ハリルJの熾烈な世代間競争にベテラン陣も危機感 鳴り響く“サバイバル”のゴング

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10月2連戦で本田や岡崎らが落選 長友も「次は自分にその番が…」

 バヒド・ハリルホジッチ監督が率いる日本代表は、10月のインターナショナルマッチウィークを利用し、6日に豊田スタジアムでニュージーランド代表、10日に横浜国際競技場でハイチ代表と対戦する。

 これから来年6月のロシア・ワールドカップ(W杯)までの期間で一つ焦点になるのは、ベテラン勢の生き残りを軸とした世代間での競争だ。

 現在、日本代表の中でキャップ数が多い看板選手たちは、30代前半から20代後半の世代にある。4年刻みで開催される五輪を目安にすると、2008年の北京五輪に出場する資格を持っていた選手たちが中心だ。

 それは自然なことである一方で、今回のメンバーからはFW本田圭佑(パチューカ)、FW岡崎慎司(レスター・シティ)、MF長谷部誠(フランクフルト)といった選手たちが外れた。コンディションの問題や新戦力のテストなどの事情はあるにせよ、彼らにとっても来年のロシア行きが保証されているわけでないことは、ハリル監督が常々強調している。

 今回の招集メンバーの中で最多の97キャップを持つDF長友佑都(インテル)は、約10年間と長期にわたって代表チームを支えてきた同世代の選手たちの落選について「今回は(本田)圭佑やオカ(岡崎)、長谷部さんが外れて、次は自分にその番が来るんじゃないかというね」と危機感を募らせている。

ハリル監督が植え付ける競争意識

「次の代表に呼ばれるかどうか分からないという気持ちや危機感もある。その分、親善試合だとか移動がどうとか、コンディションがというより、このユニフォームで日の丸を付けてピッチに立てる、呼んでもらえるというのがどれだけ名誉で自分の誇りなのかと、その重みを感じるところがあります」

 2008年5月の代表デビューから代表チームを支えてきている長友にさえ緊迫感が生まれている。当然、これまでの代表チームにも競争は存在したが、同世代の盟友がメンバー外となり、ハリル監督の植え付ける競争意識が言葉だけでのものでないことを実感しているという。だが、長友自身はそれがハリルジャパンの強みにもなり得ると強調した。

「最終的に個々のレベルがアップしないといけないんですけど、監督も新しい選手を呼んで、刺激を与えて、チャンスを与えてという感じで、今まで代表にいた選手もみんな危機感を持っていますよね。みんな活躍して自信を持っているけど、ギラギラしているものが自分自身も含めて出てきている。これが良い方向に進むんじゃないかという期待は持っています」

 また、攻撃陣ではそうした選手たちの中で今回のメンバーに名を連ねた87キャップを持つMF香川真司(ドルトムント)も、その競争の渦中にあることを自覚している。8月31日に本大会出場を決めたアジア最終予選のオーストラリア戦では、負傷明けのなかで招集された影響もあったのか、ベンチスタートで出場のないまま試合を終え、次のサウジアラビア戦を前に代表から離脱した。しかし、香川自身は「温存と捉える気持ちは全くない。ただ、試合に出られなかっただけ。そこでチームが結果を残した危機感がある」と自身を特別視していない。

競争が代表チームに新たな風を吹き込む

 攻撃陣の中では頭一つ抜けた代表の経験を持つ香川だが、「何かしらの形で結果を必ず残したい。それにプラスアルファ、サッカーでは僕たちがボールを支配するなかでの課題が明確に出ているので、それにどうトライするのかを重視してやっていきたい」と、自身のサバイバルのための結果も必要であるという思いを滲ませる。

 本大会まで残り8カ月と迫るなかで生まれている競争は、日本代表という集団のなかに新たな風を吹き込んでいる。その効果はどのようにピッチ上に表れ、どのようにチームを向上させるのか。この10月シリーズは、長友や香川にとってもサバイバルのゴングがより強く鳴り響く瞬間と言えるのかもしれない。

【了】

轡田哲朗●文 text by Tetsuro Kutsuwada

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images