【ライターコラムfrom京都】田村亮介、勝利を呼び込む決勝点…「チャンスをモノにする」強い気持ちが実を結ぶ

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 2カ月ぶりに西京極が歓喜に包まれた。明治安田生命J2リーグ第35節・ジェフユナイテッド市原・千葉戦、苦しいシーズンを送っている京都サンガF.C.に9試合ぶりの勝利を呼び込んだのは田村亮介。82分に3人目の交代選手としてピッチに立つと、90分に田中マルクス闘莉王と相手DFが競り合った後のこぼれ球を右足で振り抜き、これが決勝点となった。

 アカデミー出身の生え抜きの22歳はトップチームに昇格してから思うような活躍をできずにいた。プロ1年目は8試合に出場し、2年目は森下仁志監督(当時)に誘われてサガン鳥栖へ期限付き移籍。8月に行われたアトレティコ・マドリードとの親善試合ではスペイン1部リーグで200試合以上に出場しているヘスス・ガメス(現ニューカッスル)との1対1を自慢のスピードで抜き去って同点弾となるオウンゴールを誘発させる活躍を見せたが、公式戦は5試合の出場に留まっている。京都に復帰した昨年から、クラブは期待をこめて過去にパク・チソンや駒井善成が付けていた背番号7を託しているが、ピッチに立ったのは数えるほど。そのポテンシャルを開花させられずにいた。今年も千葉戦が4試合目の出場なのだが、メンバー外が続いていたこれまでと違って9月以降は継続してベンチ入りするなど、取り巻く状況は少しずつ変わっている。

「以前は“練習の練習”になりがちでした。今は『この状況では、どんなプレーが生きるんだろう』とか『こういうシーンは、試合だとどうなるのか』と、常に試合を想定してやっています」と話す田村の取り組みを、布部陽功監督も「気持ちやプレーに波があって、ずっと自分で調整の仕方などを取り組んでいましたが、ここ2〜3カ月ですごく変わりましたね」と評価している。その言葉から思い出されるのは、5月21日の東京ヴェルディ戦だ。岩崎悠人がU−20日本代表により不在の中で先発出場のチャンスを与えられたが爪跡を残せずに55分で交代し、次節以降はベンチからも外された。再びピッチに立てるのは3カ月以上も先のことだった。「どんな状況でも精一杯を尽くす、自分に一度でもボールが来たらチャンスをモノにする、ということを練習から意識すること。そこはヴェルディ戦から変わりました(田村)」と振り返っている。

 彼の最大の持ち味はスピードだが、それは相手もわかっており、試合ではなかなかトップスピードに乗らせてもらえない。自分には何が足りないのか。千葉戦ではボールを受ける位置や受けた後の判断を意識しており、相手DFに背を向けてボールを持っている状況から隙を見た素早いターンで前向きの状況を作り出すなど、進歩の一旦が見られた。そうした一つひとつの局面での地道な取り組みが、ゴールという最高の形で報われた試合だった。

 今年の京都はサイドハーフの選手層が薄く、田村が競争に割って入る余地は充分ある。布部監督は千葉戦の翌日に「昨日が良くても、今日が大事だ」と田村に話したという。田村自身もそれは理解している。「これからですよ」と話す彼に浮かれた様子はない。まだ1試合、日の目を見ただけだ。千葉戦のゴールを起爆剤として、残り少ない今シーズンの中で己の評価を高めてみせる。

文=雨堤俊祐