結婚に焦り、転職し、不倫に走り、海外放浪を始める、28歳の暴発

けっこう前のことですが、ある有名モデルの方に取材したことがあります。誰にでも愛される優しい笑顔の印象が強い、理知的な人としても知られる彼女は、こちらが聞けばそれなりに話してはくれるものの、少し突っ込むと笑顔で言葉を濁す感じ。さらっと表面的なインタビューが欲しいんじゃなかったの?っていう感じ、とでもいいましょうか。

もちろん有名人にそういう人は多く、誰もがそれぞれのやり方で「話さずにすます」わけですが、そのやり方に、まあちょっと意地悪な言い方をすれば、人間性とか精神状態が出てしまうものです。彼女の場合は濁す笑顔にちょっと不愉快が漏れ出てしまっている――なんだかピリピリしているなーって感じ。話の流れで、30歳を前にすると、みたいな言葉が彼女の口から出て、私はハタと気づきました。ああ「28歳病」だと。

これ、世の中に一般的なわけではなく、私自身の無数のインタビュー経験から勝手に命名した、現代の28歳(〜30歳くらいまで)にありがちな病です。くしくも2で割ると14歳で別名「二度目の中二病」、頭のいい人、頭でっかちの人が陥りやすいのも「中二病」と同じ。大学を卒業して働き始め、社会の中でそれなりの経験も積み、「自分」が定まってきた。でもそれが必ずしも、自分の思い通りにうまく機能してゆかない。上の世代が世の中に簡単に迎合するバカに見えてくる。それが「28歳病」です。

男女ともに見られる症状ですが女子のほうがよりややこしいのは、そこに「仕事で認められにくい」「30歳までに結婚したい」「体力落ちきた(結果、代謝が落ちて太ってくる)」なんかも絡んでくるからでしょう。「男」にならないと認めてもらえない。「女」でありたい。仕事と私生活を両立している人もいるのに、なぜか自分はうまくいかない。何の変化もないまま30歳を迎えてしまうったらどうしよう。そんな悶々が煮詰まるのがこの年齢です。

どうしたらこの悶々を解決できるのか。それがわからないから苦しくて、でも何かをせずにはいられない。退職、転職、移住、ワーホリ系長期海外旅行、突発的な結婚、恋人と別れる、不倫にハマる、アイドルにハマる……思い当たる人、結構多いんじゃないでしょうか。

30歳、40歳の誕生日に、ずっと恐れていたことが起こった……人はいない

さて今回も、前回に引き続き『レディー・ガガ Five Foot Two』。一昨年から昨年にかけてレディー・ガガに密着したこのドキュメンタリーは、彼女が「いかにスゴい30歳か」と同時に「いかにフツーの30歳か」にも迫っています。

しくじることは許されないのに、自分のやり方が周囲に伝わらない。押し寄せてくる様々なプロジェクト、それが実を結ぶたびに終わってゆく恋、私は私、振り回されたくはないけど、もう孤独には耐えられない。身体も気持ちも限界で、何でもないことに泣いてしまう。そうです、僭越ながら言わせてもらえば、彼女も完全に「28歳病」です。

冒頭のモデルさんの話には、実は続きがあります。あの日から4年がたち、私は33歳になった彼女に再びインタビューをすることになったのです。きっかけは彼女が自伝を出したこと。これがかなり包み隠さず――彼女が以前摂食障害を患っていたことまで書かれたもので、今回は突っ込んだ話も聞いたのですが、どんな質問にもユーモアを交え、でもマジメにきっちり答えてくれる彼女からは、以前のピリピリ感はすっかりなくなっていました。

私は、思い切って聞いてみることにしました。

「以前にインタビューした30歳前の時は、どこかピリピリしているような感じがあったんです。ずいぶん印象が変わった気がしますが、摂食障害はもしかしてその頃でしたか」

「うーん!さすが!」と笑った後、彼女はこう答えました。

「当時はなんとなく中途半端で、できると思っていたことができず、できないことをできると思い込んでいたし、いろんなことを"こうでなくちゃいけない"と決めつけていたんですよ」

「ここ数年でやっと楽になってきた」と語った彼女に、この間に一体何があったのか。聞けば、自分を持て余しながらもじっと耐え、少しペースを落とすことで冷静になれる時間を作っただけ。より端的に言うならば、ちょっと丁寧に、年月を重ねただけです。レディー・ガガもそれで活動休止なんじゃないかなあ。ちゃんと年を取るために。

30歳や40歳という年齢に漠然と感じる恐怖は、過ぎてみればただの幻想でしかありません。楽観的に言えば、30歳の誕生日に全頭髪が抜けたり、額に30の数字が浮き出てくるワケじゃなし、悲観的に言えば、30歳になったら死のうと思えるほどロマンチストになれるワケじゃなし。ただここを過ぎて2〜3年たって振り返ると、「なんつうことなかったな」と思うはず。そう思うと、年取るってそんなに悪いことじゃないと思うけどなー。

『レディー・ガガ Five Foot Two』

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