高血圧の診断基準とは|高血圧で起こる病気のリスク

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健康診断や病院などで「高血圧」と診断されたものの、目立った自覚症状がほとんどないため、そのままにしている人がいるかもしれません。高血圧が続くとさまざまな病気のリスクが生じます。より重い病気に進行させないためにも、高血圧の原因や予防方法を知って、食事や生活習慣を見直しましょう。

目次

高血圧とは高血圧で起こる病気のリスク高血圧の原因高血圧の予防と改善方法高血圧とストレス

「高血圧」とは

高血圧についてよく理解するために、まずは、血圧の仕組みを知っておきましょう。その上で、どういう条件を満たすと高血圧になるのかもご紹介します。

血圧とは?

血圧とは、心臓が血液を全身に送り出す際に、血管の壁を押す力のことを指します。
 
心臓がぎゅっと縮んで動脈から血液が勢いよく流れるときの血圧を「収縮期血圧(最大血圧または最高血圧)」といいます。逆に心臓が膨らんで血圧が低くなったときの最も低い値を「拡張期血圧(最小血圧または最低血圧)」といいます。収縮期血圧は「上の血圧」、拡張期血圧は「下の血圧」と呼ばれることもあります。
 
血圧は「120/80」のように上下の値の組み合わせで示されます。単位は「mmHg(ミリメーターエイチジー)」、あるいは「ミリメートル水銀柱」といいます。血圧が120mmHgのとき、血管には水銀を12cm押すほどの圧力がかかっている状態です。水銀は水と比べて約13.6倍の重さがあるので、水でいえばおよそ1m36cm押し上げられる力が血管にかかっていることになります。

高血圧とは?

血圧を変化させるのは、心臓から送り出される血液量と血管の硬さです。心臓から送り出される血液の量が増えると、多くの血液が血管を流れることになるので、血圧は上がります。また、血管が硬くなると、血液を流そうとする圧力が強くなり、血圧が上がります。
 
血圧は活動状況により1日の間で変動しており、通常は一時的に血圧が高くなっても正常な値に戻ります。しかし、この自然な変動に関係なく、血圧がずっと高いままになることを「高血圧」といいます。

高血圧の診断基準とは?

日本高血圧学会の診断基準で高血圧と診断されるのは「140/90」以上の場合です。血圧は前述の通り1日の間で変動しますので、2回以上の測定の結果から判断されます。この血圧の値に加えて、喫煙、脂質異常症(血液中のコレステロールや中性脂肪などの脂質が一定の基準よりも多い状態)、糖尿病、肥満、慢性腎臓病、年齢(65歳以上)、心臓や脳などの病気の状態によって必要な治療が診断されます。

高血圧で起こる病気のリスク

高血圧は自覚症状が出にくいため、知らぬ間により重い病気のリスクを高めることがあります。異変に気づかぬうちに、心臓や脳、血管の病気をはじめとした死亡につながる病気のリスクを高めることから「サイレントキラー」と呼ばれています。ここでは、高血圧がどのように病気につながっていくのかを説明します。

動脈硬化

血圧が高い状態が続くと、圧力によるダメージを和らげるために血管の壁は硬く厚くなり、血管の内部が狭くなります。この状態を「動脈硬化」といいます。動脈硬化には自覚症状はほとんどありません。

動脈硬化が原因の病気

動脈硬化が進むと、狭くなった血管に血液を流すために心臓の拍動が高まります。心臓から送り出される血液の量は増えて、さらに血圧が上ります。その結果さまざまな病気が起こりやすくなります。

心筋梗塞

動脈硬化が進むと血管が硬くなったり、血管が破れやすくなったり、血のかたまり(血栓)が血液の中に流れ出したりすることがあります。この血栓が心臓に血液を送っている「冠動脈」と呼ばれるところに詰まって、心筋(心臓を構成する筋肉)に血液が流れなくなった状態を「心筋梗塞」といいます。心筋梗塞になると心臓の働きが急速に弱まり、心臓の細胞が壊死していきます。急激な胸の痛みや呼吸困難、吐き気などが生じて、危険な状態になります。緊急の治療を必要とし、治療を受けなければ1時間以内に約半数の人は亡くなるといわれています。

脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)

