U-20で見えた「対世界」の課題。日本にいない「速く強いボランチ」

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U-20W杯が示す近未来のサッカー[前編]

日本にとって10年ぶりの出場となったU-20W杯は、ティーンエイジャーたちが世界との距離を測る貴重な舞台でもあった。今大会を決勝まで現地取材した川端暁彦さんを迎えて、これからのサッカーを左右するアンダー世代の世界のトレンドを分析し、日本サッカーの目指すべき方向性について考えてみたい。

川端暁彦(元エル・ゴラッソ編集長)× 浅野賀一(フットボリスタ編集長)

加速するインテンシティ重視の流れ

浅野「川端さんはU-20W杯を決勝まで残って取材していましたが、大会全体の傾向はどう感じましたか?」

川端「面白かったですよ。月並みですけど、サッカーが変わってきたとあらためて感じました。これは向こうで日本の指導者とも話したんですけど、バルセロナ的な考え方が一回展開しちゃったねと。ああいう狙いでサッカーをやっているチームが全然なくなっていますね。それはスペインが出ていなかったというせいもあるのかもしれないですけど、全体的な傾向として速く、激しく、強くという、あまり使いたくない言葉ですけどインテンシティってやつですね。その流れが加速しているなと」

浅野「それはヨーロッパ、南米、アフリカ、アジアどのチームにも限らず?」

川端「特に南米がその傾向を強めていると思います。ヨーロッパ勢っぽくなっているという言い方もできるのかもしれないですけど」

浅野「ベネズエラは組織的でしたね」

川端「組織的というか、チームワークという部分が凄かった。1人がみんなのためにじゃないですけど、そういうメンタリティを持っていましたね。それは感心しました」

浅野「ウルグアイもそうだし、もともと激しいチームとは言われていたけど、それがオーガナイズされてヨーロッパ的になってきているというのはありますね」

川端「ゆっくりしてないですね。個人の仕掛けを重視するのは前と変わらないんですけど、それに連動していくのを組織的にやっているんだろうなというのは感じました」

浅野「だから南米も変わってきているんでしょうね。この世代ではブラジルが南米予選で敗退、アルゼンチンも本大会のグループステージで消えました」

川端「ただ、アルゼンチンはかなり強かったですよ。イングランド戦は退場者を出して自滅でしたし、準備のところがあまりうまくいかなかったという話も聞いているので。グループステージを抜けていれば、戦いながらどんどん強くなるというシナリオを描けるチームだったんじゃないかな。ウルグアイ、ベネズエラと同格のチームだったと思います」

浅野「ブラジル、アルゼンチンに次ぐグループが強くなってきているのは、今のA代表のW杯南米予選が象徴していますよね。アルゼンチンがあんな状態になっていますし」

川端「コロンビアも下の世代の代表が力をつけて結果を残して、A代表も強くなってという流れだったので、今回のベネズエラも同じような流れになるのかな。彼らは国自体がどうなるか次第だけど」

浅野「A代表は南米予選で最下位だからね。だからこの世代が2022年のカタールW杯でどうなるかなのかもしれない」

川端「ベネズエラはこの世代からW杯予選に5人出ているんですよね。それもアドバンテージだったのかなと思います。上のレベルの経験値を持っている選手が入って来たというのは大きかった」

浅野「ドゥダメルはA代表兼任ですし、それこそナイジェリアのワールドユースでトルシエが監督をやっていた時の日本みたいな感じなのかなと。この世代がそのまま上に行って、次が強くなる」

川端「そんな感じかもしれないですね。でもあれだけ個性的な選手が同じ年代に生まれるのは凄いなと、サッカーではしばしばあることだけど」

浅野「トップ下のちっちゃい選手(ソテルド)がめちゃくちゃうまいね」

川端「凄いですねあいつは。158cmなんですけど、抜群にうまい。速いし機敏だし。決勝トーナメントでは彼をスーパーサブ的に使うことで、交代で変化をつける狙いを持ってやっていました。日本戦は先発だったんだけど」

浅野「日本は南アフリカともやりましたが、アフリカ勢はどうでした?」

川端「まるで魅力を感じなかった。南アフリカも面白くなかったし……。ザンビアが強かったと言えば強かったけど、雑なサッカーをしていましたね」

浅野「一番伸びていない地域かもしれないね」

川端「国がしっかりしてないっていうのが一番大きいんだろうなあ。これだけいろんなものがちゃんとしてきた時代なので、差が出るよね」

浅野「もちろん選手としてのポテンシャルが大きい人はたくさん出てくるだろうけど、でもそれは早くヨーロッパに渡った人というのが正直なところだよね」

川端「テクニックはある。でもキックは下手。遊びのサッカーに近い中で育ってくるのでそういうテクニックのある選手たちなんだけど、キックに関してはちゃんと教育しないとよくならないんじゃないかなって気はする。だからアフリカのチームって総じて決定力不足でしょ。日本も南アフリカに決定力があったら、ぶっちゃけ負けてたと思うし(笑)。アフリカ勢を見ていると、実は日本以上に決定力不足を感じます」

浅野「結局アフリカ勢のA代表の中心選手になるのって、ヨーロッパ出身でオリジンの国を選んだ元U-17フランス代表とかみたいな選手か、早くヨーロッパに渡ってイングランドとかのアカデミーで育った選手だよね」

