すっかり浸透した「制服ディズニー」。その最新事情とは?(写真:研究員提供)

「制服ディズニー」という言葉を知っていますか?

制服ディズニーとは、中学生や高校生ではない、大学生や社会人が、過去の制服を引っ張り出してきて着て、集団でディズニーランドに行く現象のことです。今から5年前の2012年、筆者が所属する若者研究所ではいち早くこの「制服ディズニー」についてレポートしました。

今では制服ディズニーは完全に若者の間で定着していますが、あれから数年経ち、若者たちがディズニーランドに、サークルなどの集団で「おそろいコーデ」として行く格好のバリエーションも大変増えました。

たとえば、オタクコスプレ、ジャージ、スーツ、ダッフィーの格好、シェリーメイの格好、オールホワイトコーデ、オールブルーコーデ等々……。こうした数々のバリエーションの中でも、最新事例と言えるのが「体操着ディズニー」。この新しい高校生のトレンドを現場研究員の若者たちがレポートしてくれます。

体育の時間だけに着るものではなくなっている


今回レポートしてくれる若者研究所の現場研究員たち。写真左より、船田千紗(慶應義塾大学1年)、佐藤美梨(慶應義塾大学)、藤内優音(慶應義塾大学1年)

体操着と聞くと、どのようなイメージを持つだろうか? 最近、高校生の間では、体育の時間だけに着るものではなくなっているのである。

Instagramで「#体操着」と検索すると、6267件(2017年6月21日時点)も投稿されている。ただ体操着を着ているだけではInstagramに投稿するほどの話題性もないのに、なぜ高校生たちは今「#体操着」の写真を投稿しているのだろうか? 今回は高校生の体操着事情に迫ってみた。

まず初めにインタビューしたのは、神奈川県私立高校3年生のAくん。クラブチームでサッカーに励む一方で、塾にも通いつめていた文武両道ボーイ。顔が広く、誰とでもすぐに打ち解けられる、明るい性格の持ち主だ。

そんなA君は3月中旬、高校最後の思い出作りに、同じサッカー部で、1年生の頃同じクラスの「いつメン」(=いつものメンバー)だった3人と体操着を着てディズニーシーに行った。

なぜ体操着でディズニーに行ったのか尋ねると、「初めて3人で写真撮ったのが体操着で、原点に帰ろう! みたいな感じで決めました」とのこと。加えて、「だいたいSNSを見ても、ディズニー当日も、高校生の大半は制服やペアルックが多かった。そんな中で体操着は同じディズニーの写真でも他の人と差が出せるなと思った」という。


体操着は同じディズニーの写真でも他の人と差が出せるアイテムだ(写真:研究員提供)

「他の人との差」を意識した理由として「目立って声をかけられたかったし、「写真撮ってください」って言われたかった。あとは笑ってほしかった。今回、女子高生100人と写真を撮るって目標でディズニーに行ったこともあって、写真撮るきっかけをつかめる面白い服装も意識しました」とユーモアたっぷりに答えてくれた。

Aくんたちにとって、体操着は学年ごとに決められたカラーのせいもあってダサいものだったそうだ。そこで、そのダサさをあえて強調させようと、シャツをズボンの中に入れて、わざとみんなが履きたがらない学校指定の白ソックスを履いたという。Aくんたちの“体操着ディズニー”では、何かと「あえて」や「わざと」がポイントになったようだ。

彼はディズニーパーク内ではInstagramのストーリー機能(投稿から24時間経過すると自動的に写真が消える機能)で投稿を続け、翌日に普通の投稿を行なった。そのわけを聞くと、「パーク内では今の状況を載せておこうという思いでストーリー機能を使って、帰ってからいちばん服装が映える写真を選んで振り返りの意味で投稿した」という。彼の投稿には多くの反応が寄せられ、Instagram以外のSNSでもAくんたちの体操着ディズニーが話題に上がったという。

インタビューの最後に体操着ディズニーの感想を聞くと、「とにかく注目されるし、俺たちの体操着姿を見た瞬間に笑ってくれたり、一緒に写真をお願いされたりした。高校最後の良い思い出になった。体操着ディズニーやってよかった!」と答えてくれた。

思わず2度見してしまう度肝を抜く写真


前回は一色コーデで揃えていたが、今回は…(写真:研究員提供)

次に話を聞いたのは、3月まで県立の女子高に通っていたBさん。ディベート部に所属する彼女は、人前で堂々と白熱したディベートを展開したりする。教室ではクラスメイトから「うるさい!」と言われてしまうほど明るく活発で、笑顔が絶えない、誰とでも自然と仲良くなれるコミュ力(コミュニケーション能力)高い系女子高生だ。Aくん同様、BさんのInstagramにも思わず2度見してしまう度肝を抜く写真が投稿された。

