ハロウィンの装飾で賑わいをみせるドン・キホーテ中目黒本店。前回のテレビ発売時にはテレビを目当てに来店する客も増えたという(記者撮影)

「驚安の殿堂」で瞬間蒸発し、話題をかっさらった4Kテレビが帰ってきた。全国でディスカウントストアを展開するドン・キホーテ(以下ドンキ)は2017年6月15日に同社初となる4K対応50型液晶テレビを発売し、瞬く間に4400台が完売となった。

初回導入数の3000台が完売し、商品の再販を求めるお客からの声に応えて1400台を追加導入したものの、こちらもすぐに完売。生産終了となったドンキの大ヒット商品だ。

その後継モデルが5万4800円(税別)という価格を据え置き、10月3日から全国で順次発売となった。今回は、具体的な生産台数を明らかにしていないが「前のモデルより大幅に生産台数を増やして販売する」(ドンキ)としている。

第2弾は何が変わったのか?

前回の機種からの変更点は、画面の明るさが300カンデラ毎平方メートル(輝度の単位)から350カンデラ毎平方メートルに向上したことだ。この数字が大きいほど画面が明るくなる。10万円台以上の他社が販売する4K液晶テレビと比較すると輝度は低いが、リビングで見るには十分な明るさだという。


前回は4400台が瞬間蒸発。3カ月という短さで後継機種が販売になった(記者撮影)

「前回の機種では、購入者から画面が暗いので明るくしてほしいという要望があった。輝度を高めたことが大きな改善点」と開発を担当したトレンドセレクトMD開発本部・マネージャーの寺尾尚之氏は説明する。

前回の4K液晶テレビが完売に至った要因は、東芝製のメインボード(電子回路基板)を搭載していた点と、5万4800円(税別)という圧倒的な安さだ。4K液晶テレビの価格は新機種が発売されるたびにじりじりと下がっているが、他社製4Kテレビは同じ50型の場合、10万円前後の価格帯であり、ドンキが圧倒的に安い。

「6月に発売したときに、他社が追随して値下げ攻勢をかけてくると想定していたが、どこも仕掛けてこなかった。5万円台という価格帯はいまだに圧倒的な強さだ」(寺尾氏)

前回の大ヒットを受け、開発を担当した寺尾氏とSPA開発本部・サブマネージャーの水橋晃司氏の2人は、すぐに後継モデルの調達に走ったという。商品が圧倒的に足りず、店頭で機会ロスが発生しているという認識があったためだ。今回、メインボードのメーカーは非公表だが、大きな仕様変更はしていないようだ。調達の素早さから考えると、前回と同じく「レグザ」を展開する東芝映像ソリューション製とみられる。


第2弾の4K液晶テレビを担当した水橋氏(左)と寺尾氏。寺尾氏は次のテレビ開発では60型や65型などさらに大型の液晶テレビを開発してみたいと意気込む(記者撮影)

もちろん、本家とは異なり、ドンキのテレビが機能を絞っていることは事実だ。

他社製品が導入するHDR(ハイ・ダイナミック・レンジの略で明るいところをより明るく鮮明に表示する機能)が非対応であったりする。今回も、5万円台という価格と性能のバランスを取り、「そこまで高価でなくてもよいから4Kテレビがほしい」という消費者のニーズに応える方針だ。

ドンキは現場の責任者に仕入れ権限を委譲しており、商品構成を各店が決める個店経営が特徴だ。前回の機種については、各店舗からの反応も上々だった。「普段、テレビなどの大型家電を扱わない店舗からも後継機種をぜひ扱いたいという問い合わせが相次いでいる」(寺尾氏)。今回のモデルについては、具体的にどの店舗に何台導入されるかは未定で、予約販売も実施しない見込みだ。

「ドンキの家電」の注目度がアップ

テレビ目当ての客が店を訪れることで、既存店の活性化にもつながっている。6月以降、ドンキの家電事業の売り上げも伸びているのだ。テレビだけでなく「ドンキの家電」に対する認知度が高まっているといえる。

「8月に発売したアクションカメラ(税別4980円、防水対応のフルHDカメラ)もヒット商品となった。ドンキのプライベートブランド(PB)は最安値で展開しており、圧倒的な強みがある。商品数を増やし、ドンキにしかできない付加価値をさらに高めていきたい」と水橋氏は話す。

家電製品などに代表されるPBは粗利益率が高く、ドンキにとって欠かせない利益成長のドライバーだ。2017年6月期はPBの売り上げが828億円で全体の11%だった。これを2020年までに15%に高め、SPA(製造小売業)としての体制を強化する。売上高も2020年に1兆円(2017年6月期で8288億円)という目標を掲げているため、PBは1500億円規模に成長させる計画だ。

8月の決算会見で、大原孝治社長兼CEOは4KテレビのようなPB商品が成長していることを取り上げ、「消費者のニーズはあるが、メーカーが作れないものをPBで作っていく」と語っていた。瞬間蒸発したテレビの後継機種をすぐさま販売したドンキ。テレビ以外でも多くのヒット商品を生み出していくのか。拡大を続けるPBから目が離せない。