【コラム】欧州で確かな経験を積む小林祐希…「自分流」を貫き日本代表の新たな風に

写真拡大

 2018 FIFAワールドカップロシア本番へ新たな一歩となる6日のニュージーランド戦(豊田)が2日後に迫ってきた。「今回はあまり出ていなかった選手に機会を与えたい」とヴァイッド・ハリルホジッチ監督が話していた通り、新たな顔ぶれがピッチに立つ可能性が高い。

 2016年6月のボスニア・ヘルツェゴヴィナ戦(吹田)で初キャップを飾り、11月のオマーン戦(カシマ)で代表初ゴールも決めながら、最終予選出場なしに終わった小林祐希(ヘーレンフェーン)も候補者の1人。前回のオーストラリア(埼玉)・サウジアラビア(ジェッダ)2連戦でもベンチ入りしながらお呼びがかからず、本人としては悔しさをひしひしと感じながらオランダに戻ったに違いない。

 その後、所属クラブでは4戦連続フル出場。今シーズン7試合を通して見ても、途中交代を余儀なくされたのは、8月19日のヘラクレス戦だけだ。チームで思うように出番を得られない欧州組が少なくない中、小林のコンスタントな活躍ぶりは特筆に値する。ヘーレンフェーンも目下、エールディヴィジで5位と好位置につけているだけに、彼の評価が上がるのも当然だろう。

「自分のチームが上位にいて、リーグのレベルを上げられるかはすごく大事。1個2個レベルが上がっても、試合に出続けることができたら、(代表)スタメンにも近づくと思うんで」と本人も今のパフォーマンスが代表定着、ロシア行きにもつながるという確信を抱きつつ、今回の2連戦に合流した。

 直近の10月1日のアヤックス戦は、結果こそ0−4と振るわなかったが、彼自身は相手に対しての激しい寄せと球際の迫力を披露。長年の課題と言われた守備が大きく改善している印象を色濃く残した。

「みんな俺のイメージで『守備しろ、守備しろ』って言うから。それは小さい時からイメージがついているんでしょうがないですね」と本人は苦笑いしたが、「正直、アヤックスとやっても守備面の差は感じなかったし、成長していると思う」と少なからず自信をのぞかせた。

 ロシア行きを決めたオーストラリア戦でインサイドハーフに入った井手口陽介(ガンバ大阪)と山口蛍(セレッソ大阪)が、凄まじいプレスと高度なボール奪取力を前面に押し出して相手の自由を奪ったように、インサイドハーフやトップ下に入る選手も守りができて初めて使われる。それがハリルホジッチ監督の基準だということを、小林自身もよく分かっている。次のニュージーランド戦のピッチに立ちたいと思うなら、そのノルマだけは確実に果たさなければならない。そのうえで、武器である傑出した攻撃センスを発揮すること。他の選手との違いを示すこと。それが強く求められる。

「(インサイドハーフに入る選手は)みんな走れるんで、自分はそんなに動きすぎなくてもいいかなと。みんなが動いている時に自分が止まれば勝手にマークも外れるんで。止まってマークを外した方が周りが生きるのかなという感じはします」と本人は頭を使った駆け引きをピッチ上で表現しようとしている。

 確かにそれは若い井手口やボランチを本職とする山口にはできない部分。香川は卓越した国際経験と戦術眼を備えているが、小林ほどのフィジカルはない。182センチ72キロという日本人MFにしては大柄な体躯を生かして相手をつぶし、ボールを奪い、得意の左足でミドルシュートやFKを決める。そうやって攻守両面で存在感を発揮できれば、尊敬する先輩・本田圭佑(パチューカ)が2010年南アフリカワールドカップ前に駆け上がったスターダムへの階段を、彼自身もロシアまでの9カ月間で上れるかもしれないのだ。

 そんな周囲の期待を分かったうえで、「俺は本田の後継者でも、長谷部(誠=フランクフルト)の後継者でもないんで。俺は小林祐希なんで。そういうふうに見るのはいいけど、俺は思っていない。俺は俺らしくやりたい」と言い切ってしまうのが、日本人離れしたメンタリティを持つこの男らしさ。本田や長谷部のいい部分は真似して、積極的に取り入れるつもりだが、あくまでオリジナリティを大事にする。それを日本代表に還元して、チームを光らせ、自分自身も輝く…。そういう存在になるべく、小林祐希は飽くなきチャレンジを続けていくつもりだ。

「たぶん今の代表の中心選手たちが抜けたら、日本代表はアジアですら勝てない時期が続くかもしれないって思われてる。『そんなの冗談じゃねえ』って感じですね。ふざけんなと。そんなこと、絶対言わせないって俺は思っています」と彼はまだ代表に呼ばれたり呼ばれなかったりしていた今年2月、こう語気を強めたことがあった。その中心選手の筆頭だった長谷部、本田、岡崎慎司(レスター)の3人が揃ってメンバーから漏れている今回、まさに小林が自覚する「若手世代の存在価値」が試されることになる。彼が持ち前の強気な姿勢を押し出し、周りをリードしてくれれば、日本代表に新たな風が吹く可能性は大いにある。

文=元川悦子