住民投票当日のラス・パルマス戦でピケをはじめとするバルサは、試合前にカタルーニャ旗のユニホームを着用した。(C)Getty Images

写真拡大 (全4枚)

 ロシア・ワールドカップ欧州予選のアルバニア戦(10月6日)とイスラエル戦(9日)に臨むスペイン代表が2日、マドリード郊外でトレーニングを行ない、その中でジェラール・ピケがサポーターから容赦ない罵声に遭ったのは既に報じられている通りだ。
 
 この日、練習場に詰めかけた観客はざっと見積もって1000人ほど。その中で数十人による若者の過激派グループが、選手たちがピッチに姿を現わすや音頭を取って一斉に罵声を浴びせ、他の200人余りの観客も彼らに続いた。中には子連れの父親や母親も少なくなかったが、そんなことお構いなしと言わんばかりの彼らの激しいトーンに急増。“アンチ・ピケ現象”の威力の強さを物語っていた。
 
 奇しくも彼らの中にはレアル・マドリーやスペイン代表のユニホームを着ている者、あるいはスペイン国旗を振っている者が多かった。彼らはピケのスペイン代表招集反対派。このバルセロナDFを“分離主義者”と見なしているからだ。
 
 ただ、ピケがここまで動いたことと言えば、カタルーニャ自治州の主権を巡る問題に終止符を打つため、2014年から複数回に渡り独立を問う住民投票の開催の必要性を訴えた程度。政治的な発言を口にしたことはないし、自らのイデオロギーを明らかにしたこともない。
 
 いい迷惑だったのは、チームメイトたちだ。観客席からグループで動く選手25人の中からピケを判別するのは難しく、自ずと多くの選手が集まっているところに向かって罵声が浴びせられた。その声はもちろんその場にいた全員に届いた。
 
 19時45分に始まったその日の練習は、初日だったこともありわずか20分ほどの軽めのメニューで終了。しかし「治安警備隊、万歳!」、「スペイン万歳!」といった掛け声が響くなど、その雰囲気は異様かつ険悪なものとなった。
 
 そのままピケを含む大半の選手は、ボールを蹴ることなくロッカールームに退いた。その後、GK陣とサウール・ニゲス、ペドロ・ロドリゲス、イアゴ・アスパス、チアゴ・アルカンタラの4選手が居残り練習を行なう中、「Iiiiiscoooo...!」と一部のファンはすでにその場を後にしていたアンダルシアの英雄の名前を連呼した。
 練習の2時間前にホテル入りしたピケは、その前に新たなツイートを投稿していた。その内容は、警官隊がゴム弾を発砲する映像と一緒に、「(警察は)プロらしく、適切に行動した」というソラヤ・サエンス・デ・サンタマリア副首相の行動を皮肉るものだった。
 
 ピケが頻繁にツイッターを更新するのは、今に始またことではない。しかし、以前は冗談が好きな“お騒がせ男”的な位置づけだったが、ここにきて政治活動家の代弁者のような存在へとその趣を急激に変えつつある。本人がそうした一連のツイッターでの活動を、カタルーニャ人としての義務と感じている節もあり、また代表でプレーすることと両立できるものだと考えているようだ。
 
 例えば9月28日、10月1日のカタルーニャ独立を問う住民投票を前に、投票を呼び掛けたツイートは賛否両論の大反響を呼んだ。ピケのツイッターのフォロワーは1600万人を超える。これはカタルーニャのいかなる政治家や機関、組織を上回る数であり、それだけ絶大な影響力を誇ることを意味する。
 
 そうしたフットボーラーとして特殊なステータスを得るに至ったピケは、スペイン代表でも異質な存在となっている。招集のたびの注目度からもそれは明らかだが、住民投票と代表戦が重なった今回は、その存在がとりわけ大きくクローズアップされている。
 
 しかしピケは、どんな時も自らの考えを主張することに躊躇がない。批判を承知の上でのラス・パルマス戦(10月1日)後の涙ながらの告白は、そんな彼ならではの行動であった。