートフォリオが財団や学校法人のような比較的安定運用を好む顧客にウケたように、商品をうまく選べば、パフォーマンスを上げることができるのです。

 ここまでの説明のとおり、SMAは限りなく「プライベートバンク的」です。しかも、仲介手数料ではなく管理手数料を取ること、投資一任ができることは、ヨーロッパの老舗プライベートバンクのようなサービス形態です。

 日本のプライベートバンクが「プライベートバンク的な商品」を売るというのも変に思われるかもしれません。「であるなら、顧客はプライベートバンクを使わないで証券会社で直接SMAを買えばいいじゃないか?」と。

 その答えとして1ついえるのは、SMAの投資戦略はあくまでも金融商品のみの話だということ。不動産投資などの実物資産は含みません。また、証券会社は資産運用の方針を決めるためのヒアリングはおこなうものの、プライベートバンクのように顧客の資産全体を俯瞰して捉え、税制面などのアドバイスなどをしてくれるわけではないのです。

 シンガポールのプライベートバンクにおいては、投資一任契約がなされるケースは多くあります。先ほどの債券100%で運用されるようなコースもあり、市場の好調も受けて、年3〜4%の運用益を安定して出しています。

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