人間の体内にいるバクテリアが、人間の行動に影響を与えていることが最近の研究で明らかになっています。人間とは切っても切り離せない関係のバクテリアが体内でどのような働きをしているのかを、ムービー「How Bacteria Rule Over Your Body」がコミカルなアニメーションで説明しています。

How Bacteria Rule Over Your Body - The Microbiome - YouTube

バクテリアはいたるところに存在します。



スマートフォンやペットボトルの中や……



もちろん手の平の上にも。



手を洗った後でさえ、バクテリアは存在します。



口の中にもうじゃうじゃ。あらゆる場所に存在するバクテリアから逃れようと考えるのはナンセンスです。



数百万年前に、人類はバクテリアと共存するという道を選び、協定を結び体内に受け入れました。



とはいえ、人類とバクテリアとの関係はあたかも「冷戦」のような緊張関係にあるのも事実です。



子宮の中にいる赤ちゃんはバクテリアから隔離された状態にあります。



しかし出産に伴って、母親のバクテリアを受け継ぐことになります。



例え帝王切開で誕生したとしても同じ。赤ちゃんは母親のバクテリアなど外界からたくさんのバクテリアを取り入れます。



数百万年の間に、人類はバクテリアと親密な関係を築き上げてきました。例えば、赤ちゃんが飲む母乳は、バクテリアとの共存のためにもあります。



母乳に含まれるある種の糖はバクテリアを成長させる役割を果たしているからです。



バクテリアを育てたり、他のバクテリアを働かせるようにしたり、免疫システムを安定な状態に調整したりという機能があります。



約2年間のうちに、体内の微生物の環境は安定した状態に落ち着きます。人間はみな、それぞれ独自の微生物を体内に抱えています。それは、バクテリア、ウィルス、他の微生物からなっています。



内臓など体内のバクテリアに関して言えば、大きく3種類に分類できます。



1つめは、まったく無害なもの。体内に生息していますが人体に影響を与えないので、無視された状態。増えすぎて異物と認識されない限り、放っておかれます。



2つめは、害のあるもの。例えば、虫歯菌がこの代表。放っておくと、どんどん増えようとします。



それを望まない人間は、歯磨きなどでこれらのバクテリアを除去しようと努めます。



もっとも、完全に取り除くことはできません。



3つめは、人間にとって有益なもの。



5000種類、3800兆も体内にいると考えられるバクテリアのほとんどが、内臓の中に生息しています。これらのバクテリアは消化を助けたり、余分なカロリーを取り除いたりしてくれます。



不幸なことに、内臓に外敵が侵入するのは避けられないので、強力な攻撃能力をもつ免疫システムが備わっています。免疫システムによってバクテリアがやっつけられることも避けられません。



そこで、バクテリアは免疫システムに攻撃しないようにメッセージを送ります。



免疫システムに情報を伝えたり、内臓の細胞の再生速度を上げたりするバクテリアがいるので、免疫システムは有益なものと認めて、バクテリアの共存を許します。



ここ数年に、内臓の微生物が体に大きな影響を与えているという証拠が見つかってきました。



あるものは、直接脳とコミュニケーションをとることまで発見されています。



神経細胞の情報伝達に重要な役割を果たす体内のセロトニンの90%は、内臓で作られています。



このため、バクテリアが神経の情報伝達に関与していると考える科学者もいます。



免疫細胞を刺激するバクテリアも見つかっています。



こうしてバクテリアは脳にアラームを発して、免疫システムが外敵をやっつけるように仕向けているのです。



何を食べるのかをバクテリアが決めているという研究も出されています。



バクテリアが私たちの行動に与える影響の大きさが、注目を集めています。



例えば、悲しいという感情にバクテリアが関係しているということを示唆する研究結果もあります。



健康なネズミに、うつ状態の人の細菌を与えると……



不安の感情を出したりふさぎ込んだりすることがわかっています。



2017年にバクテリアが知性に影響を与えているという研究が発表されました。



体内に持つバクテリアの種類によって、言葉の発達に差が出るのがわかりました。



さらに、日常生活にもバクテリアは大きな影響を及ぼしているかもしれません。



果物を食べるハエのバクテリアを調べることで、食べている果物の種類を判断できます。



この結果から、バクテリアが何を食べるべきかを脳に教えている可能性があります。



もともとバクテリアは母親から受け継がれたものですが、バクテリアが世代を経ることによって変わっていくので、何を食べたいのかも変わります。



体内のバクテリアは、食べるものがバクテリアごとにそれぞれ異なります。野菜のような食物繊維の豊富な食べ物を好むバクテリアがいれば……



甘いものを好むバクテリアもおり……



フライドポテトなど脂肪の多い食品を好むバクテリアもいます。



私たちの内臓は農園のようなものであり、何を植えるのかを定期的に決定します。健康的な食べ物を食べれば食べるほど、健康的な食べ物を好むバクテリアが増えます。ジャンクフードを食べれば食べるほど、ジャンクフードを好むバクテリアが増えます。



生活では疲れがたまったりストレスが高まったりすることがあります。



そんな時に、ピザやハンバーガーなどのファストフードを食べてしまいがち。これは、ファストフードを好むバクテリアにとっては願ってもない状況です。



ファストフードを好むバクテリアが増え、野菜などの健康的な食べ物を好むバクテリアの居場所を奪います。



さらに、ファストフードを好むバクテリアは、「もっとファストフードを食べて」という指令を脳に送ります。



こうして、さらにファストフードを食べることでファーストフード好きのバクテリアが増え、さらにファストフードの摂取量が増えるという悪循環に陥るというわけです。



このバクテリアの自己増殖サイクルは、肥満に重要な役目を果たしている可能性があります。



しかし、健康的な食べ物を食べることで健康的な食べ物を好むバクテリアを増やすことができるので、悪循環を変えることは可能ということが重要です。



肥満だけでなく、バクテリアは癌などの重大な病気に関係していることもわかっています。



例えば、パーキンソン病の初期症状に、内臓に問題が生じることが良い例です。



悪いバクテリアが病気に関係しているなら、解決方法はただ一つ。



悪いバクテリアをやっつけて、良いバクテリアを取り入れることです。



これは非常に簡単です。健康な人の便を……



体内に取り込めばOK。



この手法は、C. difficileバクテリアによって引き起こされる下痢の症状を治すために実際に用いられています。



しかし、バクテリアの移植という手法は、始まったばかりでわかっていないことも多いものです。



下痢を治すために便を取り込んだところ、肥満になってしまったという事例も報告されています。



この失敗を、逆に利用しようという研究もあります。肥満の人に痩せた人の便を取り入れて、肥満の解消に役立てようというわけです。



バクテリアが人体を健康にしたり病気にしたりというメカニズムについては、さらに研究していくことが必要です。



いずれにせよ、人間はバクテリアを必要としており、バクテリアも人間を必要としています。人間とバクテリアは切っても切り離せない関係にあることだけは確かです。