パートやアルバイトというような非正規雇用が増え続けている現代。いわゆるフリーターと呼ばれているアルバイトやパート以外に、女性に多いのが派遣社員という働き方。「派遣社員」とは、派遣会社が雇用主となり、派遣先に就業に行く契約となり派遣先となる職種や業種もバラバラです。そのため、思ってもいないトラブルも起きがち。

自ら望んで正社員ではなく、非正規雇用を選んでいる場合もありますが、だいたいは正社員の職に就けなかったため仕方なくというケース。しかし、派遣社員のままずるずると30代、40代を迎えている女性も少なくありません。

出られるようで、出られない派遣スパイラル。派遣から正社員へとステップアップできずに、ずるずると職場を渡り歩いている「Tightrope walking(綱渡り)」ならぬ「Tightrope working」と言える派遣女子たち。「どうして正社員になれないのか」「派遣社員を選んでいるのか」を、彼女たちの証言から検証していこうと思います。

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今回は、都内で派遣社員として働いている岡崎美優さん(仮名・32歳)にお話を伺いました。美優さんは金髪に近い明るめの茶髪のボブに、目元はやや濃い目のグレーのアイシャドウ、眼の大きさにあっていない不自然なつけまつげ、オレンジレッドの口紅の色が、威圧的で怖い印象を与えていました。服装は流行りの白いデザイントップスに、ベージュのカーディガンを羽織っていました。個性的ですが、流行り物を意識したファッションと、派手目なメイクが似合っていないように見えました。

美優さんはかつて会社員として働きながら副業として、地元の先輩がやっていた商材の販売を手伝っていました。

「いつかまた、先輩がやっていた仕事を手伝いたいと思っているんです。人に惚れ込んだというか。一緒にいると、どんどん自分がブラシュアップされて行くのがわかったので、先輩の手伝いは楽しかったですね」

彼女は、愛媛県松山市出身。父は福祉事業を行なう人材センターの職員として働き、母もホームヘルパーの資格を取得し、介護センターなどの臨時職員として働いていました。

「両親は体力的に厳しかったようで、よく“肩が痛い”とか“腰がつらい”と言っていました。地元でも介護職だったら、仕事が見つかりそうでしたが、自分はそういうのは嫌だって思っていました」

彼女は、両親が学校行事などに仕事の服装で来るのを苦痛に感じていたそうです。

「父も母もジャージというか、夏はポロシャツとか動きやすいような服装をしていたんですよ。子供心に、スーツ姿で働く大人に憧れていました」

まだ中学生の頃は、やりたい仕事や勉強してみたい分野などなかったため、とりあえず地元の普通科の高校へ進学をします。そして大学は、地元の大学の経営学部に進学します。

「大阪の大学に進学するか迷ったのですが、大阪に出るなら東京に出たいと考えたんです。大学までは松山にいて、就職で上京するのが一番うまくいきそうだなって思って、そのタイミングを待ちましたね」

経営学部に在籍中に、起業をしたい大学生向けのセミナーが開催されました。

「今思えば、なんでそんなセミナーが開催されたのか不思議なんですが……。基本的には、地元に残って、新規事業などで貢献してもらいたかったみたいですね」

その後、東京での就職を目指して、就職活動を始めます。

同郷の先輩社員との出会いで、人脈が広がった。

「東京で就職するつもりだったのですが、不採用続きで……。結局、大阪で機材のリース業を行なう企業に事務として入社しました。ここでの出会いが大きかったですね」

大阪の企業では、飲み会なども盛んで、同郷の愛媛県出身という会社の先輩を紹介してもらったそうです。

「やっぱり、どこかでコンプレックスってあるんですよ。大学でも出身地を言うと“松山ってどこ?”って聞かれたり。そんな時に、同郷の人に出会えたのは大きかったですね」

知らない土地で就職し、心細かった美優さん。先輩の紹介をきっかけに、知人が増えます。

「先輩は男性だったのですが、普段からアクティブで休みの日にバーベキューに誘われたんですよ。そこで、知り合いの人を紹介してもらいました」

OLの収入だけでは少なかったため、以前から副業やサイドビジネスには興味がありました。

「バーベキューに来ていたメンバーで、色々ビジネスをやっていたみたいなんですよ。副業とか本当はNGな会社だったんですが、“君は特別だから”と言われて誘われました」

先輩は、人脈を使ってアフィリエイトで稼ぐ方法を販売し、個人的なセミナーなどを開いていました。

「基本的には、先輩たちがネットで稼ぐノウハウを指南していて。そのノウハウを共有する形です。本当にすごいって思ったので、それを広めたいっていうのは使命感みたいな感じでした」

しかし、副業がバレたため、先輩は先に会社を辞めてしまいます。そのせいで、彼女自身も会社にいづらくなってしまいます。

「社内の人からも、“あの人と付き合わない方がいいよ”って先輩の悪口を言われたりしたんですよ。気にせず休みの日は先輩の手伝いをしていたら、ある日、“うち、副業は禁止なんだよね”って部署の上司から言われて」

副業は小遣い程度でしたが、人の役に立ちたいという気持ちが満たされたと言います。

「ある日、情報がネットで集めたもので転売にあたるとかで、先輩がセミナーとかネットワークビジネスを急に辞めるって言いだしたんですよ。それでどうしようかなって思った時に、知人の紹介で東京でこれから成長するベンチャー企業があると、その会社を紹介されました」

結局、新卒で入社したリース業の会社は数年で退社します。

「このまま大阪にいても、やりたいことがないし。仕事が決まりそうだったので、就業日のタイミングに合わせて上京しました」

活気あるセミナーの風景を、たまに思い出すと言います。

ベンチャー企業は保険未加入のブラック企業で、怪しい出会い系サイトの紹介?その2に続きます。