「面接官の印象がよかった会社」で文系1位に輝いたのは、損害保険ジャパン日本興亜だ (撮影:今井康一)

就職活動の最大のヤマ場は面接だ。企業が学生を選考する場の一方、学生が志望企業を絞り込むプロセスでもある。

HR総研が今年6月に楽天「みんなの就職活動日記」と共同で行ったアンケート調査によれば、「面接官の印象が志望度に影響した」のは、文系で93%、理系で86%にのぼる。昨今の新卒採用市場は空前の売り手市場であり、企業が採用で成功するためには面接で学生に良い印象を持ってもらう必要がある。

文系上位は銀行、損保、航空、旅行​​​​


ではそうした面接で「面接官の印象がよかった会社」はどこか? 同調査では就活生にその1社を選んでもらっている。その結果が「面接官の印象がよかった会社」ランキングで、文系学生、理系学生ごとに集計している。

文系で目立つのは、銀行、損保、航空、旅行系の企業だ。1位は損害保険ジャパン日本興亜で、2位みずほフィナンシャルグループ、3位三菱東京UFJ銀行と続く。

4大銀行は11位までに全社顔を揃え、損保は損害保険ジャパン日本興亜のほかに、7位東京海上日動火災保険、18位三井住友海上火災保険らが入っている。航空では6位日本航空(JAL)、7位全日本空輸(ANA)がランクイン。旅行系では4位JTBグループと19位近畿日本ツーリスト(KNT)がランキング入りしている。

理系では、1位の野村総合研究所(NRI)に加え、2位にアクセンチュアが入り、総研・コンサル系の存在が際立つ結果となった。総研・コンサル系は人気ランキングで、上位に位置するが、1位2位を独占するところまでいってないだけに、象徴的な結果だといえるだろう。なおアクセンチュアは文系でも5位にランクインしている。

日立製作所パナソニックも同率の2位。電気系ではこのほかに日本電気(NEC)が10位に入っている。自動車関連も強く、デンソーが5位、日産トヨタが同率の16位だ。

それ以外で存在感を放っているのが、食品メーカーとトイレタリーメーカー。食品では味の素カゴメが5位、9位アサヒ飲料、10位明治グループ、16位ハウス食品と、ベスト20に5社がランクインしている。トイレタリーでは花王ライオンが同率で10位となっている。

日常的に食べたり使ったりする製品を作るメーカーは、知名度や親しみがあることから、面接でも話が弾みやすく、好結果に結びついているのかもしれない。

損保ジャパンは「和やか」、みずほは「しっかり」


面接官のどこが好印象なのかを企業ごとに見てみよう。まず文系1位の損害保険ジャパン日本興亜で目立つ言葉は「和やか」と「穏やか」だ。

「和やかな雰囲気だったため」(関西学院大学、文系)、「穏やかで話をひきだしてくれた」(同志社大学、文系)、「和やかだった」(東京大学、文系)、「終始和やかに頷きながら話を聞いてくださったため」(九州大学、文系)など、28票のうち、6人から「和やか」「穏やか」というコメントが入っていた。

2位のみずほフィナンシャルグループで目立つのは「しっかり」であり、学生と真摯に向き合おうとする姿勢が好感されているようだ。

「常に笑顔でしっかりと話をきいてくれた」(学習院女子大学、文系)、「しっかりと学生の話に耳を傾けてくれたから」(中央大学、文系)、「非常にしっかりとこちらの話に耳を傾けてくださっている印象だったから」(明治大学、理系)。

3位の三菱東京UFJ銀行で目立つ言葉は「圧迫面接」。どうやら事前にネット上で圧迫面接をするのでは? という口コミ情報が広まっていたようだが、それが実は誤解だったと振り返るコメントが多かった。

「圧迫面接がなかった。話をちゃんと聞いてくれた」(同志社大学、文系)、「圧迫面接をしようとしているが、社員の人の良さがにじみ出ていて、がんばって圧迫風にしようとしているように感じられ、その様子がかわいかったため(笑)」(京都大学、文系)。きつい面接を覚悟していたら、意外なことに人間味あふれる面接官だったので、好感度が増したようだ。

4位のJTBグループは面接官の態度が評価されている。

「学生の良さを引き出そうとする姿勢が見受けられ、とてもよい時間を過ごすことができた」(南山大学、文系)、「目をみてしっかりと話を聞いてくれた。選考の際、配慮もされていた」(桜美林大学、文系)、「うなずきながら真剣にメモをとって聞いてくれた」(同志社大学、文系)。「目を見る」「メモを取る」といったビジネスコミュニケーションの見本を見せてもらえたと感じるのだろう。

