センチュリー代表取締役社長の小善一成氏

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 今やすべての一般家庭に設置が義務付けられている火災警報器。これは、2006年6月に改正消防法が施行されたことによるものだ。

 家電量販店やホームセンターで購入することができる火災警報器は、火災の発生をいち早く知らせてくれる家庭の“守護神”であることは間違いないが、誤作動を起こすケースもあるという。実は、筆者も先日夜中の3時に「火事です」とサイレンが鳴って叩き起こされた。

 周囲に聞いてみると、このような体験をした人は意外に少なくない。なぜ、火災警報器は誤作動を起こすのか。また、防止策はあるのか。防災関連製品最大手であるセンチュリーの代表取締役社長・小善一成氏に話を聞いた。

●教科書にも載った「地震の見張り番」

――まず、貴社の事業内容について教えてください。

小善一成氏(以下、小善) 創業は1987年。パソコン周辺機器の販売からスタートし、当時は売り上げ174億円、粗利率9%で、一時は株式上場も検討しました。しかし、その後ITバブルの崩壊で業態の変化を余儀なくされました。そこで、「あったらいいなを実現する」という使命感のもとに商品開発・販売を行い、現在は防災関連の製品やサービスの提供に注力しています。

 当社のロゴマークには、3つの波が描かれています。「過去」「現在」「未来」の「三世」にわたって我々は生きていますが、「過去」に感謝し、学びや教訓を得る。「現在」を勤勉かつ力強く前進する。そして、「未来」に向かって「あったらいいなを実現する」ことに全力を尽くします。

 人の生命やライフスタイル、財産を守り、ひいては国の基盤を守るべく社会に貢献する。同時に、会社および従業員、各利害関係者が繁栄できるように未来に向かって挑戦し続けることを目指します。

――具体的な製品ラインナップは、どのようなものでしょうか。

小善 東日本大震災、さらに昨年の熊本地震も記憶に新しいですが、日本は地震大国です。防災には力を入れていかなければなりません。来るべき巨大地震、津波、噴火などの災害を一刻も早く具体的かつ正確にお知らせする緊急地震速報機「地震の見張り番」、非常時に使える大容量蓄電源「停電の見張り番」の販売を強化します。

 実は、政府が公表していた2007年度版の地震予測地図では、「多くの地域が地震被害に遭う」という予測がされていました。現在、その予測地図は非公開ですが、防災技術で社会貢献をする精神で業務に邁進しています。

「地震の見張り番」は大好評で受注実績は約2万5000台、シェア1位です。法人だけでなく学校や個人からも引き合いが多いです。また、教科書にも掲載されており、大変光栄に思っています。「地震」「停電」の次は「津波」です。現在、「津波の見張り番」も開発中です。

――以前に上場を検討されたとのことですが、現在はいかがでしょうか。

小善 捲土重来を期して、5年後の上場を目指しています。

●誤作動の原因はたばこ、水蒸気、殺虫剤…

――実は、貴社を取材するきっかけは、自宅の火災警報器が誤作動を起こして夜中に目を覚ましたことです。誤作動については貴社だけでなく他社の製品も同様ですが、なぜ起きるのでしょうか。

小善 このたびは、ご迷惑をおかけしてしまい申し訳なく思います。ご指摘の通り、誤作動は当社だけではなく他社でも発生しています。当社の住宅用火災警報器は「けむりの見張り番」と「ねつの見張り番」というシリーズで販売しています。

「ねつの見張り番」の誤作動は、北海道のトタン屋根の住居で屋根の温度が65℃になった際の1例だけです。問題は「けむりの見張り番」のほうで、感知の度合いが高いために誤作動が少なからずあります。原因は、たばこや焼肉の煙、夜間の水蒸気、殺虫剤などです。

 防止策としては、火災警報器をこまめに掃除することです。中には蜘蛛の巣が張っていたり小さい虫の死骸が入っていたりしますから。半年に一回は掃除によるメンテナンスを心がけてください。

