これまで、LINEのテクニックを3ヶ月にわたり伝授してきた。

これはいわば、マンツーデートに漕ぎつけるための駆け引き。

この難関を突破し、いよいよデートに臨む諸君に捧ぐ『デートの答え合わせ』、開幕である。




まずはデートにこぎつけるまで。


「ハヤトさんは、何をされてるんですか?」
「今は赤坂にある広告代理店で働いているよ。」

食事会で出会った陽菜との最初の会話は、こんな感じだったと記憶している。

「じゃあ遊びなれてますね。」

ふふっと笑う陽菜の笑顔は本当に可愛い。聞けば読モをやっているらしく、その世界では中々人気があるというから、納得である。

「陽菜ちゃんは、今彼氏いないの?」
「いないですよ〜。ハヤトさんは?」

まるで食事会の定型文のような会話を、二人で繰り広げる。

「今度、食事でも行こうよ。」

愛くるしく、白くて小柄で、まるで小鹿のような陽菜に僕は心を奪われたようだ。

そして食事会の後何度かLINEのやり取りを続けた結果、僕は念願の二人でのデートにこぎつけた。

そしてここから、僕は陽菜の“番狂わせ”に惑わされることになる。


女性が言う「明日朝が早いから遅くまでいられない」、その真意は?


Q1:女性から「明日は朝が早くて...」と言われた時。その真意は?


楽しみにしていたデートの前日、陽菜に店の詳細と時間のLINEをすると、すぐに返信が来た。




おっと、そうなのか...

“あわよくば2軒目も”とデートプランを考えていたのに、最初から出鼻をくじかれてしまった。

-次の日の朝が早くて。

この一文を、もう一度読み直す。翌朝が早いならば仕方ない。気をとり直して、翌日のデートに挑んだ。



陽菜とのデートは、僕自身が行ってみたかった新店、『十番右京 恵比寿店』にした。

麻布十番にある本家の『十番右京』は2軒目からよく行く店だが、恵比寿店は初めてだった。

カウンターを照らすライトは、江戸切子のグラスを使用。そしてテーブルは、ガラス板の下に畳が敷かれている。しかも畳の縁にはルイ・ヴィトンのモノグラム柄ときた。




「十番にある右京とまた雰囲気が違って、面白いですね!」

店内を物珍しそうにキョロキョロと見渡す陽菜。

「本当だよね。でも、十番店の名物料理は、恵比寿店でも楽しめるみたいだよ。」

話題が弾む店、というのは有難い。

初デートで沈黙が続くほど怖いことはない。店を切り口に会話が弾むと、その後の会話も続けやすくなる。

そこからお互いに、色々と話し始めた。仕事のこと、休日の過ごし方、家族構成など。

気がつけばあっという間に時間は過ぎ、最後に楽しみにしていた「卵がけトリュフご飯」が運ばれてきていた。

「時間が過ぎるの、あっという間だなぁ。本当はこの後もう一軒行きたい店が近くにあったんだけど...また今度、かな?」

ちょっと残念そうに呟くと、陽菜から嬉しい一言が飛び出した。

「せっかくですし、もう一軒、行きますか?」

あれ、明日朝が早かったはずでは?

「時間、大丈夫?」

わざとらしく聞いてみた。今日はダメだと思っていたから、もし陽菜とまだ一緒に過ごせるなら、とても嬉しい。

「大丈夫です、ちょっとだけなら。」

こうして僕は陽菜を2軒目に誘いだすことに成功した。

-明日朝が早いはずなのに、2軒目まで行けるという。これってもしかして...

思わず一人でニヤついてしまった。


「明日朝が早かった」はずなのに。2軒目に行ける=気がある?


Q2:1軒目では良い感じだったのに、2軒目で態度が急変したのはナゼ?


2軒目は、恵比寿の隠れ家的バー『THE PLATFORM』にした。

便利な場所にあるのに意外に知られておらず、赤っぽい照明がデート用にもいい。軽く一杯飲みたい時に使える店だった。

「陽菜ちゃんは、何飲む?」
「そうだなぁ。赤ワインをグラスでいただこうかな。」

そう言った時、陽菜の肘と僕の肘がぶつかった。

金曜日の夜、やや会話が聞こえづらいカウンターの中で、僕は陽菜の椅子の背もたれを掴んだ。

そうすることで、陽菜が僕の腕の中にすっぽりと収まるような体勢になり、ぐんと距離が近くなる。




陽菜もまんざらでもない感じで、さっきより少し前のめりに話している。デートは、徐々に盛り上がりを見せてきた。

「へぇ〜ハヤトさん、大学時代はテニスサークル所属だったんですか?イメージのままですね。」

楽しそうに話しながら、気がつけば陽菜のグラスは空になっていた。急に飲むピッチが早くなった陽菜を見て、だいぶ心を許してくれていることに気がつく。

朝が早かったはずなのに、こうして急遽もう一杯飲めることになった。これはこのデートが楽しかったという証だろうか?

ここでしばらく飲んだ後、どこかへ行くか、それとも最初のデートだから紳士的に解散すべきか...

こちらの飲むペースも思わず早くなる。次に打つべき一手を考える前に、とりあえずもう一杯飲もう。

「陽菜ちゃん、次は何飲む?」

さりげなく陽菜に尋ねると、陽菜からは素っ気ない返事が返ってきた。

「すみません...明日、朝が早いからそろそろ帰りますね。」

-え...このタイミングで?!

僕の次の一手の妄想は、現実に引き戻された。

時計を見ると、この店に入ってから30分くらいしか経っていない。

しかし事前に朝が早いと言われていたし、仕方ない。むしろこの一杯を、 無理やり付き合わせてしまっていたのだろうか。

そうだとしたら申し訳ないが、陽菜の方から2軒目に行こうと言ってくれた。これは、少なくとも1軒目のデートは楽しかったという認識でいいのだろうか。

読めない陽菜の気持ちに戸惑いながら、お会計を済ませると“ご馳走様でした”と言いながら、颯爽とタクシーに乗り込んで陽菜は去っていった。

去りゆくタクシーを見ながら、 恵比寿4丁目の交差点で僕は一人で頭を抱える。

-このデート、成功だったのか?失敗だったのか?!

楽しくなかったならば、2軒目には行かないはずだ。しかしこの切り返しの早さの意味がわからずにいる。

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女性が言う「明日朝が早くて」。その本当の意味は?