予選突破のキーマンとも言えるイカルディ(右)。自身の代表入りを拒絶していたというメッシとの連携にも注目が集まる。(C)Getty Image

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 まさかの不調に陥っている。
 
 リーガ・エスパニョーラとセリエAでそれぞれ得点ランクのトップを走るリオネル・メッシ(バルセロナ)とパウロ・ディバラ(ユベントス)をはじめ、セルヒオ・アグエロ(マンチェスター・シティ)やゴンサロ・イグアイン(ユベントス)といった超豪華なアタッカーを揃えるアルゼンチン代表が、だ。
 
 ロシア・ワールドカップ出場を懸けた南米予選で、16節を終えてオセアニア地区1位(ニュージーランド)とのプレーオフに回る5位。6位チリとの勝点差はわずかに1ポイントで、48年ぶりの予選敗退も十分にありえる。深刻なのは得点力不足で、多士済々のストライカーを擁しながら、16試合で10か国中最低の16ゴールしか奪えていない。
 
 残り2試合、10月5日のペルー戦と10日のエクアドル戦は、絶対に落とせない一戦。この文字通りの大一番で代表初ゴールを待望されているのが、FWマウロ・イカルディだ。
 
 インテルではここ3シーズンで計62ゴールを挙げ、2014-15シーズンにはセリエAの得点王にも輝いている点取り屋は、これまでは代表とはほとんど縁がなかった。13年の10月に初キャップ(出場時間は7分間)を刻んで以降、一度も声が掛からなかったのだ。
 
 その大きな理由のひとつと考えられているのが、サンプドリア時代にチームメイトだった同胞の先輩マキシ・ロペスの妻ワンダ・ナラさんを寝取った事件だ。
 
 アルゼンチンの英雄ディエゴ・マラドーナからは、公然と「あいつは裏切り者だ」と批判され、メッシやハビエル・マスチェラーノ(バルセロナ)といった重鎮たちからも代表入りを快く思われていなかったという。故に実力はあっても機会が与えられなかった、とされてきた。
 
 だが、母国が窮地に陥ったことでようやくチャンスが巡ってきた。6月のフレンドリーマッチで約3年半ぶりに招集(出場はなし)を受けると、9月のワールドカップ予選でもイグアインを蹴落としてメンバー入りを果たした。
 
 敵地でのウルグアイ戦(15節)とホームのベネズエラ戦(16節)でいずれもCFとしてスタメン出場。ゴールは奪えず、チームも2試合連続ドローに終わったものの、ホルヘ・サンパオリ監督から見切りをつけられることはなく、「最終決戦」に臨むメンバーに再び名を連ねた。
 コンディション不良のイグアインに加え、交通事故による怪我でアグエロが招集外となった今回、イカルディにかかる期待は小さくない。
 
 しかし、アルゼンチン紙『オレ』が実施した「イカルディと(ダリオ・)ベネデット(ボカ・ジュニオルス)のどちらをCFで起用すべきか」というアンケートでは、イカルディが24%で、ベネデットが76%だった。国民に不人気なのは明らかだ。
 
 9月の2連戦で不発に終わったのが最大の理由のようだが、同胞の先輩の嫁を略奪したという一件が、少なからずアンケートの結果にも影響しているのだろう。
 
 はたして、この「嫌われ者」がアルゼンチンの救世主となるのか――。ちなみに、1998年フランス・ワールドカップで愚行によりレッドカードを食らい(相手はアルゼンチンだった)、「戦犯」として激しいバッシングに晒されたイングランド代表のデイビッド・ベッカムは、02年日韓ワールドカップの欧州予選の活躍で国民の信頼を取り戻している。
 
 最終節のギリシャで、後半ロスタイムに鮮やかなFKで劇的な同点弾を叩き込み、ワールドカップ出場を手繰り寄せたのだ。
 
 同様にこの大事な2戦で結果を残せば、イカルディが一気に英雄扱いされる可能性も少ある。逆にもし精彩を欠いて、アルゼンチンがロシア行きの切符を逃そうものなら、それこそ誹謗中傷の的となるのは間違いない。

 イカルディにとって10月のワールドカップ予選は、今後の代表キャリアを左右する2連戦になると言っても過言ではないだろう。

文:ワールドサッカーダイジェスト編集部