消費増税は選挙の争点に。写真は2014年4月の前回消費増税時(撮影:今井康一)

10月22日、衆議院議員総選挙が行われる。焦点の1つとなりそうなのが消費増税だ。自民党は2019年10月に予定されている10%への消費税率引き上げを前提に、増税分を教育無償化などに回す方針を発表した。一方、小池百合子氏の率いる希望の党は、消費増税そのものを凍結する考えを示している。

これまで安倍政権は、2014年4月に行われた5%から8%への消費増税以降、10%への引き上げを2回延期している。8%への増税時、日本のGDP(国内総生産)の約6割を占める個人消費が大きく落ち込むなど、景気が冷え込んだためだ。

では、足元での日本経済の状況はどうだろうか。今月2日に公表された日銀短観(企業短期経済観測調査、9月調査)で、企業側から足元の景況感を見てみよう。

大企業製造業は世界的な景気拡大を背景に高水準

大きく注目されたのは、大企業製造業の業況判断DI(「良い」-「悪い」)が22%ポイントと、10年ぶりの高水準となったことだ。前回6月調査から5ポイント上昇し、4四半期連続で景況感が改善した。国内外の設備投資需要から、機械類(業務用、生産用、はん用)が大きく上昇。旺盛なIT需要を背景に、電気機械も改善した。


ただ、それ以外の部分を細かく見ていくと、注意が必要なところもある。大企業非製造業の業況判断DIは23%ポイントとなり、前回の水準を維持している。だが、業種別に見ると卸売り(8ポイント改善)、対事業所サービス(7ポイント改善)など好調な業種がある一方で、とりわけ個人消費関連の業種で悪化しているのが気になる。飲食・宿泊サービス(7ポイント悪化)、通信(6ポイント悪化)、小売り(2ポイント悪化)などだ。


こうした業種では人手不足も一段と深刻になっている。とりわけ飲食・宿泊サービスは雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)がマイナス61(前回マイナス57)と、非製造業全体(マイナス34、前回マイナス30)と比べても極めて深刻な状況で、業況判断の重しになっている可能性がある。全般的に、大企業よりも中堅・中小企業で人手不足感が強い状況も変わらない。

人手不足でも限定的な値上げと賃上げ

にもかかわらず、値上げは進んでいない。大企業の販売価格判断DI(「上昇」-「下落」)は製造業で1ポイント改善の一方、非製造業では1ポイントの悪化。先行きはそれぞれ小幅に悪化している。運輸など一部の業種では人手不足による賃金上昇を反映した値上げはあったが、全体には広がっていないことが見て取れる。総括すれば、大企業製造業を中心に景況感は改善しているものの、内需の弱さから業種や企業規模によっては懸念が残り、物価上昇に勢いは見られないということだ。

仮にこうした状況が2019年10月まで続けば、消費増税が個人消費の一段の冷え込みを招く可能性は十分ある。「それまでに、消費増税に耐えられるだけの賃上げが行われることが望ましい。来年・再来年の春闘で、どれだけ景気回復の実感を与えられるかが重要だ」と、ニッセイ基礎研究所の上野剛志・シニアエコノミストは話す。世界経済の成長拡大の恩恵を受けており、また春闘の流れを決める大企業製造業が、どれだけ賃上げできるかが注目される。

前回と比べて増税の影響は限られる可能性もある。東京五輪直前のタイミングであり、五輪関連の設備投資などの需要が見込まれるためだ。さらに自民党の公約にあるような軽減税率や教育無償化といった措置があれば、家計への負担は減少するだろう。

ただし、本来、国の借金返済に充てるはずだった消費税の増収分を教育に回したり、消費増税を先送りし続けたりすれば、財政再建への道は遠のく。短期的な景気の腰折れだけでなく、将来世代にツケを回すことの是非を、きちんと議論する必要がある。