脳梗塞、脳出血、くも膜下出血はまとめて脳卒中と呼ばれます。血栓が脳の太い血管に詰まり、血液が流れなくなるのが「脳梗塞」です。脳の細胞に酸素や栄養が届かず、脳の細胞が壊死してしまいます。脳の血管が動脈硬化によって硬くもろくなった結果、血管が破れて出血するのが「脳出血」です。「脳動脈瘤(脳の血管にできる血管の膨らみ)」の破裂などによって血管が破れ、脳を覆う3層の髄膜のうち脳に接している「くも膜」という膜の下で出血するのが「くも膜下出血」です。脳卒中が発症すると、顔や手足の左右どちらかだけに運動や感覚の異常が急に出ます。このような異常が起こった場合は、一刻も早く専門医療機関を受診してください。

慢性腎不全

腎臓の内部は毛細血管が複雑に入り組み、血管から老廃物を取り除いています。高血圧が続いて動脈硬化が進むと、毛細血管が狭くなって血流が滞り、腎臓の機能が徐々に低下していきます。腎機能が著しく低下すると、夜間の尿量の増加、むくみ、疲労、食欲不振、息切れ、皮膚のかゆみなど腎不全の症状が出てきます。

高血圧の原因

高血圧は、本態性高血圧と二次性高血圧に分けられ、それぞれ原因が異なります。

本態性高血圧

特定の病気が原因ではなく、遺伝的要因と生活習慣の影響により起こるものです。高血圧の患者のほとんどが本態性高血圧だといわれています。

遺伝的要因

本態性高血圧は、いくつかの遺伝子の異常によりリスクが高まるといわれています。血圧のコントロールに重要な役割を果たす脳の中枢神経関連の遺伝子や、腎臓や心臓などに関わる遺伝子の異常です。
 
家族に高血圧の人がいる場合には意識的に血圧を測りましょう。例えば、両親ともに高血圧の場合には、その子どもの2人に1人が遺伝的に高血圧になりやすく、両親ともに高血圧でない場合には遺伝的に高血圧になりやすいのは10人〜20人に1人にとどまるといわれています。

生活習慣

本態性高血圧は、食事や体型、睡眠など生活習慣と大きく関わっています。以下に、高血圧の原因となる生活習慣をあげます。

食塩の過剰摂取

食塩に含まれるナトリウムは生命維持に欠かせない栄養素ですが、過剰になるとそれを薄めるために血液中の水分が増加します。血液の量が増えるため血圧が上昇します。

肥満

肥満すると全身の末梢血管が狭くなって血流が悪くなることから、心臓がより強い力で血液を送り出すために血圧が上がります。また、インスリンの分泌が増えて交感神経の緊張が高まります。これにより体内の塩分の排せつが滞ることから血液量が増え、血圧が高くなります。

アルコール

飲酒は、交感神経の緊張を高めて心拍数を上げるため、血圧が上昇します。

喫煙

タバコに含まれるニコチンは副腎を刺激して、血圧を上げるホルモンが分泌されるため血圧が高まります。

カルシウム・カリウムの不足

カルシウムが不足すると、不足分を補うために骨や歯からカルシウムが溶け出し、血液中にカルシウムが増えます。すると、血管は硬くなり、血圧が上昇します。また、カリウムは塩分の排せつを促しますが、不足すると塩分が過多になり、血圧が高くなります。

睡眠

なかなか寝つけない、十分な睡眠時間がとれないなど睡眠リズムが乱れると交感神経が活性化され、夜になっても一向に血圧が下がらないことがあります。この状態を「夜間高血圧」と呼びます。夜間高血圧は普通の高血圧よりも約6倍も心筋梗塞につながりやすいといわれています。

二次性高血圧

本態性高血圧とは異なり、腎臓や内分泌(ホルモン)をはじめとした特定の病気が引き金になって引き起こされる高血圧です。

腎臓の病気

腎臓の病気には2つのパターンがあり、それぞれ別の点から高血圧につながります。

急性・慢性糸球体腎炎(まんせいしきゅうたいじんえん)、腎盂腎炎(じんうじんえん)、糖尿病性腎症など

いずれも腎臓の障害により、身体から塩分を排せつする機能が低下する病気です。結果として血液中の塩分が過剰になり、血液中の水分が増加して血液量が増えるために血圧が上がります。

腎臓の動脈硬化、大動脈炎症候群、腎動脈の血栓症など

いずれも腎臓の動脈に血行障害が起こる病気です。腎臓の毛細血管で血行障害が起こると、レニンと呼ばれる血圧を調整するホルモンが出てきます。その結果、血液中に血管を収縮するアンジオテンシンIIというホルモンが増えて心臓の拍動を増やし、血圧を上昇させます。