文系5位、理系2位のアクセンチュアのコメントを読むと、カジュアルな面接官が多そうだ。

「頭脳明晰、明るく接しやすかった」(早稲田大学、文系)、「私の話に大笑いしてくれたから」(早稲田大学、文系)、「私の話だけでなく、社員さんの話もたくさんしてくださった。面接というより会話だった」(大阪大学、文系)。外資系コンサル企業なので緊張して面接に臨んだら、意外に気さくな面接官で安心したような雰囲気がただよっている。

理系学生は話の中身を重視している


6位の日本航空(JAL)のキーワードは「笑顔」。「笑顔で興味を持ってくれた」(白百合女子大学、文系)、「笑顔がとても良く、丁寧な対応だった」(青山学院大学、文系)。

7位東京海上日動火災保険は、「私の話に興味を持って聞いてくれたので。また、掘り下げの質問が非常にクリティカルで、自分自身の新たな一面に対する気付きにも繋がった」(大阪大学、文系)、「一対一で長時間話を聞いてくださった」(大阪大学、文系)など、親身な姿勢が好印象に繋がっている。

同率7位の全日本空輸(ANA)の面接官は優しい。「相槌や目がよくあって、聞いてくれている感じがした」(関西学院大学、文系)、「面接官が笑わせたりしてくれて緊張がほぐれたから」(早稲田大学、文系)といったコメントが続いた。

同率7位のりそなグループのコメントには、「待合室から見送りまで学生を気にかけてくれる。最初から最後まで個別で、しっかり個人を見てくれる」(東北大学、文系)など、気配り上手な面接官に対する評価が高かった。

文系学生と理系学生の面接官に対する評価理由は異なっている。文系学生は面接官の態度(「和やか」「穏やか」など)に関するものが多い。理系学生でも態度を気にしているが、それ以上に話の中身(学生の専門性に対する理解)を重視している。

理系1位の野村総合研究所(NRI)に対する学生のコメントから見てみよう。

「私の話した内容に対する質問が上辺のものではなく本質をついた質問であると感じたため」(早稲田大学、理系)、「時間を延長してでもたくさん聞いて頂いたから」(神戸大学、理系)といった声が並ぶ。

理系の2位の日立製作所に対しては、「志望部署と、自分の大学での研究内容に関連がなくても、真摯に話を聞いてくれた。対応がていねいでしっかりと『人』を見ようとしてくれていた」(埼玉大学、理系)といったコメントがあった。

同率2位のパナソニックには、「自分の研究内容をしっかり理解しようとしてくださっていた」(東京工業大学、理系)、「研究についての理解度がよかった」(名古屋工業大学、理系)といった意見が書かれていた。

共感力を持つ面接官に学生は共鳴​​​​​​


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理系の5位4社については、簡単にコメントを紹介していこう。

5位味の素:「技術面接において、質問を飛ばすなどではなく、対等にディスカッションをしてくれたため」(東京大学、理系)、「こちらの研究内容について適切に理解し、かつ有意義な質問をしてくれたため」(横浜市立大学、理系)。

同5位デンソー:「相手のことを思いやるような態度で面接に臨んでいたから」(名古屋工業大学、理系)、「学生の進路決定を縛らない懐の広さ」(京都大学、理系)。

同5位カゴメ:「定型ではなく、それぞれの人にあった質問だったため、自分の考えなどを伝えやすかったから」(奈良女子大学、理系)。

同5位NTTデータ:「考えさせられる内容だったため、本当の実力を測られた気がしたから」(中央大学、理系)、「質問の質が明らかに高い」(中央大学、理系)。

同5位アサヒ飲料:「面接の際にあらかじめ用意してある質問だけでなく、その場で疑問に思ったことを聞いてきた」(東京大学、理系)。

「学生に共感する能力を持つ面接官」に対して学生は共鳴し、好印象を持つ傾向もある。評価されると人は好きになる。これは面接以外の人の付き合いでも同じだ。印象が良かったと回答した学生は、その会社での評価も高かったのかもしれない。

面接の結果、採用しないことになる学生もいるわけだが、たとえそうであっても、面接は学生にとっては貴重な一期一会だ。一人ひとりの学生の記憶に残る面接になるよう、企業の面接担当者は意識してもらいたい。