レスターに所属する岡崎慎司。今季はすでにリーグ戦で3ゴールを記録している【写真:Getty Images】

写真拡大 (全2枚)

これまでの“守備的フォワード”という立ち位置

 開幕から7節を終えた17/18シーズンのイングランド・プレミアリーグ。そのなかでレスターに所属する岡崎慎司はここまですでに3ゴールを記録している。プレミア移籍後はストライカーというより潤滑油として存在感を発揮してきたが、今季の岡崎はなぜ得点力がアップしているのだろうか。レスター移籍後3年目、日本人FWはストライカーとしての光明を見出したようだ。(取材・文:Kozo Matsuzawa / 松澤浩三【イングランド】)

----------

 直近のボーンマス戦では後半15分に惜しいシュートはあったものの、ゴールを奪えなかった岡崎慎司。とはいえ今季は、まだ開幕から7試合ですでに昨シーズンに並ぶリーグ戦3得点(全公式戦では4得点)を挙げており、ここまでは好調を維持している。

 自身3得点目を決めた先月23日のリバプール戦後には、「今は割と流れが来ているかなという感じはしますね」と岡崎らしい独特の言い回しで調子の良さを表現していた。

 プレミアリーグ参戦以来、過去2シーズンの岡崎はレスターに欠かせない選手の一人としてプレーしてきた。しかしそれは守備のタスクを厭わないハードワークが売りの、世にも珍しい“守備的フォワード”という立ち位置を確立した結果であり、本来の希望であるストライカーとして重用されてきたわけではなかった。

 岡崎が加入してから2年強にわたりレスターを見てきたが、ひいき目抜きにしても、チームが機能する傾向が高いのは、この日本代表がセカンドトップの位置に入り、エースのヴァーディーと中盤の間に入る潤滑油としてプレーしたときだった。

 それにもかかわらず、クラウディオ・ラニエリ前政権から現在のクレイグ・シェイクスピア監督に交代して以降も、不可解な先発落ちや途中交代が目立っていた。もちろん戦術的な背景もあるが、最大の要因は点を取らないフォワードのイメージが定着したためだった。

 過去2季の岡崎の出場時間に目を向けてみると、奇跡の優勝を成し遂げた15/16シーズンはリーグ戦合計36試合に出場し、総出場時間は2069分で一試合平均のプレータイムは57分。先発した28試合に限れば、同66分である。そして昨季は、リーグ戦30試合に出場し、総出場時間は1571分。1試合平均のプレータイムは52分、先発出場した21試合においては同65分だった。

 翻って今季は、まだ序盤戦とはいえ、ここまで6戦出場して372分間プレー。一試合の平均プレータイムは62分。負けないチームをいじらない、ラニエリレスターが優勝した2季前よりも5分も長くなっており、さらに先発出場した5試合に限定すると同73分間プレーし、過去2季に比べてともに7分と8分長い間ピッチにいる計算になる。

なぜ今季の岡崎は得点力がアップしているのか

 これだけを見れば、すでに“ゴール効果”の高さが分かるが、それではなぜ今季の岡崎は得点力がアップしているのか。やはり、アーセナルとの開幕戦でゴールを決め最高の形でシーズンをスタートできたのは大きいが、さらに翌週のブライトン戦でも試合開始からわずか52秒でゴールを奪い、2戦連続得点に成功したからだろう。

 レスターでの一年目は、開幕2戦目のウェストハム戦でゴールを決めたものの、その後は3ヶ月以上、10試合にわたりゴールに見放された。だが今回は、プレミアに来て以来、初めてとなる2試合連続得点。そのどちらもが、いかにも岡崎らしいゴールだった。

 特に後者は、ゴールキーパーがボールをこぼしたところにゴール前に張っていた岡崎が素早く反応して押し込むという、狡猾なストライカーとして一面を発揮できた。

 ブライトン戦後の本人は「これまでやってきたことの積み重ねのゴール」とした一方、「リスクを怖がらずにトライしていくというのが今季の目標。この好調を次につなげたい。これが10点、7点、自分の記録を伸ばしていくことによって価値が生まれる。止まったらダメ。このままの勢いをつかんでいかないといけない。もっとボックス内で自分らしいゴールを取っていきたい」 と話した。

