(写真提供=SPORTS KOREA)

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【前回】五輪開幕が近づく平昌に行く(1)国民性ゆえの過剰投資も…平昌は今、工事中

私が平昌に行った時、海岸に近い江陵(カンルン)では半袖でも十分だったが、高地にある平昌に着くと、薄手のジャンパーを着て丁度良いくらいに、気温が下がっていた。

ネットで検索したように、午前10時を少し過ぎたあたりに、横渓(フェンゲ)のバスターミナルからアルペンシアに向かうバスが到着した。1日4、5本というバスなら、日本の地方都市でもそうだが、客は少ない。アルペンシアに向かうバスに乗った客は、私1人だった。

アルペンシアはリゾート地なので、通常は団体のバスで直行する。公共交通機関を利用する人は多くないのは理解するが、オリンピック開幕まで5カ月足らずということを考えると、やはり物寂しい。

バスは開閉会式の会場であるオリンピックスタジアムや選手村を通る。選手村は、建物はほぼできているが、建物周辺の整備を行っているという感じだ。

長野五輪の負の遺産と平昌

20分ほどでアルペンシアに到着した。

海と山の違いはあっても、韓国のリゾート地である。雰囲気は済州島とどことなく似ている。

ただ、表に大韓障碍人体育会平昌トレーニングセンターと書かれ、多くのトレーニング器具が置かれた、パラリンピック選手強化のための建物があったり、柱に冬季種目国家代表専用宿所という表示がされた建物があったりするあたりは、韓国の冬季スポーツの本場といった感じがする。

アルペンシアリゾートに隣接した敷地には国際放送センターであるIBCの建物がある。その隣には、巨大なテント張りの建物がある。位置関係からして、プレスセンターだろう。これまで韓国の国際スポーツ大会は、コンベンションセンターを使うことが多かったが、このテント張りの建物は、かなり異彩を放っている。

リゾート地の背後にはゲレンデがあるが、私が行った日は、あいにくの天気だったので、ほとんどが雲に覆われていた。

アルペンシアリゾートから、ジャンプ会場まで歩いて30分ほどかかる。

途中、ボブスレーなどが行われるスライディングセンターが見える。建設費用や大会後の維持費を巡り、建設が問題となった施設であるが、コースそのものは、出来上がっているようだ。現在は、会場整備の工事が行われている。

長野五輪のボブスレー会場は、2018年以降は、氷を張らず、運用を休止する予定で、長野五輪の負の遺産の象徴になっている。ボブスレー、リュージュ、スケルトンといったソリ系競技の人口が日本以上に少ない韓国で、維持していくのは容易ではない。

ジャンプ会場へは、緩やかな上り坂を歩いて行くことになる。ゴルフ場の横を歩いて、しばらくするとジャンプ会場に着く。

このジャンプ会場、アウトランの部分に芝生が敷かれ、ジャンプ台方向を除く三方をスタンドで囲う構造になっており、サッカー・Kリーグ、江原FCがホームの競技場として使っている。

ジャンプ会場のすぐ隣に、クロスカントリーやバイアスロン競技の会場がある。クロスカントリーのコースの一部は、ゴルフ場のコースの端を通っている。そのため、ゴルフ場の照明が、グリーンと反対側を向いている所がある。

ジャンプ台の展望台は大会のシンボル的な存在であり、アルペンシアリゾートはもちろん、横渓のバスターミナル近くにあるオリンピックスタジアムからも見ることができる。私が行った日は、天気が悪かったこともあり、展望台が見えたり隠れたりを繰り返していた。

高地ゆえ、天気が悪ければ、雲や霧に隠れやすいのは仕方ない。しかしここは、それに加えて風が強い。

ジャンプ会場から少し離れた所で見ていると、展望台が一瞬見えたかと思うと、すぐ隠れるといったことを繰り返していた。これは競技者泣かせであり、試技の順番によって、運不運がかなり出るような感じがする。

いまだ残る不安材料

自然破壊が問題となった滑降競技の会場である旌善会場にも足を伸ばしたかったが、時間がなかったので、江陵に戻った。

江陵の市役所の上には、大きな五輪マークが掲げられており、大会組織委員会など、五輪関連施設といった雰囲気になっている。

かつては、古びた地方都市という感じだった江陵だが、五輪に向けて整備されたこともあり、街の中は随分小ぎれいになった気がする。

スケート競技の施設が集まるオリンピックパークは、市街地を少し離れ、有名な観光地である烏竹軒、船橋荘、鏡浦台の近くにある。

スタジアムの周辺には、新しいアパートが立ち並んでいる。タクシーの運転手が、「江陵は人口が減りつつあるのに、あんなに建ててどうするのかね」とあきれていた。

スポーツ施設の周りの開発が進み、アパートなどが建つといった光景は、サッカーW杯、アジア大会、ユニバーシードなど、韓国で開催された国際大会を取材してきた私には、馴染みのある風景である。新設の施設が立ち並ぶ、スポーツパークもまたしかりである。

その一方で、大会後の活用の仕方は頭痛の種である。

地方の中小都市に、スピードスケート、フィギュアスケート・ショートトラック、カーリング、アイスホッケー2個と、5個のスケート場はやはり過大である。広域開催など、開催自治体の負担を減らすことを考えないと、冬季五輪の持続的な開催自体が危うくなる。

年末までに高速鉄道・KTXが予定通り開業できるか、競技施設を安全に運用できるかなど、まだ不安材料があるのは確かだ。

それでも、一時の準備状況の遅れを考えれば、よくここまで持ち直したとも言える。

しかし、大会が盛り上がりに欠けるのは相変わらず。

しかも最近、北朝鮮情勢が緊迫する中で、平昌五輪への選手派遣を躊躇する国も出始めている。

こうした動きは、決して軽視できない。国単位での派遣中止はそうないと思うが、参加を拒否する選手が出る可能性は十分にある。

MERS(中東呼吸器症候群)の韓国内での感染拡大が懸念される中で開催された2015年の光州ユニバーシアードでは、優勝候補であったロシアの新体操の選手が、参加しなかった。

ここまで準備してきたのだから、無事に大会を終えてほしいが、盛り上がりに欠ける韓国内、朝鮮半島情勢に対する海外の不安な視線など、問題解決の糸口が見いだせないまま、開催の日は刻一刻と近づいている。

(文=大島 裕史)