全国の旅行業1,700社の2016年度(2016年4月-2017年3月)の売上高合計は、2兆6,241億3,100万円(前年度比2.2%減)と低迷し、利益金も155億7,100万円(同45.6%減)とほぼ半減した。
 国内宿泊旅行の不振、テロによる欧州旅行の低迷などで旅行業界の環境は厳しく、特に売上規模が小さい企業ほど赤字率が高く、小・零細規模の旅行業者の苦境が浮き彫りになった。
 また、2016年度に休廃業・解散した旅行業者は80社で、前年度より11社(15.9%)増加した。80社のうち、資本金1億円以上の企業はゼロで、少額資本または個人企業が大半を占めた。


  • 本調査は東京商工リサーチ(TSR)が保有する企業データベース(309万社)から、主業種が「旅行業」で、売上高が2014年度から3期連続で比較可能な1,700社を抽出、分析した。利益金は当期純利益を示す。

旅行業1,700社 2016年度は2.2%減収

 旅行業1,700社の2016年度の売上高合計は、2兆6,241億3,100万円で、前年度より609億300万円(2.2%)減少した。2016年4月の熊本地震に加え、8月に北海道・東北に甚大な被害をもたらした大型の台風10号の影響など、観光シーズンに相次ぐ天災も痛手となり、国内宿泊旅行を控える動きが強まった。
 また、海外旅行も欧州のテロ事件などで低迷したことも影響した。
 観光庁の「宿泊旅行統計調査」(2017年6月公表)によると、2016年の国内延べ宿泊者数は4億9,249万人泊で、前年比2.3%減少した。外国人宿泊者数は同5.8%増の6,939万人泊と過去最高を記録したが、日本人の宿泊者数が4億2,310万人泊(3.5%減)と低迷、旅行業界の厳しい状況を裏付けた格好となった。
 利益金合計は155億7,100万円で、前年度より130億5,900万円(45.6%減)減少した。国内旅行の不振だけでなく、高収益とされる欧州などの海外旅行も落ち込み、利益半減に拍車をかけた。

売上高別 5億円未満が8割以上

 1,700社の売上高(2016年度)の内訳は、1億円未満が777社(構成比45.7%)と半数近くを占めた。
 次いで、1億〜5億円未満が619社(同36.4%)、5億〜10億円未満が118社(同6.9%)。売上高10億円未満は1,514社(同89.0%)と、中小・零細規模の業者が全体の約9割を占めた。
 一方、50億〜100億円未満は23社(同1.3%)、100億円以上は34社(同2.0%)にとどまる。売上高100億円以上の34社の売上高合計は1兆9,518億1,300万円で、旅行業界全体の74.3%を占め、寡占化が進みつつある。

売上別損益 10億円未満の23%が「赤字」

 2016年度の売上高、利益が判明した972社をみると、売上高が1億円未満の377社のうち、「赤字」が87社(構成比23.0%)で、約4社に1社が赤字だった。
 一方、50〜100億円未満の21社では、「赤字」は1社(同4.7%)、100億円以上の32社では3社(同9.3%)。50億円以上の53社では、「赤字」は4社(同7.5%)にとどまった。
 10億円未満の812社では「赤字」が147社(同18.1%)と約2割に達しており、規模格差が損益に影響している。

休廃業・解散、倒産の状況

 旅行業の休廃業・解散は、2008年度以降、毎年60社以上のペースで推移し、2016年度は前年度より11社多い80社と、倒産件数(27社)の約3倍に達した。倒産は沈静化をみせるが、休廃業・解散は高止まり状態が続いている。
 倒産と休廃業・解散の合計は2016年度で107社を数え、2013年度以降、毎年約100社が消滅している。
 2016年に休廃業・解散した80社を資本金別でみると、1億円以上はゼロだった。一方、資本金1,000万円未満は33社(構成比41.2%)、個人企業は4社(同5.0%)で、小・零細規模の企業が半数を占めた。

 旅行業1,700社の2016年度の業績は、国内旅行が観光シーズンの台風や熊本地震などの天災に見舞われ、海外旅行も欧州のテロなどが影響し、低迷が目立った。
 最近は、旅行客が自ら宿泊やチケットをインターネットやスマホアプリでブッキングするスタイルが浸透している。だが、小・零細企業は大手のような集客システムへの投資が追いつかず、調達コストも劣勢に立たされている。こうしたトレンドが、小・零細規模の企業をより厳しい採算に追い込み、倒産だけでなく休廃業・解散も増える背景となっている。
 今年に入っても天候不良や海外テロなど、旅行客のマインドに大きな影響を及ぼしかねない事象が相次いでおり、小・零細規模の旅行業者は受難の時期を迎えている。