攻撃の形を作れず、シュートまで持ち込む場面も少なかった前半の45分間。ボールを保持して回す際の選択肢が近場ばかりになってしまった。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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 仙台の渡邉晋監督による現役指揮官コラム「日晋月歩」の第27回。テーマは「対応力」だ。C大阪をアウェーで倒し、中位進出を目指すべくホームに迎えたのは、前回対戦で大敗を喫してしまった浦和だった。
 
 事前準備がなかなかハマらないなかで、選手たちは成長の跡をしっかりと披露する。勝点を逃す悔しい一戦だったが、渡邉監督が「手応えを掴んだ」と口にできる理由は? ゲームを振り返りながら語ってもらった。
 
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[J1リーグ28節]仙台 2-3 浦和/10月1日(日)/ユアスタ
 
 悔しい。勝てたし、勝ちたかったし、勝たなければいけない相手とタイミングだっただけに、今回の敗戦ではその想いがより強い。26節のFC東京戦(0-1)もそうだが、ここぞというゲームで勝ち切れないと中位以上へ上がっていくのは難しくなってしまう。
 
 確かにFC東京戦は相手に指揮官交代もあって我々にとっては戦いにくいタイミングではあったが、その前節に鳥栖にホームで勝って、グッと中位に近付きながらも勝点を逃した。今回はアウェーでC大阪を倒して勢いをつけながら、浦和に勝てなかった。
 
 ただ、ダメなことばかりでもない。ルヴァンカップの準決勝、川崎との2試合が控えるなかでの準備だったが、先々のことを考えずに浦和戦のみに全員が集中してくれていた。ゲームに向かうテンションやパワーは目の前の90分間だけを見据えていたし、途中出場の選手も含めて良い準備をして臨んでくれた実感はある。
 
 負傷者が再び増えてきたなか、「総力戦で」と口で言うのは簡単だ。本当に全員が心身ともに良い状態でスタンバイしているのは実は難しく、ましてやシーズンも終盤に差し掛かれば言わずもがな。それでも気持ちを切らさずにいてくれて、まさに“タフなチーム”になってきた手応えを感じられた。
 
 少し試合内容を振り返ってみると、前半はかなり苦労した。攻撃の形を作れず、シュートまで持ち込む場面も少なく(公式記録では4本)、理想とした展開ではなかった。しかも、我々がボールを保持して回す際の選択肢が近場ばかりになってしまった。
 
 それがFKから失点する流れにつながっただろうし、先制点を与えてゲーム運びが困難なものとなった一因だ。もちろん近くでパスコースを探して前を向けるシーンもあったが、相手にとって最終ラインの裏を狙われるのが一番怖いのは明白だ。
 
 そこにボールを通せれば、DFはケアせざるを得ず、少なからず間延びする。すると新たに攻撃のバリエーションやパスコースが増える。相手のプレッシャーの掛かり具合を見て、プレーを選択するという部分では拙さがあった。
 守備面で言えば、実は一週間のトレーニングで用意してきたものとの相違があった。浦和のメンバーの組み合わせが予想と違っており、「こちらがプレッシャーを掛けたい場所がズレた」のが正直な話だ。
 
 もちろん、ハマらなかった場合の次善策は選手たちに授けてある。基本的な策が3つあるとして、それはトレーニングで落とし込んでおく。このゲームで素晴らしいと感じたのは、4つ目の策へと選手たちが自ら判断して移行したことだ。
 
「こっちのサイドでハメられる」、「ここまで運ばれたらラインを下げよう」といった修正を選手たちの肌感覚で施していた。この対応力は一朝一夕では身に付かない。積み重ねることで引き出しが増加するのだ。
 
 事前の準備と違ったという経験は、実は似たことが鳥栖戦の時にあった。その際には権田(修一)君の治療時間に選手たちを集めてマグネットを使って説明ができた。「準備したきたことでこういう風にやりたかったが、ハマらないから変えるぞ」と。