3人そろってのインターネットテレビ初出演に注目が集まっています(C)AbemaTV

「大企業から40代の社員が独立して、新たな会社を立ち上げた」と言えば、ビジネスパーソンにもわかりやすいのではないでしょうか。昨年末で解散したSMAPの稲垣吾郎さん、草なぎ剛さん、香取慎吾さんが、ジャニーズ事務所を退所してからの急展開で話題を集めています。

なかでも驚かされたのは、11月2日(木)21時から「稲垣・草なぎ・香取3人でインターネットはじめます『72時間ホンネテレビ』」(AbemaTV)が放送されること。「3日間ぶっ通しで生放送するの?」「『ホンネ』ってどこまで話すのだろう」「出演者を公開募集なんて斬新!」などと気になる点が目白押しなのです。

3人そろっての出演はおそらく独立後初めてになるうえに、インターネットテレビ初出演。そこでいきなり72時間というAbemaTV最長の放送を行うのは、どんな意味があるのでしょうか。単なる特番ということではなく、ビジネス的に興味深い意味を含んでいるのです。

「ホンネをさらけだす」にうそ偽りなし

何しろ「ホンネテレビ」というネーミングからして刺激的。ここに「テレビではできないこと、前事務所ではできなかったことをやろう」という強烈な意志が表れています。

YouTubeの予告動画は、さらに強烈。「3人のホンネをすべてさらけだす3日間」「ありのままの3人と新たな歴史の一歩を共に踏み出そう」「ありのままの ありのままの笑顔に戻る3日間」というメッセージが添えられていました。

注目すべきは、番組だけでなく、放送スタートと同時に3人がSNSを解禁すること。3人そろってTwitterを始めるとともに、「インスタグラマー・香取」「ブロガー・稲垣」「YouTuber・草なぎ」が誕生するようです。

昨年1月、「SMAP×SMAP」(フジテレビ系)で行われた公開生謝罪のとき、納得のいかない表情をしていたことを覚えている人も多いのではないでしょうか。3人は解散騒動時から、耐えて、耐えて、口をつぐみ続けてきただけに、11月2日に懸ける思いは想像に難くありません。もともとSMAPのメンバーは正直で誇り高い人柄の持ち主。私自身がこれまで取材してきた経験を踏まえても、「視聴者の声にホンネで応えていく」という彼らの言葉にうそ偽りはないでしょう。

もちろん3人のことですから、誰かをおとしめるためだけの発言はしないでしょうし、「芸能界やテレビ業界にかかわる人々のことを考えた前向きな言葉を話してくれるのではないか」と期待してしまいます。

動画配信サービスからオファー殺到か


「視聴者の声にホンネで応えていく」という彼らの言葉にうそ偽りはないでしょう(C)AbemaTV

3人がネットテレビに出演し、SNSを始める最大の理由は、「芸能界の古い慣習や忖度(そんたく)から抜け出すこと」で間違いないでしょう。「新しい地図」にアップされた50秒の動画に、「逃げよう。自分を縛りつけるものから。ボーダーを超えよう。塗り替えていこう。自由と平和を愛し、武器はアイデアと愛嬌。バカにされたっていい。心をこめて、心を打つ。さあ、風通しよくいこう。私たちは、新しい地図」というメッセージを添えたことからも、そんな姿勢が読み取れます。

「ホンネテレビ」のなかでも、「芸能界とテレビ業界の慣習や忖度で、もし地上波のテレビに出られなかったとしても、僕たちはネットで発信していく」という力強いメッセージが聞けるのではないでしょうか。さらに、そんな彼らに呼応するのが、芸能界とのしがらみが少ない動画配信サービス。すでにNetflixやAmazonプライム・ビデオなどからのオファーもあるはずですし、いつオリジナルのドラマやバラエティへの出演が発表されてもおかしくありません。

動画配信サービスには、大物の俳優や芸人が相次いで出演し、明石家さんまさんが「民放よりもいい制作費で自由にできる」と発言したばかりという背景もあり、3人にとっての追い風もあります。3人の出演が起爆剤になれば、近い将来、「タレントやスタッフが、慣習や忖度などで不自由が多い民放各局から、ネットテレビや動画配信サービスに流出する」という事態が起きるでしょう。

ネットとテレビの垣根をなくしたい

少なくとも3人にはそれができるだけの実績とポテンシャルがありますし、視聴者サイドも「芸能界とテレビ業界の慣習や忖度に嫌悪感を抱いている」という人が増えています。そんな状況だけに、テレビ業界の人々は、放送前の現時点ですでに戦々恐々。「芸能事務所との付き合いもあるし、しばらく様子を見るか」なんて悠長に構えていられないようです。

実際、私のもとには「すでに3人を起用した新番組を模索している」という話も入ってきました(まだ企画を考える段階にすぎませんが)。これは「3人の活動が成功しそうだから、テレビ業界も変わらざるをえない」という変化の兆しであり、革命的なことといえるでしょう。

