「代表でプレーするのと、愛国精神の有無とは関係ない。代表でプレーしている人間が、愛国精神が強いとは限らないのだ。招集されたら、その呼びかけに応じてベストのプレーを見せる。俺が毎回やっているようにね。過去には二重国籍を取得した選手だっていた。少なくとも代表について俺はそういう考え方を持っている」
 
 その中では「誰もが僕を“問題”だと信じるならワールドカップの前に代表チームから退いてもいい(ピケはロシア大会後の代表引退を表明済)」と語っていたが、これからもどんな激しいバッシングでも、自ら退くことなく代表でプレーを続ける覚悟だろう。
 
 こうしてカタルーニャ住民投票に端を発した一連の出来事がスペイン代表に飛び火する中、ジュレン・ロペテギ監督は、あえてプランを変えないことでこの難局を乗り切ろうとしている。トレーニング初日をファンが観戦できるよう予定通り公開で行ったのは、その一環でもある。指揮官はその理由をこう説明する。
 
「ここで非公開に急遽変更していたら、かえって不信感が増幅する恐れもあった。人々には理性を持って行動してもらいたい」
 
 その一方で、ピケにも目立つ言動を控えるように協力を求めているという。民放ラジオ局『カデナ・コペ』のインタビューでは、「平穏な状況を取り戻せるように、一人ひとりが責任を持って行動しなければならない」と語った。
 
 アンチ・ピケが急増する中、もちろん擁護する声もある。オレゲール・プレサス(元バルサ、アヤックスDF)もその一人だ。カタルーニャ主義という政治的思想を理由にスペイン代表招集を断った唯一の人物の発言は、問題がもっと奥深いところに隠れていることを示唆している。
 
「残念なことに、ピケが取った行動ばかりが注目を集めているが、重要なのはそこじゃない。多くのスポーツ選手がフランクに自らの考えを口にすることができない、今の状況を憂慮すべきだ。やっぱりみんなその後の反響の大きさを考えてしまうからね。俺も含めて、多くの者は黙っているしかないんだ。それが彼ら(スペイン政府)の勝利でもある」
 
文:ディエゴ・トーレス(エル・パイス紙/スペイン代表・海外サッカー担当)
翻訳:下村正幸
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