――火災警報器は、改正消防法によって家庭への設置が義務化されました。

小善 おかげさまで、約5500万台の販売実績があります。私は現場主義なので、自ら家電量販店の店頭に立って売ったこともあります。店員の方から「声が小さい」と叱られたのは、いい思い出です。

 技術開発によって他社より大幅に安価で提供できたこともあり、非常に好評でした。設置から10年後に交換時期をお知らせするサポートサービスもついています。このような差別化によって、火災警報器の業界に旋風を巻き起こしたと自負しております。

――改正消防法の施行から10年以上がたった現在は、いかがですか。

小善 ここ2〜3年は売れ行きが伸び悩んでいます。これは、当社だけでなく他社も同様です。そこで、販路を家電量販店だけでなくゼネコンやハウスメーカーにも拡大しようと、自ら営業を行いました。

 自信はあったのですが、口を揃えて「安価で良い製品なのは理解しますが、昔からの取引先を私の代で変更することはできない」と言われ、販路拡大を断念しました。家電量販店でも、以前は目立つ場所で販売できたのですが、今や隅っこに追いやられています。

 現在、家電量販店での当社のシェアは50%。残り50%を持つ他社は住宅部門を持っていることが強みです。当社は家電量販店頼みだったため、「この事業をこれ以上続けていくのは難しい」と判断して撤退することを決断しました。しかし、保守・サポート業務は今後も続けていきます。

●「地震の見張り番」がシェア1位になったワケ

――社長としての心構えなどについて、教えてください。

小善 「地震の見張り番」をシェアトップにするために、全国の地方公共団体を回って営業に走りました。「すべての原点は現場にある」というのが信条です。社長室にこもっているだけでは、会社の内実はわかりません。「率先垂範」こそが、社長のあるべき姿だと考えます。

――ちなみに、社長の血縁者は入社されていますか。

小善 私は、会社に血縁者や地縁者を入れるべきではないと考えています。もし私が血縁者を入社させれば、社員は「将来の社長は血縁者だ」と忖度するでしょう。血縁者に経営者としての能力があればいいのでしょうが、能力がない場合は、本人にとっても会社や従業員にとっても、これ以上の不幸はありません。

 社員たちが「いくらがんばっても、どうせ社長になれない」と考えてしまえば、やる気を失い、ひいては会社の損失につながります。また、私の友人のなかには「友人なんだから、取引にかませろよ」と言う人もいますが、「そんな公私混同、できるわけがないだろう」と一切断っています。

――非礼を承知で申し上げますが、上場を目指すほどの規模になると、最初の志は立派でも次第に公私混同が激しくなり、社長が個人と会社の財布の区別がつかなくなる……そんな事例を多く見てきました。

小善 飛行機に乗る際、会社の規定はビジネスクラスですが、私はいつもエコノミークラスです。また、笑い話ですが、和歌山に出張する際に「一番安いホテルを取ってくれ」と指示したのですが、安いホテルは騒音がうるさいということで500円上乗せした部屋を予約しました。私は、お金に関しても公私混同することはありません。

――素晴らしいことだと思います。今、人材が大手企業に流れて中小企業は人手不足で困っていますが、解決方法はありますか。

小善 新卒採用については、当社の規模では応募がなく、継続的に募集をかけているのが現状です。第二新卒が主なターゲットです。

――日本全体の社会課題でもある「働き方改革」については、いかがですか。

小善 当社の理念は「1に健康 2に家族 3、4がなくて 5に仕事」です。そのため、他社と比べて休みは取りやすいと思います。昔は私も「24時間働けますか」を実践し、場合によっては会社に寝泊まりしていましたが、この年になるとそれは厳しいですよ。社長が遅くまで残っていると社員は帰れないので、ほぼいつも定時の17時半に帰っています。

 ただ、残業代が減ると手取りも減るので、前期は記念賞与を出しましたが、今期は決算賞与を検討しています。税金を払うことは大事である一方、内部留保を蓄積するよりは社員に還元して働きやすい環境を整備したいと考えています。ノー残業と実質賃金の増加によって「働き方改革」を推進します。
(構成=長井雄一朗/ライター)