猫が突然、逝ってしまった…たくさんの後悔と最後の祈り

写真拡大

<16歳の愛犬を亡くした心理カウンセラーが考えるペットロス Vo.7>

 猫の「タリ」は、私に猫と暮らす幸せを教えてくれた「でんすけ」(2015年9月没)の四十九日の頃、どこからかやってきました。

◆亡くなった猫は、毛皮を着替えて会いに来る?

 最初に現れたのは我が家のデッキ。まるで懐かしい家に帰ってきたとでも言いたげに、中をのぞいていました。私がデッキへ出て行くと、さっと逃げますが遠くに行く気配はありません。

 昼間はデッキで日向ぼっこしたり、窓を開けておくと家の中にまで入ってきたり。

 左耳の先に避妊の記であるV字にカットが入っていることから、人と関わりを持って生きてきた猫との推測はできましたが、あまりにも我が家になじんでいました。

 大型犬である「ケフィ」を怖がる様子もまったくなく、散歩に出かけようとすると走り寄ってきて、後を付いてきたり、リードにじゃれて遊んだり。ケフィの顔に自分の顔を近づけて、匂いをかいだりします。まるで往年のでんすけとケフィのような仲良しぶりです。

「亡くなった猫は、毛皮を着替えて会いに来る」という話があります。「でんすけが毛皮を着替えて会いにきてくれたのかもしれない。いや、もしかしたら、ケフィや私を心配して、守り猫を送りこんでくれたのかもしれない」と思いました。

 だから「護符」や、「不思議な力のあるもの」という英語talisman(タリスマン)に由来する「タリ」と名付けました。お守りが「外からの邪悪なものを封じる」のに対し、護符には「身につける者の力をアップさせる」らしいので、ぴったりな感じがしました。

◆野良ちゃんに気やすく名前をつけてはいけない

 でも実は、名前を付けるまでたっぷり半年かかりました。なぜなら、「猫に気やすく名前をつけてはいけない」という教訓を知っていたからです。写真家で作家の星野博美さんの著書『のりたまと煙突』(文藝春秋)を読み、胸に刻みました。星野さんは、新居に勝手に入ってくる野良猫のうち、白い猫を「しろねこ」、野良猫を「のらねこ」と一般名詞で呼び続けたと、こう書いています。

「名前を付けるとしたら、白猫は『しろ』、野良猫は『のら』になるだろうことはわかっていた。が、私はかたくなに彼らを一般名詞で呼び続けた。猫に取り込まれたくないという必死の抵抗をしていたのだ」(16ページ)

 何匹もの野良さんを拾ってきた私には星野さんの気持ちがよく分かりました。たとえ黒い猫だから「クロ」とか三毛猫だから「ミケ」などのごく単純な名前でもダメです。いったん名付けてしまったら最後。その子は“特別な猫”になってしまいます。

 その猫への愛着は増し、「無くてはならない存在」になってしまうのです。でも相手は、家に居着いてくれる確証はない野良さんです。「もしかしたら去って行ってしまうかもしれない」と思うと、その一歩を踏み出すことは、とんでもない勇気がいります。

◆本当は抱っこが大好きな猫だった

 けれど、今思えば、「もっと早く名前を付けてあげればよかった」と思います。「そうしたら、もっとずっと早く愛着がわき、もっともっとかわいがってあげられたかもしれない」と悔いています。

 初めから我が家になじんでいたタリでしたが、反面で人間をとても警戒していました。きっとたくさん怖い思いをしてきたのでしょう。触らせるようになるまで半年、私のひざに乗ってくるようになるまで1年かかりました。

「甘えたいけど、怖い」
「近よりたいけど、信頼できない」

 タリのなかには、そんなアンビバレンツな感情がいつも同居しているようでした。

 でも、本当は抱っこが大好きだったのです。抱っこされたいのにずっとできず、もじもじしながら寄ってきては、のど鳴きしながらスリスリし、私の脚に前足でタッチしては引っ込め、お尻を乗せては立ち上がり……を繰り返していました。