フェイスブック ジャパンのオフィスには、さまざまな標語が掲げられている(撮影:今 祥雄)

過去2回の記事は、人と人とのつながりの多様化や進化など、「生活者同士のコミュニケーション」がどのように変わるかという視点でお話をしてきましたが、今回は「生活者と企業のコミュニケーション」についてご説明します。

前回お話ししたとおり、現代は圧倒的にモバイル全盛の時代。スマホを使用する時間は、1日のメディア接触時間の中で4分の1に迫る勢いで、10年前に比べて8倍にもなっています。また、 Facebook月間利用者の実に9割以上がモバイルからのアクセスになっています。

この変化に合わせて、モバイル時代のマーケティングのあり方は大きな進化を遂げています。

親指を止めるクリエイティブ

スマートフォン上は、情報に溢れています。大切な友達の投稿、ニュース、そしてフォローしているグループの情報などなど……そしてその情報がスピード感を持って流れていく中、モバイルマーケティングで重要なのは「親指を止めるクリエイティブ」です。

親指を止めるクリエイティブとはどのようなものを指すのでしょうか?Facebookでは2つの要素が大切だと考えています。それは、1. 動画コンテンツをモバイルに最適化することと、2. 各利用者にとって関連度の高いコンテンツであることです。

「動画コンテンツをモバイルに最適化する」とは、どういうことでしょうか。ポイントは3つあります。第1に、冒頭にインパクトを持たせ、結論を先に持ってくることが重要です。モバイル動画広告はスキップされやすいことが課題として挙げられますが、一方で3秒まで見た人のうち65%が10秒以上見続けるという調査結果があり、冒頭のインパクトはTVCMにも増して重要になります。

第2に、利用者は移動時間やすき間時間にコンテンツをミュートでみることがほとんどであることから、無音でもわかりやすく、メッセージを字幕で表現することも大切です。

視聴シーンに合わせて動画を作成

第3に、コンテンツの縦横比率がテレビやPCと変わることに考慮してクリエイティブを最適化することです。

代表的な事例として、トヨタ自動車のケースをご紹介しましょう。新車であるルーミーとタンクの認知拡大のため、Facebookの動画広告を若いファミリーを中心とした18〜39歳の男女にターゲットを絞ってキャンペーンを展開しました。

パフォーマンスを比較検証するために、テレビCMの素材をそのまま使用したクリエイティブと、モバイル用に最適化したクリエイティブを同時に配信。モバイル向けの動画は、特長である室内空間の広さをコミカルなエピソードで伝える動画広告を活用し、スマートフォンでの視聴を意識して縦横比を正方形にしたうえで、音声なしでも内容がわかるように工夫しました。

結果は、リーチ、動画再生率、ブランド指標のすべてにおいてモバイル向け動画のほうがより良い結果が出ました。スマートフォンでの画面占有率が高く目に止まりやすいこともあってか、再生率はテレビCM動画の2倍になり、広告認知率も3.5倍になりました 。また、Facebookでは利用者からの反応が良い広告ほど配信されやすくなるため、同予算にもかかわらずリーチは1.5倍にも達し、自動車広告ではリーチしづらい女性層にもしっかり届けることができました。

次に、2.の「各利用者にとって関連度の高いコンテンツ」についてご説明をします。

Facebookは実名登録制であることから、名前はもちろん、性別・住所(地域)・年代などの情報があります。人ベースで広告を運用できるので精度は95%以上を超え、これは一般的なデジタルサイトでの広告に比べて1.5倍になります。このFacebookの長所を活かした動画広告の画期的な事例の1つが、日産自動車による新型セレナのFacebookキャンペーンです。

新車のキャンペーンでは、テレビCMを数本制作して大々的に露出し、ディーラーでの試乗へと促す流れが一般的です。しかしこのキャンペーンでは、新型セレナのさまざまな装備の魅力(USP:ユニーク・セリング・プロポジション)を伝えるFacebook用のクリエイティブを、利用者別になんと1700種類以上も制作しました。

前述のとおり、Facebook広告は利用者の属性に合わせた高いターゲティング精度を誇ります。キャンプやサーフィン、スポーツをするなど、興味・関心でユーザーを細分化し、1700種類の中から最適な動画を配信することで「この装備なら自分向きだ」「自分の趣味にピッタリ」といった、よりピンポイントな“自分ゴト化”を目指しました。

