宇宙開発に携わる才女たちの知られざる物語から、ちゃっかり学びたいステップアップ術!? 『ドリーム』【さぼうる☆シネマ】

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「風味、味わい」のような意味を持つ"savuer"をちょっと和風に発音しての、さぼうる。雑食系映画紹介人、松本典子がオススメ映画をお届けします。連載7回目は『ドリーム』を。NASAの宇宙計画を支えた知らざれるアフリカ系アメリカ人の女性たちが障壁にどう立ち向かったのか興味深すぎ。あ、ファレル・ウィリアムスによるポップなチューンで踊り出したくもなります!
賢いリケジョのお話? と他人ごとにしちゃもったいない宇宙開発の裏話を楽しみつつ、自分の道を切り開く術を学ぼう!
今年2月のアカデミー賞では作品賞ほか3部門でノミネートされた話題作であり、本国では『ラ・ラ・ランド』以上にヒットした話題作がこの『ドリーム』。1960年代のNASAで、人種差別と女性差別のダブルパンチにも決してめげることなく道を切り開いた3人の女性の姿を描いた実話ベースの作品です。で、なぜ本作をぜひ観ていただきたいかと申しますと、エンタテインメントとして面白いっていうのはもちろん、彼女たちが見せる"自分の道の切り開きっぷり"には、現代を生きる我々にも学ぶところが実に多いからなのですよ。

数学的才能でエリートの白人男性たちを軽く凌駕していたキャサリン・ジョンソン(タラジ・P・ヘンソン)。現在、NASAには"Katherin G. Johnson Computatuonal Research Facility"という彼女を名を冠した施設もあるほどその貢献度は絶大。ⓒ2016Twentieth Century Fox

幼い頃から数学の天才っぷりを発揮して10歳で高校へ進学したほどのキャサリンは、NASAでコンピューター(計算する人、として使われていた言葉)として頭角をあらわします。が、白人男性ばかりのセクションで黒人女性が舐めた辛酸は相当なものでした。複雑なロケットの軌道計算をどれほど見事に成し遂げても、誰も彼女の人格を認めない。NASAほどの精鋭かつ能力至上集団であっても、人種差別や性差別が「フェアじゃない、合理的じゃない」と認識されていなかったのかと愕然となったヤワな私ですが、キャサリンや2人の同僚ドロシーとメアリーらは決してくさることがない。いや、散々くさってきたのかもしれませんよね、ここまでの人生で。飽きるほどくさり、しかし、それでは道を切り開けないってことを痛感したのかも。揺るがない何かを、面構えからも感じさせる3人ですから。
一方、黒人女性コンピューターチームのリーダー的存在でもあったドロシーは、館内に搬入されるIBMの大型コンピューター(当時、ようやく登場した機械型コンピューター)を目撃し、自分たちの計算能力は近いうちに機械に取って代わられると気づきます。そのとき彼女がどう行動したか。誰よりも早くフォートラン・プログラミングを習得しようと決意し、同僚の黒人女性たちにもこれを呼びかけたのです。戦略的に"必要な人材"になる努力によって(場合によっては的確にチームを率いながら)道を開く。激変する環境に対応して行かなければならない我々にとっても、これ、少なからず必要な姿勢ではないかと思うのです。白人女性上司(キルスティン・ダンスト、嫌われ役を地味に好演!)が最後にドロシーを何と呼んだか。しっかり見届けてくださいね。
前例になることの意義、前例になることを恐れない勇気 メアリーの説得に心揺さぶられずにはいられない

花形宇宙飛行士ジョン・グレンに臆することなく握手する才色兼備、メアリー(ジャネール・モネイ)。センスのいいコスチュームも見どころ。ⓒ2016Twentieth Century Fox

そして3人目。後にNASAでは黒人女性初のエンジニアとなったメアリーは、鼻っ柱が強い系才色兼備。個人的には最も惹かれた登場人物です。(人種差別を能力で克服したユダヤ人研究者に)能力を見込まれた彼女は、計算専門のコンピューターチームから技術部へ転属。しかし、エンジニアに昇進するためには、白人のみが入学を許される学校で単位を取らねばならないという壁にぶつかります。