先制点と2点目の起点となった奥埜。クラブ初のタイトルをもたらせるか。(C) J.LEAGUE PHOTOS

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[ルヴァン杯準決勝 第1戦]仙台 3-2 川崎/10月4日/ユアスタ
 
 リーグ戦で好調の川崎に対し、仙台が前半だけで3得点と圧巻の攻めを見せた。仙台対策で用意した川崎の3バックのバランスが悪かったことも追い風となり、前半はスペースを支配し、相手より良いポジションを取り続けるコンセプトの仙台が圧倒的優位に立って攻めに攻めた。攻撃の核となり、2得点で起点となったのはMF奥埜博亮だった。

 
 キャプテンのMF富田晋伍の故障後、ボランチを務めている奥埜は、富田同様に球際への激しさで守備を安定させただけでなく、前への推進力を生かして何度も決定機を演出。さらには対戦相手や観客をも驚かせる足下の技術を披露。仙台の攻撃を活性化させた。
 
 石原直樹の先制点の場面、奥埜は川崎ボランチのエドゥアルド・ネットから力強くボールを奪い取る。そのままゴールに向かって突進し、DF板倉滉を十分に引きつけてからFW西村拓真へパスを送ると、さらにペナルティエリア内へ走り込んだ石原がフリーでボールを受けてゴールへ流し込んだ。ボール奪取からゴールへ向かう推進力を見せ、DFの注意を引きつけてゴールのお膳立てをする見事な仕事ぶりだった。
 
 そして33分の追加点では、後方からのボールに対し、技ありのヒールパス。相手の背後を取ったDF蜂須賀孝治へ、奥埜が絶妙なパスを送り、蜂須賀のクロスからFWクリスランのゴールが決まった。意表を突く奥埜のヒールパスにスタンドからはどよめきが起こった。今やハードワークするだけではなく、奥埜はゴールへのアグレッシブな姿勢と華麗な技で観客を沸かせる選手へと急成長を遂げている。
 
「前半はディフェンスの所で前からはめることができて、川崎さんのらしさを出させずプレーができました。相手がボールを握る中で縦パスを入れてスピードアップすることを狙ってきていたので、縦パスを入れられないようにコースを切ったり、入れられた後にプレスバックしてスペースを埋めることを心掛けていました。うまく相手のミスを誘えてもっと点を取るチャンスがあったので、そこを決め切れていたらもっと楽になったと思います」と、奥埜はまず良い守備から入ったことで、良い攻撃につなげられたと前半の戦いぶりを振り返った。
 奪ってからの推進力を持てたことについては「自分たちが前向きに守備ができていたので、その勢いで前を向けますし、それが良かったのだと思います」と前から守備に行く意識をそのまま攻撃へと利用したという。
 
 仙台は渡邉晋監督がここ1〜2年で、常にスペースを意識するサッカーを苦労しながら築き上げてきた。攻守に良いポジションを取り続けて相手の優位に立ち続けられれば負けないという考え方を奥埜も叩き込まれている。
 
「良い立ち位置でボールを受けて、自分たちはボールを持った時、怖がらずに一人ひとりが良い立ち位置を取り続けることによって、どこかで相手をはがせると思いますし、一人はがせばもっとスペースが空いてきますので、パスを出して動くという基本的なところをしっかりやりたいです」
 奥埜はこう語り、ここまで積み上げてきた集大成を次の第2戦でも見せようと意気込んでいる。
 
 仙台ジュニアユース、そして同ユース出身ということもあり、仙台にタイトルをもたらそうという思いは強い。
「このクラブでタイトルを獲りたいという気持ちはありますし、僕自身プロになってからタイトルを一度も獲れていませんので、憧れはすごくあります。チームメイトから昔タイトルを獲ったという話を聞くだけでも羨ましいと思いますし、そういう気持ちを味わってみたいですね」
 
 アカデミー出身で仙台への想いが人一倍強い奥埜が、クラブに初タイトルをもたらすべく、まずは第2戦アウェーでの戦いに挑む。
 
取材・文:小林健志(フリーライター)