 そしてこれが2つ目の理由だ。

「積極的にエリア内に入ってほしい」。監督からの伝達

 ブライトン戦後の会見で、筆者はシェイクスピア監督に「なぜシンジが得点できるようになったのか?」と聞いてみると、以下のようなシンプルな回答がきた。

「シンジには、積極的にペナルティーエリア内に入ってほしいと話をしてある」

 そう、これまで以上に高い位置でプレーするように伝えたというのである。これについては岡崎自身も、「やることは変わっていない」と前置きしたうえで、

「ただ遅れて守備することが多い。位置を前に取っているというか、ボランチに行かせるようにしている。僕がそこまでいく必要ないって保ち続けるというか。それでもう間に合わなかったら自分がいけばいい、という感じで遅れて守備する感覚。時と場合によるんですけど、いけるときはそうやってもいいかな、と。

 前は必死に戻って必死に上がってやっていたが、いまは我慢して真ん中にいたりとか。点を取れているから交代しないからやっている部分はあるんですけど」 と説明。

 さらにリバプール戦後には、「今までなら受けて、考えてパスを出してという感じだったのを、パスを出した流れで抜けていったりとか。ボールを蹴る流れで先に走りだしたりとか。感覚で動いていくというのを、よりタイミングを(早めている)。

『こういう時はこう抜けた方がいい』とか。今までは『出ないだろうなぁ』とか『出たらしんどいな』とか。それよりも、今は45分だろうが60分だろうが、代えられるつもりでやっているところもある」と気持ちの変化にも触れ、これまでとの意識の違いを明かした。

「先発でも途中からでも変わらない意識でやりたい。例えば次戦で先発を外れて途中出場になっても、今日1点取っているので、絶対途中から出場するという考えでいける。

 だったら10分だろうが、20分であろうが、決定機で点を取る(意識を持っている)というか。90分間ずっとやりたい、というところでもなくなってきていると思うし。もちろんやりたいが、この立場だったり、ストライカーが多い中ではなかなか難しい」

快調なスタートも、本人は危機感を募らせる

 同時に、レスターでのプレーも3年目となり、チームメイトの意思疎通ができていることも要因に挙げる。

「シンジはこうするだろう、というのをもう分かってきていると思うので。プラス、シンジがこういうことが好きなのか、というのが理解してきてもらっているようにも思う。

 今までは味方に僕が合わせて、『シンジやりやすいな』と思わせたと思うんですけど、逆に今はこういうことが得意なんだ、ともっと分からせていけたらいいな、と思う。2年間このメンバーでやってきて、どこにこぼれてくるのかとか、どうやってやったら自分が決められるのかというのはずっと見てきた」

 快調なスタートも、本人は「続けなければいけない」と真剣な眼差しで話し、目標とする二桁得点についても「油断できない。試合に出られるか、常にわからないですからね」と冗談交じりに笑いながらも、危機感を募らせた。

 これまでイングランド国内では、ブンデスリーガのマインツ時代の点取り屋のイメージが完全に鳴りを潜めてきた岡崎。日本代表では3大会連続となるワールドカップ出場を目指すが、今回のニュージーランド戦(6日)とハイチ戦(10日)では、国内組で臨んだ大会を除くと12年10月以来の招集外となっている。

 格下相手の親善試合のために「温存された」と言われる一方で、一部ではヴァイッド・ハリルホジッチ監督のサッカーに合わないという声が出るなど、ここに来て黄信号が灯ってきた感もある。そんな逆風を封じてW杯への切符をつかむには、プレミアでの活躍が必至。

 岡崎は「選ばれなかったらこっちでまた頑張ってやるというスタンス」と話していただけに、今後2週間しっかりと調整して16日のウェストブロミッジ戦に臨みたいところだろう。

 普段、代表戦直後のリーグ戦では、長距離移動の影響が考慮されて控えとして扱われることが多いが、今回はその心配がない。イングランドに残されたサムライの活躍に期待したい。

(取材・文:Kozo Matsuzawa / 松澤浩三【イングランド】)

text by Kozo Matsuzawa / 松澤浩三