内分泌(ホルモン)の病気

内分泌の病気のなかには、高血圧につながる病気があります。

原発性アルドステロン症

腎臓の横にある「副腎」と呼ばれるところの良性腫瘍や異常な増殖が原因です。副腎の表面に近い副腎皮質からアルドステロンと呼ばれるホルモンが過剰に出てくることで身体に塩分が溜まりやすくなり、血液量が増えるために血圧が上がります。

クッシング症候群

脳下垂体の腫瘍や副腎の分泌異常などのホルモン異常により、体内でコルチゾールと呼ばれるホルモンが増加します。コルチゾールはアルドステロンと同じような作用をもっているので身体に塩分が溜まりやすくなり、血圧が上昇します。

甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)

甲状腺を刺激するホルモンが増え、甲状腺ホルモンが過剰になることで起こる病気です。甲状腺ホルモンが心臓を刺激して心臓の拍動が増えることで、高血圧を引き起こします。

高血圧の予防と改善方法

本態性高血圧の予防や改善には、塩分の節制や十分な睡眠など生活習慣が大きく関わっています。二次性高血圧の場合は下記の生活習慣に加え、原因となる病気の治療を行うことで高血圧の改善が見込めます。

食事

減塩

1日の塩分摂取量は7〜10g程度が目安です。しょうゆは塩分が高いため、普通のしょうゆより食塩の含有量が50%以下に減塩されたしょうゆの利用がおすすめです。焼き魚は塩を振らずに素焼きにし、味付けもレモン汁などで味を整えるといいでしょう。

カロリー制限

肥満予防のためには、自分に適した1日のカロリーを把握しておきましょう。身長から計算した標準体重に20〜40をかけた数字が適切なカロリーです。標準体重の求め方は身長を2回かけて、さらに22をかけます。
 
例えば身長が160cmの人であれば、1.6×1.6×22=56.32なので、標準体重は56.32kgです。これに20〜40をかけます。普段からデスクワークなどエネルギーの消費量が少ない人は20をかけて、56.32×20=1126.4キロカロリーが適正なカロリー量です。日常からエネルギーの消費量が多い人は40をかけて、56.32×40=2252.8キロカロリーが適正なカロリー量となります。

アルコール制限・禁煙

成人男性のアルコール摂取量の目安は、ビール中びん1本(500ml)、日本酒1合(180ml)、ウイスキー・ブランデーダブル(60ml)、焼酎0.6合(約110ml)、ワイン4分の1本(約180ml)です。女性は男性よりも肝機能の働きが低く、アルコールを分解するためにより多くの時間を必要とするため、これよりも少なめを目安としましょう。喫煙は高血圧の原因となるため禁煙しましょう。

睡眠

睡眠リズムを改善することで、夜間の血圧上昇を防ぐことにつながります。寝つきをよくする方法は下記記事を参考にしてください。
 
寝つきが悪い原因は3つ! スムーズに寝るための17の対策

高血圧とストレス

ストレスを感じると交感神経の活動が高まり、血管が収縮して血圧が上がります。一方、リラックスした状態になると、副交感神経が優位になるので血管がひらいて血圧が下がります。下記記事を参考に、瞑想や読書など自分に合ったストレス解消法を見つけてみましょう。
 
3分ストレスチェック|タイプ別10のストレス解消法
ストレスの原因と解消法のまとめ
 
監修:坪田聡(雨晴クリニック副院長)
 
<参照>
 
福井次矢など編『今日の治療指針2017年版』,医学書院,2017
デニス・L・カスパーほか編『ハリソン内科学第5版』,福井次矢ほか監修,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2016
アーサー・C・ガイトンほか原著. 御手洗玄洋総監訳. 小川徳雄ほか監訳. ガイトン生理学原著第11版. エルゼビア・ジャパン. 2010;791.
浦部晶夫ほか編. 今日の治療薬2017. 南江堂.2017.1041.
宮崎総一郎ほか. 睡眠学II. 北大路書房.
ベンジャミン・J・サドックなど編著『カプラン臨床精神医学テキスト第3版』,井上令一監修,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2016.
家庭の医学. 主婦の友. 2010.
中村丁次編著『第3版栄養食事療法必携』医歯薬出版.2016.

photo:Getty Images

 

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