1トップでの出場が有力視されていた武藤嘉紀だが…【写真:Getty Images】

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ベテラン不在。20代FW陣にアピールの絶好機

 日本代表は6日、来年のロシアW杯に向けてニュージーランド代表との親善試合に臨む。本田圭佑や岡崎慎司が招集外となっている一方、彼らに頼らない新しい形を模索しなければならない。それゆえ今回の試合で採用される可能性のある新たな3トップがもたらすポジティブな効果に期待が膨らむ。(取材・文:元川悦子)

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 2018年ロシアW杯への生き残りを賭けたサバイバルマッチの第一弾となるニュージーランド戦(豊田)が6日に行われる。日本代表は1日から愛知県内で強化合宿を行ってきたが、左太もも裏に張り訴えて全体練習に合流できていない原口元気(ヘルタ・ベルリン)を除く23人がプレーできる状態に仕上がっている。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が誰をどのように起用するか、チームに新たな可能性がもたらされるのか。そこはしっかり見極めなければならない。

 東口順昭(G大阪)、槙野智章(浦和)、香川真司(ドルトムント)らアジア最終予選終盤は出番がなかった面々がスタメン起用されると見られるが、やはり注目はFW陣だろう。2010年南アフリカW杯から代表をけん引してきた本田圭佑(パチューカ)と岡崎慎司(レスター)のベテラン2人が揃って選出されていないだけに、20代のアタッカー陣にとってはアピールの好機に他ならない。

「チャンスをもらえればしっかり目に見える結果を残せればいいかなと。インパクトを残して立場を確立させる? そういうことも思いながら、とにかく積極的にやりたいなと思います」と久保裕也(ヘント)がかつてないほどのギラギラ感を前面に押し出したように、FW陣は闘志をみなぎらせている。

 今回の1トップに関しては当初、武藤嘉紀(マインツ)の起用が有力視されたが、ハリルホジッチ監督が前日会見で「例えば、来週金曜日に試合がある選手もいる。そういった沢山の要素を考えながらバランスよくチームを作っていきたい」と発言したように、10月13日にブンデスリーガの公式戦を控えるケルンの大迫勇也は代表からクラブ合流までの間隔を長く与えなければならない。このため1戦目のニュージーランド戦で先発入りし、10日のハイチ戦(横浜)は温存される形が濃厚となった。

NZ戦は初の組み合わせにトライ? 前線の顔ぶれは…

 ケルンが13日に対戦するのは浅野拓磨が所属するシュトゥットガルト。同じ理屈から言えば浅野もニュージーランド戦でスタメン組に入らなければならないところだが、彼は今季ブンデスリーガで7試合中先発がわずか2試合しかない。直近の9月30日のフランクフルト戦も出番なしに終わっている。このため、代表で2戦続けて長時間プレーしても問題ないだろう。

 浅野の陣取る右FWは久保との競争になるが、最近クラブでの活躍度は久保の方が上。コンディションや結果を重視するハリルホジッチ監督はニュージーランド線で、久保を先発、浅野をジョーカーに位置づける可能性が高そうだ。

 そして左FWだが、候補には乾貴士(エイバル)と武藤がいる。乾は3日から代表に合流したばかりで、適応時間が武藤より短い。ロシアW杯への切符をつかんだ8月31日のオーストラリア戦(埼玉)で乾は非常にいい動きをしていて、同サイドの長友佑都(インテル)との関係も良好だった。すでに指揮官の中で彼は「ある程度計算できる存在」になっている。

 それとは対照的に、アジア最終予選で1試合に途中出場しただけの武藤はまだまだ未知数な存在。それでも最近のマインツではリーグ戦3ゴールと気を吐いているだけに、使ってみたい選手であることは確かだ。そんな観点から判断すると、ニュージーランド戦の先発は武藤になる確率が高い。

 久保・大迫・武藤という組み合わせはハリルホジッチ体制で初めて。サイドに久保と武藤が陣取れば、どちらもスピードがあるから、矢のように相手ゴール前へ飛び出していけるメリットがある。ただ、原口が左にいる場合とは左右のバランスが微妙に変わるかもしれない。中盤的な役割をこなせる久保がゲームメークに参加し、武藤がゴールに近い位置でプレーするような関係になりそうだ。「右で作って左で仕留める」という新たなパターンが生まれそうな雰囲気も少なからずある。

ロシアW杯は9ヶ月後。攻撃のバリエーションを増やせるか

 長友が攻撃参加して左FWのマークを引き寄せ、武藤をフリーにするような連携を見せられればゴールチャンスはより増えていく。武藤は9月20日のホッフェンハイム戦で華麗なドリブルから局面を打開し、複数のDFを置き去りにしてゴールを決めており、個人技を武器にしているのも大きい。大迫とともに前線でタメを作ったり、ポジションを変えたりしながら最前線に出ていく形も考えられるだけに、攻めのバリエーションは広がる。前向きな成果を得られればチームにとっても収穫だ。

 久保にしても、3月のUAE戦(アルアイン)、タイ戦(埼玉)の2連戦で2ゴール3アシストという凄まじい働きを見せた時の感覚を思い出し、シンプルにプレーすれば、右サイドで十分輝ける。6月シリーズ以降の4試合は不完全燃焼感が強かったが、「ハリルホジッチ監督の指示を実践しなければならない」という固定概念が強すぎて、動きが空回りした部分があった。そこは彼自身も認めている点。「監督の言うことを聞きながら、でも自分たちのよさも出していけたら一番いいかなと思います」と今回こそ自ら判断してアクションを起こし、効果的な仕事を目指していくつもりだ。

 大迫はそんな両サイドアタッカーを生かしつつ、自らも生きる術を体得している選手。今季ケルンでは低調なチームに苦悩しているが、彼自身のパフォーマンスが停滞しているわけではない。「強い相手になるとボールを持つ回数や時間が自然と短くなる。そこで僕らが考えることは臨機応変に対応すること。それが一番だと思う」と本人も言うように、彼らアタッカー陣が自主的に動いて、相手守備陣をこじ開ける道筋を見出せるようになれば、新たなトリオは必ず機能する。

 久保・大迫・武藤というのは日本人FWの中でも特にインテリジェンスの高い面々。だからこそ、期待は大きく膨らむ。ニュージーランド戦での彼らの相乗効果とチームにもたらす成果を楽しみに待ちたい。

(取材・文:元川悦子)

text by 元川悦子