ネリー・アルカンさんについて語った松雪泰子

 『Discover Nelly Arcan-ネリーを探して-』プロジェクト発表会見が10月2日、東京・カナダ大使館(オスカー・ピーターソンシアター)でおこなわれ、女優の松雪泰子らが出席。このプロジェクトでは、日本ではあまり知られてはいないが、処女作『PUTAIN(ピュタン)』がフランスで最も権威のある文学賞「メディシス賞」と「フェミナ賞」の両方にノミネートされた、カナダ出身のベストセラー作家であるネリー・アルカンさんを、「小説」、「映画」、「舞台」の3つのメディアを通して紹介する試みだ。

 本プロジェクトは、今年カナダ建国150周年を迎えたことを記念したもの。ネリーさんは元高級娼婦という過去を持ち、自身の過去をモデルにした小説が仏名門出版社の目に留まり、仏文学界にすい星のごとく現れた。ベストセラー作家となるも「元高級娼婦」というレッテルが外れることはなく、“仏文学界のマリリン・モンロー”とうたわれる存在になるが、2009年に36歳という若さで自ら命を絶った。

 この中で松雪らは、ネリーさんの作品をコラージュした舞台『この熱き私の激情〜それは誰もふれることができないほど激しく燃える。あるいは、失われた七つの歌』についてトークショーをおこなった。

 この舞台ではネリーさんが書いた小説『PUTAIN』、『FOLLE(狂った女性)』、『Burqa de chair(肉のブルカ)』、『L’enfant dans le miroir(鏡の中の子供)』の一部で構成。カナダ人女優で演出家のマリー・ブラッサール演出で、松雪、小島聖、初音映莉子、宮本裕子、芦那すみれ、霧矢大夢の女優6人と、コンテンポラリーダンサーで振付師、映像作家の奥野美和が舞台で共演する。

 『PUTAIN』の翻訳、映画の字幕を監修した松本百合子氏はネリーさんの文学について「少し軽やかな構成にしていたのですが、夏に一から構成し直しました。この作品は原書を開けると、文字がぎっしり詰まっていて。一文が20行から30行連なっていて、文字を追いかけるというか、耳を塞ぎたい叫びだったり、呪文のような繰り返しだったり、行間からネリーの声が聞こえてるような初めて出会った文体でした」と語り、その文学の革新性に感銘を受けた様子。

 松雪は、彼女の文学について「崇高な光の中にある混沌のようなそんなイメージがあります」と表現。普段はコンテンポラリーダンサーとして身体を使い表現活動をおこなっている、奥野は「(ネリーさんは)言葉のアーティストだなと。人から生まれた言葉を、とてもストレートに形にしているなと思います」と語った。

 フランス語をはじめ英語など、ラテン語をもとにした言語は一つのセンテンスが日本語に比べ短い。そのフランス語で1センテンスを20行も30行も連ねるというのは、とても理路整然とした文体ではないし、松本氏が語ったようにどちらかというと口語的な印象を与える、心の叫びをそのまま書きなぐったようなものとなる。

 劇を演出したマリーはネリーさんの文学について「青いイメージです。英語でも、フランス語でも“青”は悲しみを例えた色で、彼女を表すものかなと思います」とネリーさんが持っていた透き通るような青い瞳が、そのまま彼女の感性を表現していたと語った。

 プロジェクトでは9月に彼女のデビュー作『ピュタン〜偽りのセックスにまみれながら真の愛を求め続けた彼女の告白』の新訳をパルコ出版から発売。10月には映画『ネリー・アルカン 愛と孤独の淵で』を公開。そして、11月には舞台『この熱き私の激情〜それは誰もふれることができないほど激しく燃える。あるいは、失われた七つの歌』を上演する。【取材・撮影=松尾模糊】