なぜカタルーニャ州では、「クレヨンしんちゃん」が独立のアイコンなのか?

写真拡大

社会的関心を寄せているカタルーニャ州の独立問題。

今月1日(日)、独立の是非を問う住民投票が実施されたものの、スペイン中央政府は警察を動員する大規模な阻止行動を行い、800人近い負傷者が出た。

住民投票の結果は90%以上が独立に賛成し圧勝を収めたものの、スペイン政府はこの投票を認めておらず、今後の動向が注目されている。

ラ・リーガのバルセロナ対ラス・パルマス戦が無観客試合になるなど、サッカー界にも波及した今回の問題。実は、カタルーニャの独立には「クレヨンしんちゃん」が関係しているのをご存知だろうか?

今回は、2014年に配信した「どうなるカタルーニャ州の独立…鍵を握るのは『FCバルセロナ』と『クレヨンしんちゃん』?」というコラムの中から、それに該当する内容をもう一度ここでご紹介する。

※元記事は2014年11月4日に配信されたもの

そして、カタルーニャ州の独立には意外にも日本のアニメキャラクターが関係している。

それが『クレヨンしんちゃん』である。

「クレヨンしんちゃん」は、故・臼井儀人さん原作の大人気漫画。

わんぱくかついたずら好きの少年「野原しんのすけ」の日常を描いたコメディ作品で、TVアニメや映画などを中心に展開されている。野原みさえの「グリグリ攻撃」やアクション仮面の「アクションビーム」など、懐かしく思う人も多いはずだ。

実はこの「クレヨンしんちゃん」、スペインでも“超”がつくほどの人気作品なのだ。

特にカタルーニャ州では“輸入”が早く、地元テレビ局『TV3』は2001年から放送を開始。スペイン語の他、カタルーニャ語、バスク語、ガリシア語と4ヶ国語で放送された。

そのため、エル・クラシコを上回る60%ほどの視聴率を獲得したという伝説すらある。

カタルーニャ州でも大人気のそんな「しんちゃん」だが、独立の意思を表すマスコット的な存在になっているらしい。

こちらは、カタルーニャ州の独立を主張する(と思われる)人物が投稿した写真である。

「しんちゃん」がカタルーニャ州の州旗を掲げた写真が写っているが、実はこれ、この人物のTwitterのプロフィール写真である。

このように、カタルーニャ州では「しんちゃん」にカタルーニャ州旗を持たせた写真が他にも確認されている。「独立の象徴」と言ってしまうとやや大袈裟だが、独立の意思を表すアイコンやマスコットのようなものだろうか。

「クレヨンしんちゃん」がカタルーニャの人々にここまで受け入れられているのには、歴史的背景が大きく関係している。

フランシスコ・フランコの独裁政権時代、カタルーニャを中心とした区画は地方言語の使用が制限されるなど、弾圧を受けてきた過去を持つ。エル・クラシコが激しさを伴うのは、こうした事情があるためだ。

そうしたなかで地方のテレビ局は自社で番組を制作するパワーに乏しく、日本が制作したアニメーションを購入して放送していた。

カタルーニャでは地方語である“カタラン”に吹き替えられて放送されたのだが、これがカタルーニャ市民の地域ナショナリズムを刺激し、現地語へ回帰するムードを沸き立てたのだという。

カタルーニャの人々にとって、「クレヨンしんちゃん」はそうした感覚を思い出させた起爆剤となったのだ。

余談だが、「しんちゃん」とカターニャ州旗(セニェーラ)はその色合いも似ている。偶然にしてはできすぎである。

原作者である故・臼井儀人さんはスペインを訪れた際、自らの作品が予想以上に愛されていることにひどく感激したそうだ。

そして今、その人気は別のムーブメントへと発火し、独立を目指す一つのメッセージとして掲げられているのだ。