まったく思わぬ形で、杉田祐一にジャパンオープン初のベスト8という結果が転がり込んだ――。

 男子ワールドテニスATPツアーの公式戦である楽天ジャパンオープンテニス2回戦で、杉田(ATPランキング40位、10月2日付け、以下同)は、第3シードのミロシュ・ラオニッチ(12位、カナダ)と対戦した。しかし、第1セット第1ゲームのプレー中にラオニッチが右ふくらはぎを痛めた。「歩くことができない」と主審に訴えたラオニッチは、一旦ベンチでトレーナーと少し話した後、再びコートに戻って1ポイントだけプレーを試みたものの、途中棄権を申し出たため杉田の勝利が決まった。


ジャパンオープンでベスト8進出を決めた杉田祐一

「ラオニッチ選手とは、もう少し試合をしたかったというのが正直なところです」

 こう試合後に語った杉田は、実は1回戦でもベノワ・ペール(37位、フランス)が極度の疲労のため途中棄権していて、2戦連続で相手のリタイアによる勝利を手にしたことになる。

「いやぁ、こんなことがあるんですね」と振り返った杉田は、直前のATP成都大会でもベスト4に入っており、2週連続でのベスト8入りを決めた。

“ツアーレベルでもやれる”という自信を得たことで、杉田のメンタルがさらに強くなり、ジャパンオープンを含めた最近の好結果につながっているように思える。

 杉田は松岡修造や錦織圭と違って、若い時に海外でテニスの武者修行をせずにプロの世界に飛び込み、11年という長い時間を要して今の地位を築いた、いわば”純国産プロテニスプレーヤー”だ。

 同じような過程で世界のトップ100に入って、グランドスラムの本戦出場を果たした日本男子選手は添田豪や伊藤竜馬らがいるが、さらにトップ50に入って、なおかつマスターズ1000大会を含めてコンスタントに結果を残し、ATPツアーに”定着”したプロテニスプレーヤーは、杉田が初めてとなる。

「ツアーの一員になれてきたのかなと感じる。いろんな選手と同じ大会を回るようになって、自分が成長できる環境にいるというのが嬉しい」

 そして、母国開催のジャパンオープンでの初のベスト8という結果に対しては、「自分にとって大きなターニングポイントになるような大会にしたい」と杉田は語り、勝ち星をさらに積み上げていくつもりだ。日本唯一のATP大会で、杉田が成長した姿を日本のファン、特に子供たちに直接見せることには大きな意味がある。その中から、杉田のあとに続くような未来のプロテニスプレーヤーが生まれるかもしれない。

「ここで終わるわけにはいかないですし、もっともっとレベルを上げて、日本で育つ選手に向けて、しっかり発信できる自分でいたいと思っている」

 準々決勝で杉田は、アドリアン・マナリノ(31位、フランス)と対戦する。今季2人は対戦が多く、ATPマスターズ1000・モンテカルロ大会の予選2回戦(マナリノの勝利)、ATPアンタルヤ大会の決勝(杉田の勝利)、ウインブルドン2回戦(マナリノの勝利)に続いて4回目となる。

「また本当に(よく)当たるなという感じです。半年で4回というのはかなりの回数ですし、向こうもまたかと思っているでしょうね。お互いのプレースタイルもわかっていて、おもしろい試合になると思っています」(杉田)

 マナリノはベースライン付近で早いタイミングでも、ベースライン後方からでも打てるグランドストロークを持ち、いろんな弾道のボールを打ってくる。特に杉田は、マナリノのアングルをつけてくるバックハンドストロークを警戒する。自分と似たようなプレースタイルのマナリノに対して、「最初から自分のペースでいくことが一番大事になってくる」と杉田が語るように先手をとって試合の主導権を握れるかがキーポイントになりそうだ。

 最近の杉田は、自分に言い聞かせるかのように「ここが勝負どころ」が口癖になっている。まだまだ自分の今のテニスや成績に満足することなく、上を見据えているのだ。

「もちろんプレッシャーもあるんですけれど、今はそれをうまく力に変えられています。ここを乗り越えたら、もっと新しい自分ができるのではという楽しみな部分もある」

 ジャパンオープンの結果次第では、杉田が大きな目標にしている、2018年オーストラリアン(全豪)オープンでのシード権が射程圏内に入ってくる。今こそ、”純国産プロテニスプレーヤー”杉田祐一の矜持(きょうじ)をもって、ベストプレーを見せる時なのだ。

■テニス 記事一覧>>