フェイスブック ジャパンのオフィスの様子(撮影:今 祥雄)

もうすぐ紅葉の季節ですが、皆さんも、心に響いた景色を写真に撮って友人に送ったり、共有した経験をお持ちだと思います。「紅葉がきれい」とテキストメールを送っていた時代を経て、「ケータイ」にカメラが搭載されてからは、写真がコミュニケーションの中心になりました。

そしてさらなるスマートフォンの普及で、その中心は動画へとシフトし、コミュニケーションはどんどん進化しています。連載の第2回ではコミュニケーションの現在と未来についてお話ししましょう。

コミュニケーションの中心は「モバイル×動画」

日本におけるスマートフォン人口は5800万人を超えました。低価格な端末が増えたこともあり、世界全体の利用者数も急速に伸びています。これは日本中、世界中の多くの人の手のひらに高性能なビデオカメラと、ビデオ再生環境が行き渡っていることを意味します。

現在、Facebook上での一日の動画再生数は80億回以上となりました。紅葉や桜の景色を共有するのも、今や1枚の写真ではなく、モバイルで撮った動画が投稿され、それを見る側もモバイルで再生するのが主流になりつつあります。このモバイルと動画中心のビジュアルコミュニケーションが、今私たちが注目しているトレンドです。

動画の中でも、今Facebookで大きく伸びているのがライブ配信です。今やFacebook上の動画の5分の1がライブ動画となっています。アメリカのあるお母さんが、『スターウォーズ』のチューバッカのマスクをかぶって爆笑する動画は1億6000万回以上も再生され、一躍時の人になりました。友人向けのライブ映像ならではの飾らない感情表現が受けたのでしょう。

バラク・オバマ米大統領(当時)のライブ演説や、Facebookの開発者会議「F8」の中継なども大きな話題となり、ライブ配信のニーズを浮き彫りにしました。オバマ大統領をはじめとする政治家のライブ演説は、政治の透明化という点でも関心を集めています。

もともと写真共有サイトという色合いが強かったInstagramも、ビジュアルコミュニケーションのプラットフォームとして、現在は特に動画の投稿が非常に増えています。1日当たり投稿される動画の数は、昨年と比較し4倍にも増加しています。最近は「ストーリーズ」というコンテンツを投稿後24時間で消える機能が人気で、全世界で2億5000万もの人が毎日利用しています。Instagramユーザーの間では、このストーリーズを活用して、短い動画をモバイルで気軽にシェアしたり、ライブ動画を配信したりして楽しむ使い方がトレンドになっています。

Instagram Storiesフェイスブックさんの投稿 2017年9月27日

VRは「新しいつながりの形」を生み出す

さて、テキスト、写真、動画と来て、次は間違いなくAR(拡張現実)やVR(仮想現実)などの没入感の高いビジュアルコミュニケーションが盛んになってくるでしょう。Facebookも開発を進めているVRテクノロジーでは、たとえば自分が自宅にいたとしても、友人たちがいるニューヨークのグランドセントラルステーションに一緒に旅行しているかのような感覚で、風景や雰囲気を楽しむことができます。また、Oculusのような専用ギアを使えば、これまでにない没入感を味わえるでしょう。


VRの威力!自宅にいながら、ニューヨークのグランドセントラルステーションを歩いているかのような感覚を楽しむことができる

さらに大切なのは、VRは一人で楽しむだけではなく、友人や世界中の人々と同じバーチャルの空間で体験を共有できるということです。私は、VRの斬新な疑似体験だけではなく、その新たな人と人のつながり方、コミュニティのあり方が進化することにも大いに着目すべきだと考えています。

360 Photos on Facebook

360 Photos on Facebook

東洋経済オンラインさんの投稿 2017年9月27日

リアルな空間や体験の共有というところでは、Facebookの「360度コンテンツ」も注目を集めています。2016年からFacebook上で360度写真を投稿できるようになりましたが、現在Facebook上には7000万以上もの360度コンテンツが投稿されています。また、今年8月の機能アップデートにより、特別なデバイスがなくてもFacebookのアプリで簡単に360度写真を撮影し、投稿できるようになりました。

