“オリジナル・ウィリス”完全復活! コメディ俳優ブルース・ウィリスの真骨頂『バッド・ウェイヴ』

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 原点回帰という言葉があるが、本作のブルース・ウィリスはまさにそれだろう。映画のコピー通り、「完全復活」と言えるかもしれない。ただ、それは本当に本当の原点、いわば“オリジナル・ウィリス”の完全復活を指す。では“オリジナル・ウィリス”って何よ? と思われるだろうが……これを知るためには、ウィリスのブレイク時まで話を戻さねばならない。

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 ブルースと言えば何は無くとも『ダイ・ハード』(88年)。武装集団相手に孤軍奮闘し、何があろうと絶対に死なない男ジョン・マクレーン。80〜90年代を象徴するアクション・ヒーローである。シュワちゃんのターミネーター、スタさんのランボー、そしてブルースと言えばジョン・マクレーンだ。しかし、ブルースの本格的なブレイクは、実は『ダイ・ハード』以前に遡る。そもそもブルースの最初のブレイクは、映画ではなく、TVドラマ『こちらブルームーン探偵社』(85〜89年)。ここでブルースは三枚目の探偵を演じ、一躍売れっ子俳優になったのだ。ここでの人気があったからこそ『ダイ・ハード』にも抜擢されたのである。

 つまり、ミラジョヴォと未来都市を走り回り、宇宙で隕石を爆破していたせいで筆者もすっかり忘れていたが、そもそもブルースはコメディから出てきた役者なのだ。『ダイ・ハード』だって、特に1〜3まではコメディ調のシーンが多いし、「冴えない中年男性がド根性と知恵をフル活用して、時にユーモラスな手段で危機を脱する」という箇所に物語のミソがある。そのミソとブルースのコメディの素養とが上手く結びつき、結果として『ダイ・ハード』は歴史に残る名作となったのだ。

 本作『バッド・ウェイヴ』(17年)では、そんなコメディ俳優ブルース・ウィリスの真骨頂が楽しめる。あらすじは、ブルース演じる私立探偵スティーヴが、あっちこっちで起きるトラブルの解決に奔走するというもの。

 しかし実際のところ、物語の本筋はそこまで重要ではない。楽しむべきは俳優陣のアンサンブル、そしてブルースの暴走だ。依頼人の妹に速攻で手を出すブルース、全裸で街中を疾走するブルース、1秒で考えたようなウソで修羅場を乗り切るブルース、よく殴られて気絶するブルース、ドラァグクイーンの方に掴まって剃毛されそうになるブルース……。最近は頼れる正統派タフガイ役が多かった反動か、本当にしょうもない私立探偵をブルースは喜々として演じている。

 そんなブルースの前に立ち塞がるのはアクアマンことジェイソン・モモア。こちらもブルースに合わせて、気は優しいが力持ち(そして人殺し)なギャングのボスを楽しそうに演じている。二人のピザを巡るやり取りの微妙な空気は、ある意味で本作最大の見せ場だろう。

 良い意味でスケールが小さく、端的に言ってしまうと……緩い。観ている間の感覚は、映画というより深夜ドラマを観ているのに近いだろう。しかし、だからこそブルースの原点を感じさせる。数々のアクション映画や、『シックス・センス』(99年)などのシリアスなドラマに埋もれがちだった、コメディ俳優ブルース・ウィリスの真骨頂を味わえるはずだ。観ている最中「そうそう、ブルースは元々こういうダメな中年男性が上手かったんだよ……!」そう膝を叩くことだろう。(加藤よしき)