紅葉を求めて、山へと足が向く季節だ。

 一時期頭打ちだった登山人口も、富士山の世界遺産登録を機に増加に転じている。ただし4割以上は60歳以上の中〜高年齢者。高血圧や糖尿病など「登山リスク」を抱えている人も多い。侮れないのが脱水と熱中症だ──秋の山でも。

 登山中は発汗や呼吸によって水分が失われる。一般に運動中に体重の1%の脱水が生じると、身体の内部の体温が0.3度上昇し、心拍数が5〜10拍上昇する。さらに脱水が進み体重の2%を超えると、疲労感、筋肉のけいれん、注意力低下など自覚症状が出てくる。

 特に降圧剤の利尿薬やカルシウム拮抗薬を服用している、腎機能が悪い、そして血糖値が高い人は「血管内脱水」を起こしやすく、脱水から熱中症や心血管性のトラブルを起こす危険性が高い。生活習慣病で薬を服用している方は、登山前にしっかり主治医と相談しておこう。

 何より大事なのは計画的な水分補給だ。日本登山医学会刊の『高山病と関連疾患の診療ガイドライン』を読んでみよう。

 同ガイドラインでは、登山中の水分の消費量を求める計算式が提示されている。それによると登山中の脱水量(mL)は、体重(kg)×歩行時間×5(脱水係数)だ。

 体重60kgの人なら、1時間ごとに300mLの水分が消費されている計算になる。全く水分を補給せずに歩き続けたと仮定した場合、4時間で危険水域である体重の2%に達するわけだ。

 理想をいえば、失われた分だけ水分を補給したいが、荷が重い。次善の策として消費量の7割を目安に水分を摂ろう。最低でも1時間、できれば30分ごとに200mL前後を飲むといい。このほか、あらかじめ補給が不足することを見越し、登山前に250〜500mLの水を飲んでおくと安心だ。

 また、脱水係数は年齢や汗かき体質か否か、そして気温など気候条件によって上下する。5を基準として4〜6まで柔軟に対応してほしい。

 余談だが紅葉が美しいからといって深追いは禁物。秋山登山の遭難原因の多くは「迷子」である。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)