スピード離婚……そのとき気になるお金の話

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近年、熟年離婚が話題になっているが、その一方でスピード離婚というものも存在する。離婚の際に争点となるのは、財産、ローン、年金の分配だ。婚姻期間が短いとはいえ、いざ離婚となった場合、権利として主張できるのかどうかが気になるところ。そこで今回、婚姻期間の短い離婚で気になるお金の話を、彩の街法律事務所の代表弁護士である神尾尊礼さんに聞いた。

■分与対象は結婚期間中に築いた財産

まずは、財産分与についてだ。共働きで夫が生活費を出し貯金は妻がしていた。家のローンは結婚以前から夫が組んでいた、という場合はどうなのだろう。

「財産分与は、『婚姻期間中に築き上げた財産を半分にする』というのが基本です。したがって、結婚以前に築いた財産は分与の対象にはならず差し引かれます。共働きかどうかやどちらが生活費を出していたかなどは、財産分与の計算には影響しません」(神尾さん)

普段の出費をしていたからといって、主張には値しない。

「離婚時に残っている財産の『名義』が、とても重要です。貯金を妻名義でしていたのであれば、その半分を夫に渡すことになりますし、夫名義なら、半分を妻に渡すことになります。結婚前に買った持ち家は、結婚期間中に築いたものではないので、基本的には分与対象ではないことになります。ただし、婚姻期間中にローンを支払っている場合は、そのローン分は2人の生活費から捻出されているため、分与対象に含めます。したがって、持ち家の価値を、結婚前に築き上げた部分と、結婚期間中に築き上げた部分に分けて考える必要が出てきます」(神尾さん)

神尾さんが具体例を用いて、説明してくれた。

「離婚時の持ち家の価格が1000万円、離婚時の残ローンが400万円、結婚期間が4年で、持ち家の購入時期が結婚6年前に購入し離婚時点で10年目というケースで説明します。離婚時の持ち家は、1000万円−400万円=600万円の価値があることになります。ローンを払い続けてきた10年のうち、結婚期間は4割に当たる4年間となりますので、600万円×(4÷10)=240万円が分与対象になる価値となります」(神尾さん)

結婚していた間の財産までを折半とは、結婚が運命共同体と呼ばれるのも納得である。

■ローン対象が増えても考え方は同じ

では、夫に持ち家のローン以外に、車や投資用マンションのローンなどがあるケースはどうだろう。

「この場合も考え方は同じで、結婚前の分を差し引いて計算します。妻の貯金についても、やはり『名義』でどのように分与するかが決まります。また、結婚以前に組んでいたかどうかに関係なく、ローンなど負の財産が分与対象になることは通常ありません。仮にオーバーローンだったとしても、『価値のない財産』ということで0円として考えることが多いです。離婚に備え、ローンにしておいた方が得だと考える方もいるかもしれませんが、結局のところ財産として分与対象になるわけですから、計算上目に見えて得になるというわけではありません」(神尾さん)

どうやら、都合のよい抜け道はなさそうだ。

■年金分配よりも養育費がネック

次に、共働き夫婦の年金は分割の対象になるのか聞いた。

「夫婦とも厚生年金に加入していれば、両者とも年金分割の対象です。差額は『ならす』とお考えください。専業主婦の場合は、年金分割の権利は、専業主婦の救済策であるため、『国民年金部分+年金分割によってもらえる分』となります。共働きの場合は、『国民年金部分+自分の厚生年金部分+年金分割によってもらえる分』です。差額をならすという考え方からすれば、年金分割によってもらえる分は減りますが、専業主婦と違って自分の厚生年金部分があります。結果として、もらえる年金額は専業主婦より多くなるため、共働きが不利ということはありません」(神尾さん)