私の例をお話しすると、サーフィンが趣味なことから、サーフボードを車に運びこんでいる様子を伝えるクリエイティブが表示されました。キャンペーンの結果として、広告認知は25ポイント、USP認知は17ポイントも上昇しました。

会社の規模にかかわらずマーケティングできる時代

ここまでお話ししたのは、日本を代表する大企業の例ですが、もう1つ特筆すべき変化として注目しているのが、企業規模の大小にかかわらず、マーケティングがとても身近になったということです。少し前までマーケティングといえば、資金・人材が豊富な大企業ですること、そしてそれをリードする組織というイメージが強かったと思います。

しかし、今ではFacebookやInstagramといったプラットフォームを利用することで

• 自社のサービスや商圏に合致するターゲットの潜在層に、

• 少額から、効果を見つつ、

• スマホで簡単に、

マーケティングができます。

最新の事例をご紹介しましょう。石川県のGrantBOSSグループです。
パーソナルトレーニングスタジオを運営されているGrantBOSSは、現在、訪問型トレーニングとスタジオ合わせて5店舗を経営。そのすべてでFacebook広告を利用されています。

目的は、新規会員獲得とブランドイメージの醸成で、広告運用としては、トレーニングの雰囲気を伝える写真・動画投稿を店舗ごとに違うターゲット向けに配信。結果として、この1年で顧客数が50%アップし、集客の60%以上がFacebook経由という声をいただいています。

詳しくは連載の最終回で触れますが、7月25日、長崎県の壱岐島で中小企業や個人事業主を支援する「Iki-Biz(壱岐しごとサポートセンター)」の方々と、ディスカッションをさせていただきました。

意見交換を通じて、私たちのプラットフォームを使うことで島のビジネスを島内外に効果的に発信できる可能性が十分にあると感じることができ、地域発のマーケティングも変わりつつあると実感しています。


壱岐での講演会の様子(写真:フェイスブック ジャパン)

誰にでも挑戦可能なグローバルへのマーケティング

グローバルへのマーケティングも、以前に比べて驚くほどハードルが下がっています。10年ほど前、私はP&Gでマーケティングを担当していました。当時、海外でマーケティング活動をするには、まずその国まで出向き、商習慣を学んだ上で各所に交渉をして、メディアの広告枠を買い、その国でクリエーティブチームを編成し、ようやく情報発信できるという状況でした。

それが、今では全世界でFacebookは20億人、Instagramは8億人(いずれも月間アクティブ利用者数、2017年6月時点)の利用者がいます。アメリカでも、インドネシアでも、イギリスでも、パソコン1台、スマホ1台あれば、数回のクリックであっという間にかなりの規模感のマーケティングができるわけです。グローバルマーケティング、ひいてはグローバルでのビジネスのあり方自体が大きく変わってきているという興味深いトレンドだと思います。

2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会を控え、今日本にはある種の期待感がただよっています。確かに開催期間中は人が押し寄せるでしょうが、その日数はオリンピック、パラリンピックを合わせて30日程度です。むしろ、日本への興味・関心が高まっている今、オリンピックがはじまる前までに、日本の文化、観光地、食、サービス、ブランド、企業のファンを増やすべきだと私は考えています。オリンピック後も継続的に日本にかかわってくれるファンをどのくらい増やせるかが、2020年以降の日本経済を大きく左右するのではないでしょうか。

観光の好例としてはニュージーランド観光局があります。トラディショナルな広告投資をピークシーズン(夏・冬)だけ実施するというモデルから、年間を通じてFacebookを活用し、自国の四季の美しさを世界中に動画でアピールすることで、観光客を獲得することに成功しています。日本も全国各地に魅力的な観光資源があります。Facebookはターゲティング精度の高さが特長の1つですから、世界20億人のユーザーの中から、その観光地ならではの魅力に興味を持ちそうな人に絞ってアプローチすることもできるわけです。

次回は「働き方改革」が課題となっている今にふさわしい話題を紹介します。オープンでイノベーティブなFacebookらしい働き方とは何かについて、オフィスの動画も交えながらお話ししたいと思います。Facebookの働き方が凝縮され、今年5月にも日本で本格的に展開を開始した、企業用の社内コミュニケーション向けFacebookといえる「Workplace(ワークプレイス)」について詳述します。