これが有名企業「入社難易度ランキング」トップ10社だ

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中央の建物が東京・一ツ橋にある集英社の神保町ビル。左隣は小学館の本社だ (編集部撮影)

難易度の高い大学から多く採用している会社はどこか。

内定式が過ぎ、今年の就職活動はほぼ終盤となっている。最後まであきらめずに就活に励む4年生と並行して、3年生向けのインターンシップが夏から始まり、来年の就活の準備が進んでいる。来年も3年生の3月から企業の採用広報が始まる。売り手市場と言われ、企業の採用は引き続き活発だ。

「入社難易度」の定義とは?


そんな中、有名企業の採用には、さまざまな憶測が飛び交う。「有名大学しか採用していない」「難関大学の指定校制がある」「”大学フィルター”を設けている」など、いろいろなことが言われる。そこで「有名企業は本当に難関大からしか採用していないのか?」を検証してみることにした。

各企業の採用結果を数値化するための指標として、「入社難易度」というものを作ってみた。有名難関大かどうかの評価は、大学受験時の難易度がもとになっているとされる。そこで駿台予備学校の協力を得て、模試の難易度から、企業別入社難易度を算出した。

大学通信は毎年、各大学に対し、有名企業412社に就職者数を聞くアンケートを実施している。この412社は、日経平均株価指数の採用銘柄や会社規模、知名度、大学生の人気企業ランキングなどを参考に選定している。ランキングの対象はこれらの有力企業だ。

算出方法は次の通り。今年の各大学・学部の入試の難易度平均(医学部と歯学部は除く)を、各大学の難易度とする。仮にA社の就職者の内訳が、東京大学5人、慶應義塾大学3人、上智大学3人だったとする。東京大学の学部平均難易度は69.8で、全大学でもっとも高い値だ。慶應義塾大学は65.1、上智大学は63.0になる。

これらの数字を使って、A社の平均入社難易度を求めてみよう。

(東京大学69.8×5人+慶應義塾大学65.1×3人+上智大学63.0×3人)÷(5人+3人+3人)=66.6666になる。小数点第2位を四捨五入すると、A社の入社難易度は66.7だ。

就職判明者が10人以上の企業に絞ってランキングしたのが各表である。一部の大学が回答していないため、採用者すべての出身大学が判明しているわけではない。しかし、企業の採用総数がわかっている企業に占める、大学別就職者の判明率は8割を超えている。

では企業別の表を見ていきたい。トップは集英社の65.0。2位が三菱地所の64.8、3位が講談社の64.6、4位が富士フイルムの64.4、5位が三菱商事の64.2、という順となった。

出版や不動産、総合商社が上位

あきらかに出版社は、難関大学から多く採用している。3大出版社のもう1社の小学館も62.0で38位だった。出版不況と言われ、学生の人気企業ランキングの上位にはかつてほど出てこなくなったものの、出版物に子どものころから慣れ親しんできたこともあり、まだまだ根強い人気がある。

2位の三菱地所をはじめ、不動産会社もトップ10に2社入っている。7位の三井不動産は64.0だ。出版社と同じく採用人数が少ないため、難関大学の採用が多いと、高い値になると見られる。難関大学の学生の中には、大量採用の企業よりも、同期の顔が見える採用の少ない企業を好む傾向もあるという。

採用者が比較的多く、今年の就活で人気が高かった総合商社も、上位に入った。5大商社の中で、トップ10に入ったのは、64.2で5位の三菱商事、64.0で7位タイの伊藤忠商事、63.9で9位タイの住友商事の3社だ。丸紅は63.5で11位、三井物産は63.2で16位だった。業績好調の伊藤忠商事の評価が高い。ただ、5社中トップの三菱商事と、最下位の三井物産の難易度差はわずか「1.0」だ。人気業種だけにどこも難関ということになる。

また総じてマスコミの入社難易度が高いのも特徴だ。テレビ局はテレビ東京が63.3で13位、テレビ朝日TBSテレビが63.1でともに19位、日本テレビ放送網は62.3で28位、NHKは62.1で34位、フジテレビジョンは61.2で59位などとなっている。番組の視聴率が急伸するテレビ東京がトップで、苦戦するフジテレビが最下位と、東京キー局の中での勢いがこのランキングにも反映される結果となった。

新聞社・通信社も上位である。64.1の日本経済新聞社が6位、63.2の朝日新聞社が16位、62.1の共同通信社が34位、61.8の読売新聞社が46位、61.5の時事通信社が54位などとなった。いずれも60を超える入社難易度となっている。新聞社も近年、学生の人気企業ランキングの順位は、高くはない。

企業の採用支援を行っているワークス・ジャパンの清水信一郎社長は「集英社がトップというのは、出版希望者は3大出版社を必ず受けるといってもいいほどで、記念受験も多いと思われ、応募者が多いことから入社は難しくなるのでしょう。またマスコミは、まず筆記試験がありますから、人物本位の採用といっても、この試験を通過しないことには、面接などに進めません。結果として試験に強い難関大からの採用者が多くなるのでは」と分析している。

トップである集英社の入社難易度65.0は、どこの大学に当たるのか。平均難易度が65を超えている大学は7校しかない。東京大学のほかに、国際教養大学(67.7)、一橋大学(66.5)、京都大学(66.3)、国際基督教大学(66.0)、慶應義塾大学と早稲田大学がともに65.1だ。こういった大学からの採用が中心ということになる。

一方、学生に人気の高い銀行を見てみよう。67位の三井住友信託銀行の60.9がトップ。メガバンクでは三菱東京UFJ銀行が182位の58.6で、かろうじて200位以内だった。メガバンクは採用人数が1000人を超えるため、さまざまな大学から採用していることがわかる。ただ、入社難易度58.6といっても、これを上回る大学は32校だけ。大学は日本国内に約780校あり、難易度が上位の大学から多く採用しているようだ。駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長は次のように語ってくれた。

「文系の学生を中心に採用している企業が上位で、理系の学生を中心に採用しているメーカーなどが低くなっています。メーカーは採用者が多いので、地方国立大からも採用します。地方国立大の工学部は難易度が高くないため、入社難易度は高くなりにくいのかもしれません」

業種別のトップは石油・鉱業


業種別の入社難易度を見てみよう。ランキングの対象となる企業が4社以上の業種だけを取り上げているため、業種としては表に出てこないところもある。ガス造船倉庫などが対象外となっている。

業種ランキングのトップは石油・鉱業。対象社数は4社だけと少ないが、13位で63.3の国際石油開発帝石、16位で63.2のJXTGエネルギー、44位で61.9の昭和シェル石油、86位で60.4の出光興産が入り、すべてトップ100に入った。前出の清水社長は「石油・鉱業は、多くが国策会社だったという経緯から、旧7帝大からの採用が多く、給与水準も高いので人気です」という。

2位以下は放送新聞広告出版商社の順となった。ここまでが入社難易度60を超えている。マスコミ関連業の難関ぶりがわかる。次いで化学ゴム・ガラス通信機械・機器と続く。そもそも412社の平均入社難易度も57.0とかなり高い。平均難易度が57.0以上なのは48大学に過ぎない。有名企業による採用は上位大学の寡占状態であることが間違いないようだ。

子どもを人気企業に入社させたいと思うのであれば、やはり難易度の高い大学に進学させた方が有利ということなのか。もちろん、そこに進学したから、全員がこういった企業に入社できるわけではない。少子化の影響から、外国人の採用も一般化してきており、大学進学後もしっかり学び、自分を磨いていくことが大切だ。昔のように、大学に進学したから就職は安泰、という時代はとっくに終わっている。