3人の見据える先は、「新しい地図」に書かれていたような、自由と平和に満ちた芸能界。エンタメコンテンツとしてネットとテレビの垣根はなく、両方で生き生きと活動するタレントたちの姿をイメージしているように見えるのです。もしそんな日が来たら、3人が、テレビの世界で活躍している中居正広さんや木村拓哉さんと、ネット上での共演も……。

「新しい地図」の言語が、フランス語、英語、韓国語、中国語(簡体)、中国語(繁体)から選べることからもわかるように、彼らのスタンスはボーダーレス、ダイバーシティ。海の向こうに及んでいるわけですから、「日本国内の慣習や忖度なんてスパッと突破してしまおう」ということなのでしょう。

公取委と弁護士軍団が芸能人の味方に

3人の背中を押す背景は、動画配信サービスの台頭や、芸能界の慣習や忖度に対する視聴者の嫌悪感だけではありません。

近年、頻発する芸能人の契約トラブルを受けて公正取引委員会が今年8月と9月に、芸能人やスポーツ選手などの働き方を見直す「人材と競争政策に関する検討会」を行いました。芸能人でいえば、「芸能事務所との契約で独占禁止法に抵触するものなど不公正なものはないか」をチェックするものです。

今のところ芸能事務所や、契約書の内容に調査が及んだという事実はないようですが、いつそれが実行され、是正勧告などを受けても不思議ではないでしょう。つまり、「3人の活動を妨害しにくい状況になりつつある」ということです。

また、今年6月に弁護士らが「日本エンターテイナーライツ協会」を発足。同協会の活動内容は、「芸能人らの権利を守る」「芸能人らのセカンドキャリア形成を支援する」「芸能人らの地位を向上させる」の3つであり、心強いサポートを受けられることになります。たとえば先月、武井咲さんの「結婚・妊娠で違約金10億円」という報道がありましたが、同協会はすぐに「到底考えられない」「事実に即した報道を」などの声明を出してサポートしました。

芸能界もテレビ業界も、ファンあっての業界だけに、これらの動きと、それを注視する一般層の声を無視できません。共に近年イメージダウンが大きい業界だけに、手遅れになる前にその流れを止めるべく、古き慣習や忖度を減らしていくのではないでしょうか。

「スマステ」が早くも復活か?

話を「ホンネテレビ」に戻すと、すでに市川海老蔵さんと堀江貴文さんのゲスト出演が決定したようですが、まだ「自由な立場のタレントが手を挙げている」というだけの段階。最終的には、大手芸能事務所のタレントが出演する可能性も十分ありうるでしょう。

すでに「さすがに中居(正広)くんは難しいでしょ」「いや、森(且行)くんならあるかも」「海外の大物アーティストが出演?」なんて声が飛び交うなど、当日まで盛り上がりそうです。

ちなみにAbemaTVは、サイバーエージェント(出資比率60%)とテレビ朝日(同40%)の共同事業。それだけに、「9月30日まで『SmaSTATION!!』で香取さんと共演していた同局の大下容子アナも出演するのでは」という期待もふくらみます。もしかしたら同番組が放送されていた11月4日(土)23時5分から類似企画を放送するのではないか……と。

「ホンネテレビ」放送スタートの11月2日(木)21時は、祝日前夜。3日は祝日で、4〜5日は土日の3連休だけに、72時間ずっとネット上は大騒ぎになるでしょう。

AbemaTVの視聴数が過去最多を記録するほか、ツイッターのランキングも番組と3人に関するものが独占。そのときテレビの視聴率は……比較されることは避けられません。さらに言えば、11月3日(祝)21時には「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」(TBS系)とのバッティングがあり、3人がどんな反応をするのか、注目必至です。

いずれにしても、心がクリアになった3人による新たなエンタメコンテンツが見られるのは間違いありません。つらい時期を乗り越えた分、爆発力は大きいでしょうし、今から1カ月後の放送が楽しみです。

「新しい地図」で活動資金を得た

最後に、経済的な観点の話を1つ。「新しい地図」の会員数が、開始からわずか3日間で約10万人を突破したと聞きました。入会金1000円+年会費4500円ですから、単純計算で3人は5億5000万円もの売り上げ=活動資金を得たことになります。

まだ何も活動していないのに5億5000万円もの投資を得るのは異例中の異例。特に芸能界は、「赤字からスタートして、徐々にファンからの投資を積み上げていく」という形がセオリーだけに、「彼らの功績と期待値がいかに大きいか」ということが浮き彫りになりました。

ところで、3人はこの活動資金をどう使っていくのでしょうか。

キーワードになるのは、「新しい地図」のメッセージにあった「武器はアイデアと愛嬌」というフレーズ。スケールの大きい彼らのことですから、先行投資をしたコアなファンにはもちろん、一般層のライトなファンにも、イベント、歌、ドラマなどで還元してくれるでしょう。

その経済効果は、どれくらいのものになるのか。日本の芸能史上初めてのことであり、海外での展開も読めないだけに、まったく予想がつきません。「視聴者の質問に応える」というのが番組のコンセプトなので、とりあえず「ホンネテレビ」の放送中に、「今回のギャラはいくらですか?」という質問をぶつけてみようと思っています。