より簡単に360度ライブ配信を楽しむことのできる「Live 360」は、VRにも対応し、今年7月のアップデートで4Kライブ配信も可能になるなど、ますます没入感を高めており、どんな新しいコミュニケーションが生まれるのか、私自身とても楽しみです。

AIが日常のコミュニケーションを変える

先進テクノロジーとしては、AI(人工知能)の技術開発にも注力しています。すでにAIは、Facebookに投稿される動画や写真の解析ツールとして運用されています。たとえば、AIテクノロジーは、あるユーザーから今投稿された動画は、「赤ちゃんが、ユーザーであるお母さんを見て笑っている」という内容だと判断します。その情報の蓄積が、各ユーザーのニュースフィードに最適なコンテンツを表示することにつながるのです。

ですから、Facebookのニュースフィードに表示されるコンテンツは全世界20億人のユーザー、一人ひとりで異なります。またAIは、Facebook上に投稿された暴力的なコンテンツやヘイトスピーチなどの不適切なコンテンツについても判断することに寄与しています。

このAIテクノロジーを応用し、視覚障害を持つ方のための開発も進めています。Facebookはたくさんの視覚障害者の方々にご利用いただいていますが、ビジュアルコミュニケーションが主流の今、視覚障害者の方々にとって投稿内容が把握しづらいことも多々あります。AIで解析した動画や画像の内容を、視覚障害者の方々に音声で的確に伝えることで、あらゆるコミュニケーションを進化させたいと私たちは考えています。

AIテクノロジーはARにも活用されています。カメラエフェクトという機能では、人の顔の輪郭や目、口の位置をAIテクノロジーで正確に認識します。そこにハロウィンのマスクなどの楽しい画像を合成したり、口から炎を噴いた動画にしたりすることができます。

この応用として、テーブルの上のカップを写して、そこを中心にバーチャルなゲームのフィールドが広がり、みんなで空間を共有しながらプレーするといったことも近い将来可能になるかもしれません。

ARゲーム

Facebook連載の第2回記事で使用する動画です。

東洋経済オンラインさんの投稿 2017年9月27日


フェイスブック ジャパンのオフィス壁面に描かれたユニークな絵(撮影:今 祥雄)

ARが、バーチャルだけではなく、オフラインの日常の一部になるような時代もすぐそこだと私たちは考えています。

イメージしやすいところだと、あるカフェに自分のスマートフォンのカメラをかざすだけで、以前来店した友人が書き込んだ「ここのラテはおいしいよ!」「スイーツならこれがオススメ!」といった口コミ情報が表示されるようになったり、冷蔵庫に貼っていた家族に向けた「中のケーキ食べていいよ」といったメモも、スマートフォンを冷蔵庫にかざすだけで見られるようになる日がいつか来るでしょう。

動画もVRもARも単発のトレンドではない

VR、AR、AIなどの先進技術は、今ホットな話題ではありますが、前回の記事でご紹介したFacebookの10年ロードマップでも言及したとおり、やはり10年という長期スパンで開発し、コンテンツやプラットフォームを含めたエコシステムをじっくり作り上げるべきものだと考えています。現時点のコミュニケーションの中心はあくまで動画で、10年かけてVR、ARなどの、より没入感の高いコミュニケーションに移行していくのではないでしょうか。

また「今は動画だ」「もうARだ」「いやVRの時代だ」など、こうしたテクノロジーは個々のトレンドとして語られるケースが多いと感じています。個人的にはそうではなく、写真から動画、そしてVRやARへというテクノロジーの進化によって、人と人のコミュニケーションも進化し、多様化していく一つの大きな流れとしてとらえる方が的確だと感じています。

そして、コミュニケーションが進化して、多様化するに連れて、当然、ビジネスと人のつながり、ブランドと人のつながりの形も変わっていきます。次回はモバイル時代のマーケティングについて考えていきます。