川端「ガンバにいたエムボマもそうだね。アフリカ勢はサッカーの問題じゃないところの、国としてちゃんとしないと強くなれないような気がする。育成が上下に繋がっていかないし」

浅野「ヨーロッパ勢はどうでしたか?」

川端「イタリア、イングランドはキャラが立ってて、フランスも面白かったし、何よりモチベーションが高かったですよね。スタイル的には欧州勢にそんな統一感は感じなかったです。国によって全然違う。イングランドはオーソドックスにイングランドのサッカーをしていましたし」

浅野「けどイングランドの育成年代はテクニカルというか、いわゆるポゼッション型のサッカーに舵を切っていると言われていたんだけど、それはそんなに感じなかった?」

川端「まったく感じなかったですね(笑)」

浅野「そこって評価が分かれているところで、人によってはモダンなサッカーをやっていたという人もいるんだけど」

川端「モダンという言葉の定義にもよるんじゃないですか。バルセロナ的っていうのをモダンって考える人にとっては、まったくモダンじゃないと思います。僕は逆に現代的だなとは思いましたよ。身体能力の高い選手を各ポジションに並べて、攻守の切り替えから圧倒しちゃうという現代的なチームが優勝したなと。とにかく縦に速い、鋭い、強いヤツがいて、1対1の局地戦は全部勝つ。そんなやり方ですよね」

浅野「イングランドの育成年代はフィジカルが凄いって話はよく聞きます」

川端「フィジカルモンスターはそろっていましたよ(笑)。チェルシーのCBの2人とかね。個性的なチームでしたね。ルックマンは速くてうまくて、でも“ルックマン”なのに視野はあまり広くないみたいな(笑)。そういう選手がいて、オノマーとかは『なんだコイツ』って思うくらい全部なぎ倒して、広大な守備範囲で全部カバーしちゃう。悪く言えばいい加減な選手なんだけど、良く言えば何でもやっちゃうスーパーボランチでした。もともとタレントではイングランドが一番かもと言われていたけど、『チームとしてどうなんだ?』という話もあった。蓋を開けてみたらチームとしてどうなんだよというままの部分はあったといえば、あったんですけど(笑)、イングランドらしく正々堂々としたスタイルで勝ち切りましたね」

左がイングランドの“スーパーボランチ”ジョシュ・オノマー。右はベネズエラの158cmのトップ下、ジェフェルソン・ソテルド

浅野「僕はフランスにも似たような印象を持っていて、だいたい[4-3-3]か[4-2-3-1]のシステムに固定して、個を伸ばす方針でずっとやっている。最近は数多くのスーパータレントを輩出している国ではあるんだけど、イングランドと似ているところがあるのかもしれないですね」

川端「日本の選手たちも言っていて、僕も感じたのがボランチが速いこと。セントラルMF、トップ下、ボランチのポジションに純粋に足が速い選手を置いていて、そこでの攻守の切り替えで置き去りにしちゃうんですよね。あれはトレンドだなと思いましたね」

浅野「日本の常識ではボランチはのろくても許されるポジションでしたよね。ガンバの遠藤保仁が典型ですが」

川端「それが変わってきたなという感じがします。攻守の切り替えが大事にされる時代になって、ボランチのスピード化がなおさら加速していますね。その中で目立ったのがオノマー、ベネズエラのエレーラとルセナのダブルボランチもそうでしたし、フランスのボランチも速かった。ウルグアイもですね。日本がやりづらい時代になってきている」

浅野「それは確かにやりづらいですね」

川端「このトレンドに日本は乗っかりようがないぞっていう難しさと、でもそういう選手を何とか発掘して育てていかないとなっていうのをあらためて感じました」

浅野「その『日本と世界の差』が今回のメインテーマなんですが、西部さんと今大会の課題は何かな? と話した時に、やっぱりフィジカルの差が大きいねという話は出た。ただ、U-20でどこまで鍛えるのかという議論はありますよね。クリスティアーノ・ロナウドだってスポルティングやマンチェスター・ユナイテッドにいた10代の頃は細かったじゃないですか。これからの2、3年が勝負ですよね」

川端「そこの伸びしろで日本は勝てない気がする。U-16代表監督の森山さんとも話したんですけど、U-16くらいまでは欧州勢と日本でフィジカルの差ってそんな感じないんですよ。実際にこの前に僕が見た日本対オランダの試合でも、フィジカル負けをしているかっていうと全然してないし、イングランドとか他のチームとやってもそこは変わらない。ただ、彼らは日本人より成長期のピークが長くて、日本人が総じて16歳で身長が止まるのに対して、彼らはそこからまだ伸びる。U-18、19くらいになるともうかなり開いちゃうので、そこは民族的な差だからどうしようもない部分もあります。もちろん鍛えてどうこうできる部分はあると思うし、そういう意味では日本の意識はまだまだ甘いなと感じる部分は多々ありますけれど、限界も同時に感じますね」

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Akihiko Kawabata
川端暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、各種媒体にライターとして寄稿する他、フリーの編集者としての活動も行っている。2014年3月に『Jの新人』(東邦出版)を刊行。

Photos: FIFA via Getty Images