フランスのEyzies-de-Tayacにある先史博物館で、ネアンデルタール人の復元像を見る来館者(2008年7月2日撮影、資料写真)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】クロアチアの洞窟で発見された初期人類ネアンデルタール(Neanderthal)人女性の骨の完全な遺伝子分析により、この女性の祖先の系統では近親交配が行われていないことが明らかになった。研究結果が5日、発表された。過去の研究では、ネアンデルタール人の化石から採取した遺伝子に近親交配の痕跡が確認されたことが報告されていたが、今回の結果はこれに反するものとなっている。

 米科学誌サイエンス(Science)に発表された研究結果は、ネアンデルタール人の完全な、高精度のゲノム(全遺伝情報)解読としてはまだ2例目にすぎないが、絶滅したこのヒト属に対するより幅広い見方を提供している。また今回の研究では、現生人類に受け継がれたネアンデルタール人の遺伝子変異が新たに16個発見された。

 研究は他方で、ネアンデルタール人が小規模の孤立した集団で暮らしていたことや、アフリカから北へ移動してきた現生人類ホモ・サピエンス (Homo sapiens) と混血したことなどの既知の学説のいくつかを裏づけるものとなっている。

 最新のゲノム解読結果は、約5万2000年前に現在の東欧に当たる地域に住んでいたネアンデルタール人女性から得られたものだ。

 これまでに得られていたネアンデルタール人のゲノム解読の高精度の解析結果は、ロシア・シベリア(Siberia)地方のアルタイ山脈(Altai Mountains)で見つかった約12万2000年前の個体に関するものだった。

 アルタイ山脈のネアンデルタール人も女性で、その遺伝子は、両親が異父母きょうだい同士か叔母とおいまたは叔父とめいの組み合わせ程度の近縁関係にあったことを示していた。

 スイス・チューリヒ大学(University of Zurich)人類学研究所博物館の所蔵品キュレーターで上級講師を務めるマルシア・ポンセ・デ・レオン(Marcia Ponce de Leon)氏は「アルタイのネアンデルタール人は近親者の少人数集団で暮らしていて、自身も近親血縁者同士の子どもだった。これは典型的なネアンデルタール人の行動だと、多くの人々が考えていた」と説明する。

 だが、クロアチアのビンディア(Vindija)地域で発見されたネアンデルタール人は「それに比べてはるかに開かれた集団で暮らしていた。現代の狩猟採集民から知ることができる形態に近いと思われる」と、ポンセ・デ・レオン氏はAFPの取材に応じた電子メールで述べている。同氏は今回の研究を「重要な新知見」と称賛している。

■密接な関係性

 約3万5000年前に地球上から姿を消したネアンデルタール人を何が絶滅に追い込んだかは分かっていないが、彼らが3000人前後の比較的少人数の集団で暮らしていたことは知られていた。

 論文の主執筆者で、独マックス・プランク進化人類学研究所(Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology)のカイ・プリュファー(Kay Pruefer)氏によると、今回の研究で同氏が最も驚いたのは、アルタイとクロアチアの2つの上質な化石標本の間に、地理的にも時間的にも大きな隔たりがあるにもかかわらず、密接な関係性が認められることを発見したことだという。

 プリュファー氏は、AFPの取材に「これは、ネアンデルタール人の人口規模が小さかったに違いないことを示している」と語った。

■DNAに関する洞察

 クロアチアのネアンデルタール人のゲノムは、それより古いアルタイのゲノムに比べて人類のものにより近づいており、「現生人類に影響を与えているネアンデルタール人ゲノムの新たな遺伝子変異」を含んでいると、論文は指摘している。

 論文によると、これらの変異には、悪玉コレステロール(LDL)やビタミンDの血漿中濃度、摂食障害、脂肪蓄積、関節リウマチ、統合失調症、抗精神病薬への応答性などに関連する変異が含まれているという。

 さらに、祖先が混血をしなかったアフリカ人以外の現生人類に受け継がれているネアンデルタール人DNAの割合が、これまで考えられていたよりわずかに高いことが今回の研究で判明した。

 研究チームによると、非アフリカ系現人類の大半が持っているネアンデルタールDNAの割合は全体の1.8〜2.6%で、過去の推算値の1.5〜2.1%よりもわずかに高いという。

「東アジアの人々が持つネアンデルタールDNAの割合は2.3〜2.6%で、ユーラシア大陸西部の人々の1.8〜2.4%に比べて若干多い」と論文は述べている。
【翻訳編集】AFPBB News