3月中旬、高校生の間にしかできないことをしようと、ディベート部の同級生2人と体操着・地元の名産品の被り物・ヒヨコのポシェットというスタイルでディズニーランドに出かけた。

実はこの3人でディズニーランドに行くのは2回目。前回3人でディズニーランドに行った際には全身青、黄色、ピンクのパニエやパーカー、サングラスでそれぞれが一色でコーディネートを揃えていた。


2年間はパニエで挑んだが、目立っていることを実感できなかったという(写真:研究員提供)

パニエは2年ほど前に流行した薄い生地が何枚も重ねられたふわふわとしたスカートだ。パニエは390円という低コストでおそろいにできる手頃さ、ふわふわに広がるかわいさ、キャストやキャラクターに気が付いてもらえる派手さという理由で選んだそうだ。

しかしその時にはすでにパニエの流行は冷め始めていた。派手さを求めたにもかかわらず、あまり目立っていることを実感できなかった3人。そのときに、かわいさが求められる格好ではなくもっと目立つ格好がしたい、シンデレラ城の前で写真を撮っている人たちを牽引し、「一緒に写真を撮ってください」と声をかけられたいと話が上がり、体操着を着ることを決めたという。

部員全員に声をかけたところ、恥ずかしさや日程が合わないなど理由はさまざまだったが、発案者である3人しか集まらなかったのだという。いまや高校生や大学生が制服でディズニーに行くことが当たり前になっている。中には制服ディズニーを楽しむ社会人もいるようだ。

「恰好から入る」という新しいディズニーの楽しみ方。SNSの普及により、それまでアトラクションに乗ることがメインだったディズニーが写真を撮って楽しむためのディズニーに変貌していく中、その中でもっと目立ちたい、もっといい写真が撮りたいと気持ちが高まっていった結果だろう。

「制服ディズニー」が高校生の特権でなくなった結果…


名札まで凝っている(写真:研究員提供)

そもそもBさんにとって体操着は「すごくダサくて嫌い」なものだった。しかしそのダサさとシュールさがディズニーという夢の国ならば体操着が“特別なもの”に変わる。いつもと違う自分を演出することもできるとBさんは言う。「制服ディズニー」がもはや高校生の特権でなくなってきた結果、体操着に目をつけたのかもしれない。

体操着ディズニーの様子をInstagramに投稿したBさん。その狙いを聞いてみると、「誘ったけど断られたディベート部の人たちに写真を見たいと言われたから。体操着の緑色と、苺の赤の色味がすごくインスタ映えすると思ったから」とBさんは答えてくれた。

二つの事例からInstagram世代の若者たちにとっては、遊んでいる時の楽しさも大事だが、遊び終わった後にSNSでどれだけ目を引く写真が投稿できるか、どれだけ多くの人から「いいね」をもらえるのかということが重要であることがわかる。「制服ディズニー」では制服を着た自分たちのかわいさや若さをアピールするようなものと見透かされつつある。そうした中、今回取り上げた「体操着ディズニー」はあからさまなアピールにも見えず、見ている側はディズニーほど嫌味を感じない。可愛さよりもネタっぽさ、面白さを追求しているからだ。

また先ほども少し触れたが、大人がコスプレで「制服ディズニー」をするケースも少なくない。夢の国の中で「制服=高校生」というイメージが薄れ、制服を着ていることは女子高生たちが口々に発する「JKブランド」のアピールに何も役立たない。そんな学生たちにとって制服に代わる新たなアピール方法が体操着だったのではないか。

やっている人も楽しく、見ている人も嫌味を感じない。若者にとって生活がSNSに囚われていることには未だ変わりないが、今や可愛さだけがすべてではない。今後も高校生がユーモアと学生らしさのあふれる体操着を着てディズニーを楽しむ姿を度々目にするだろう。 

原田の総評:「集団で目立つのはよい」という若者心理

現場研究員のレポート、高校生たちによる体操着ディズニーはいかがでしたでしょうか?

過去の若者たちは、個性を追い求め、周りと被ることを嫌う傾向が強かったように思いますが、今の若者たちは「双子コーデ」や「ニコイチ」「サンコイチ」「おそろいコーデ」などという言葉が示すとおり、テーマパークやハロウィンなどのシーンやシチュエーションによっては、「被る」ことを望むようになってきています。

一人で過剰に目立つのは嫌。SNSで拡散されたり、バッシングされてしまうかもしれない。しかし、集団で目立つのは良い、という心理が働いているのかもしれません。

今後も体操着を超えるおそろいコーデがたくさん出てくることになると思います。たとえば、数年前のハロウィンでは、カップラーメンのコスプレなどが流行ったこともありましたが、企業としては、この若者たちのテーマパーク(USJやピューロランドなども)における「おそろいコーデ願望」をうまく利用すれば、自然に彼らが自社や自社製品などの広告媒体になってくれるかもしれません。ぜひ、この若者たちの動向にご注目下さい。