164cmの小柄な日本人アタッカーが、欧州最西端のリーグを沸かせている。

 今夏にFC東京からポルトガル1部のポルティモネンセにローン移籍した中島翔哉は、9月8日のプリメイラ・リーガ第5節のベンフィカとのアウェー戦に先発。リーグ戦デビューを飾ると、リーガ4連覇中の絶対王者を相手に躍動した。前半から何度もドリブル突破を仕掛けて目の肥えたファンを驚かせ、後半には元ポルトガル代表SBアンドレ・アウメイダからボールを奪い、ファブリシオの先制点をお膳立てした。


移籍後の4試合で3得点と活躍する中島

 その試合は最終的に1-2の逆転負けを喫したが、翌節のフェイレンセ戦では勝利の立役者になった。この試合でも左ウイングで先発すると、12分にボックス内でパスを受けて左足で先制弾。さらにその7分後には、エリア内へのパスに走り込み、今度は右足で合わせて追加点を挙げた。

 各試合のデータを独自の理論的なアルゴリズムで解析し、バイアスのない採点を行なっているポルトガルのウェブサイト『GoalPoint.pt』は、この日の中島を8.5と高評価。第6節のベストイレブンに選出されただけでなく、スポルティングのブルーノ・フェルナンデス(7.7)や、ベンフィカのジョナス(7.6)、ポルトのダニーロ・ペレイラ(7.5)といった一線級の選手たちを抑えて、同節の最優秀選手となった。

 さらに第7節では、2度の欧州制覇の実績を持つ名門・ポルトの本拠地でも輝きを放った。3点を先行された後の36分、逆襲からボックス際でパスを受けると、相手DFフェリペをかわした後、右足のアウトサイドのシュートで名手イケル・カシージャスを相手にゴール。完全に流れがポルトに傾いていたなかでの見事な一撃だった。

 第5節から第8節までの4試合で3得点。しかも、そのうち2つは、ベンフィカとポルトとのアウェー戦である。欧州初挑戦の23歳の記録としては、「見事」のひと言に尽きる。

 当然、現地での評価も急騰しており、多くのメディアから数々の賞賛を浴びている。『ラジオ・ラナセンサ』のレポーターは「毎試合、高いクオリティーとマジカルなスキル、傑出した決定力を見せている。キャプテン翼のような選手だ」と、日本が誇るサッカー漫画の主人公を引き合いに出した。また、『PortuGOAL.net』は、今季序盤戦で特筆すべき選手のひとりに中島を選び、「リーガで1試合に2得点を奪った初めての日本人選手。翔哉は極めて特別な才能を持っているようだ」と綴っている。

 メディアだけでなく、ポルティモネンセを率いるビトール・オリベイラ監督は、「速さはもちろん、強さもあり、1対1に絶対の自信を持っている。視野も広く、パスやシュートの能力も高い」と称えている。加入からひと月ほどしか経っていないが、早くも「今季終了後の買取オプションが行使されるはずだ」という報道も流れた。

『GoalPoint.pt』を立ち上げたジャーナリストのペドロ・ゴンサウベス氏は、中島がこれほどの注目を集めているのは、数字はもちろん、ポルトガルの中小クラブに似つかわしくない存在だからだという。

「ポルトガルにはベンフィカ、ポルト、スポルティングの3大クラブがある。それ以外のクラブにはリーグ優勝の望みがないに等しく、特にポルティモネンセのように昇格してきたばかりのクラブは、残留を目指してフィジカルに依存した戦いをする。そのため、肉体派の選手が多く、中島のように技術を武器に突破を仕掛けたり、意図を持ってプレーしようとする選手が少ないんだ。もし、彼がこの先も我が国でプレーを続けるのであれば、いずれかの名門の仲間入りを果たすことも十分にあり得る」

 同記者によると、中島がこれほどスムーズにポルティモネンセに順応できたのは、元鹿島アントラーズのファブリシオや、日本国籍を持つテオ・リューキといったチームメイトの存在が大きいと、本人も語っている。

 振り返れば、中島はアンダー世代の日本代表の常連で、U-17W杯やリオ五輪にも出場して世界を肌で感じてきた。エースナンバーを背負ったU-23代表では、五輪予選のイラン戦や本大会のコロンビア戦で圧巻のゴールを決めている。その後はFC東京で起用法が定まらなかったこともあり、雌伏(しふく)とも言える時期を過ごした。その意味で、今回の移籍は成功と言えるだろう。少なくとも現段階では、そうとらえて間違いない。

 ポルトガルへと旅立つ直前の8月26日に行なわれた横浜FM戦では終盤に投入され、巧みなループシュートでゴールを狙ったが、ゴールポストに阻まれた。試合後には「(ポルトガルで成長して)あれを決められる選手になりたい」と語り、「ポルトガルリーグは日本では知名度が低いけど、日本でも放映されるようにしたい」と続けた。

 残念ながら、次節以降も日本では生放送される予定はないが、このまま中島の活躍が続けば需要は高まるだろう。そしてその活躍は、早くから中島の才能に注目していたハリルホジッチ監督の元にも届くはずだ。キリンチャレンジカップを戦うメンバーには選ばれなかったが、この小兵アタッカーは未来の日本代表を担うべき存在。中島の”これから”が楽しみでならない。

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