ドトール北心斎橋店(「Wikipedia」より)

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 コメダ珈琲店、タリーズコーヒー、そしてスターバックス コーヒー……。並みいるライバルがひしめくカフェチェーン業界において、ここ数年で頭ひとつ抜け出した感があるのがドトールコーヒーだ。

 その勢いは、ついに顧客満足度でスタバを上回るまでになっている。利用者の心をつかむドトールの居心地の良さには、どんな秘密があるのだろうか。経営コンサルタントの請川崇之氏に話を聞いた。

●スタバと対照的な“心理的ハードル”の低さ

 日本生産性本部 サービス産業生産性協議会が今年6月に発表した2017年度の「JCSI(日本版顧客満足度指数)」によると、カフェ部門の「顧客満足」で1位に輝いたのは3年連続でドトールだった。

 スタバは「顧客期待」「知覚品質」「推奨意向」の3指標で首位だったものの、「顧客満足」ではトップ4にも入っていない。なぜ、ドトールの顧客満足度がこれほど高いのか。その理由について、請川氏は「ドトールが使い勝手の良い、都合の良いお店だから」と指摘する。

「特別おしゃれでもなく、気取った感じもしないドトールは、来る者を拒まない雰囲気があります。もちろん、これはドトールの戦略です。お店の外観のことを『ファサード』といいますが、ドトールのファサードは、一見さんでも入りやすいようにうまく工夫されているのです」(請川氏)

 対照的に、スタバのファサードは“おしゃれさ”を前面に押し出したつくりとなっている。さらに、入り口の広さ、店内の照明、ガラス張りの外観など、細部に至るまで計算してつくり込まれているため、いかにも“おしゃれな人御用達”といったイメージがある。

 一方、ドトールにはこうした心理的ハードルがまったくない。

「上司や同僚との打ち合わせ、約束までに少し空いた時間をつぶしたいときなど、『座ってコーヒーを飲みたいが、高いカフェに行くほどではない』というシチュエーションで、ベターなのがドトールです」(同)

 ドトールは、コーヒーが安い上にサンドイッチなどのフードも充実しているため、カフェとしてのコストパフォーマンスが非常に高い。

「もちろん、ほかのカフェチェーンという選択肢もありますが、単純に店舗数が多いので、必然的にドトールを選ぶ確率が上がるわけです」(同)

 2017年8月末現在、ドトールの店舗数は全国で1126と、国内一の規模を誇るスタバの1288(同年6月末現在)に迫る勢いだ。これだけ店舗数を拡大することができるのは、「ドトールの出店物件条件がそれほど厳しくないからでは」と請川氏は分析する。

「ドトールの各店舗を見ると、カウンターと客席が外階段でつながっていたり、狭いビルに店舗が入っていたりすることがあります。立地条件を低くすれば、店舗数を増やしやすくなり、結果的に顧客増加へとつながるのです」(同)

●喫煙者に優しく“ネオ酒場”にも通じる気軽さ

 そしてもうひとつ、ドトールの成長ぶりには「飲食業界全体のトレンドも関係している」と請川氏は言う。

「確かに、おしゃれさを売りにした“インスタ映え”する店にもニーズがありますが、毎日そういう店では客側も疲れてしまう。肩肘を張らなくていい気軽に入れるお店が、最近の飲食業界のトレンドとなっているのです」(同)

 そのわかりやすい例が「ネオ酒場」だ。一昔前の居酒屋といえば、店先にのれんと赤ちょうちんがぶら下がり、外からは店内の様子が見えず、「常連客のたまり場」というイメージだった。

 しかし、近年若者や女性客の支持を集めるネオ酒場は、明るく清潔感のある外観と内装が特徴だ。それでいて、メニューは焼き鳥など従来の居酒屋と変わりがなく、価格帯もリーズナブルな設定になっている。

「そうした気軽さとコスパの良さを魅力的に感じたお客が、仕事帰りに1杯だけ飲んでサッと帰る“ちょい飲み”のために、ネオ酒場に足を運ぶわけです。ドトールも同じ。手頃な価格のコーヒーをサッと飲んで帰るのにピッタリの店なんです」(同)

 また、ほかの飲食店が全面禁煙化を進めるなかで、ドトールは基本的に分煙を貫いている。一部で完全禁煙店もあるが、この「喫煙者に優しい」という点もドトールの特徴だという。

「しかも、ドトールは喫煙スペースにも十分な広さを設けています。喫煙者ならわかると思いますが、最近の飲食店は喫煙スペースの椅子やテーブルを禁煙スペースのものよりワンランク落としている場合が多いんです。椅子にお金をかけなくても、たばこが吸えれば喫煙者が来るということを店側も知っているからです」(同)

 そんな風潮のなかで、喫煙者にとっても居心地の良い空間をつくっているドトールは「珍しい存在といえるでしょう」と請川氏は言う。

 請川氏は、「ドトールの勢いは、今後しばらくは続くだろう」と予測する。気軽さ、手軽さ、居心地の良さで利用者の支持を集めるドトール。顧客満足度のみならず、ほかの指標でもスタバを超える日はそう遠くないのかもしれない。
(文=中村未来/清談社)