立憲民主党の枝野幸男代表

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 10月2日、民進党を離党した枝野幸男氏は東京・紀尾井町のホテルニューオータニで記者会見を行い、新党「立憲民主党」の結成を発表した。

 同党の代表に就任した枝野氏は、来たる衆議院議員選挙に向けて、広く参加を呼びかけた。同日、枝野氏は民進党を離党することを前原誠司代表に伝えるとともに離党届を提出、3日に総務省に新党の届け出を行うという。

「内諾をいただいている方は何人かいる」(枝野氏)、「前職は10人、新人は数十人」(立憲民主党関係者)との声があり、これから増える見込みもあるという。

 元首相の菅直人氏をはじめ、長妻昭氏、赤松広隆氏、初鹿明博氏、阿部知子氏が離党届を提出し、「これらのメンバーが中核になる」との観測も浮上している。辻元清美氏や赤松グループの前議員も新党参加を検討しているという。

 長妻氏からは、「安倍政権の暴走をストップさせることは大切ですが、その過程で理念や政策を譲ってはならない。今回の理念には共感できます」とのコメントがあった。

 希望の党は日本維新の会と選挙協力を行い、「大阪への立候補は、希望の党としては配慮する」との協定が結ばれたことで、民進党大阪府連はすべて排除された。それを受けて、大阪の民進党前議員には無所属か立憲民主党からの立候補を模索する動きがある。

 電機連合の支援を受ける平野博文氏は立憲民主党に期待を寄せるが、自身は無所属からの出馬を決めた。民進党北海道連には枝野氏に賛同する前議員が多く、立憲民主党からの立候補もしくは共産党や社民党などの支援を受けるかたちでの立候補を検討しているという。民進党北海道連では、「半数くらいは立憲民進党からの立候補があるのではないか」という観測もある。

 しかし、小選挙区制度における効率的な選挙戦は、自公連立政権がしっかりと行っているような選挙協力だ。野党が分散して立候補者が乱立すれば、枝野氏が望む「打倒安倍政権」はかなうべくもない。

 一方で、小選挙区はそのときの“風”によって大きく左右される。リベラル派の票田は全体の約3割といわれるが、インターネット上ではソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を中心に「枝野立て」というリベラル派の意見を代弁するような声が沸き起こっている。枝野氏の勝機は、ここにあるのだろうか。

●「枝野が立て」「リベラルの選択肢をつくれ」

 会見で枝野氏が語った決意表明は、次の通りだ。

「日本の国民生活は『一億総中流』といわれた時代から、格差が拡大し、貧困が増大し、そのことによって社会が分断され、『世界一安全』といわれていた治安にまで、『お互いさま』という言葉に象徴されていた人と人とのつながりがどんどん壊れてしまっています。

 近代国家の大前提である立憲主義が破壊され、法の支配すら脅かされています。みんなで議論し、納得して物事を進めていくという民主主義がおろそかにされています。『共謀罪』に象徴されるように、自由な社会にもさまざまな危機が迫っています。

 こうした状況を変えていく責任、役割を果たしていかなければならない。そして、安心できる立憲主義や法の支配、民主主義や自由、その中で社会の構成員がお互いに支え合い、お互いに認めあう、そんな社会をつくっていかなければなりません。

 そんな思いで私は24年、国会で仕事をしてきました。民主党から民進党へという流れの中で、志を同じくする多くのみなさんと議論し、目指すべき社会像、理念、政策を積み重ねてまいりました。

 今般の総選挙を前にして、さまざまな提起がなされ、動きがあり、結論として残念ながら、希望の党の理念や政策は私たちが積み重ねてきました、私たちの目指す理念や政策の方向性とは異なるものだと判断をせざるを得ません。政治家にとって、理念や政策は何物にも代え難い、譲ってはならない筋です。

 そして、これまでこの総選挙を目指して、地域の中で準備を進めてきた多くの仲間が今回、どうしても選挙に出るなら無所属での出馬、あるいは残念ながら、私から見れば理念や政策が私たちとは異なる政党からの出馬を余儀なくされています。

 さまざまなプロセスの中で、いろんな批判をいただきながらも、私たちの目指すべきあり方、理念や政策の方向性について、期待して応援してくれたみなさん、『期待をしたい』という思いを抱きながら見守ってきたみなさんにとって、選択肢がないという状況になってしまっています。この間、多くの国民のみなさんから『枝野が立て』『その選択肢をつくれ』という激励をいただきました。

 選挙に備えてきたのに、残念ながら『このままでは戦えない』『共につくり上げてきた理念、政策を掲げて戦いたい』、そうした仲間の期待の声もいただいた。私はこうした声に応え、これまで民主党から民進党へ積み重ねてきた理念と政策の方向性をさらにブラッシュアップしながら、国民に訴え、国民の声を受け止める、そんな立憲民主党を結成することを決意した次第です。

 この場を借りて、多くのみなさんに立憲民主党で共に衆院選を戦うことを呼びかけさせていただきます。選挙はもう間もなくです。残された時間は多くありませんが、私たちは国民に自信を持って政策と理念を訴えて、期待に応えていく覚悟です。国民の理解と支援をお願いします」

●「前原代表は“魔女”に魔法をかけられた」

 この後、記者との質疑応答に入った。

 まず、結党にあたって必要なのは人材である。希望の党に合流したものの、公認が得られそうになかったり、思っていたよりも理念や政策が違うために迷っていたりするリベラル派も多い。

「民進党の綱領、理念、政策であれば一緒に戦える。もし一緒にやりたいということであれば、どなたであれ排除はしない」(枝野氏)

 希望の党の小池百合子代表は「排除の論理」を明確にしているが、それとは一線を画したかたちだ。党名を決めた理由については、「権力はなんでもできるわけではない。憲法というルールに基づいて権力は認められている。そうした姿勢を大事にする。立憲主義と民主主義は国民生活が立ち直っていく上で大切なことで、この名前を決めました」(同)とのことだ。

 民進党の両院議員総会では、総選挙では民進党は立候補者を立てずに希望の党から擁立することが決まったが、立憲民主党の結成によって、民進党は3つに分裂したことになる。希望の党から立候補、立憲民主党から立候補、無所属で立候補というかたちだ。そこで、民進党の選挙資金について質問が飛び、枝野氏は「一定の資金をいただけるものと思う」と答えた。

 続いて、筆者が「“背信行為”を行った前原代表や小池代表について、何か言いたいことがありますか」と問うと、「希望の党の政策や理念と異なるので、今回、新たな呼びかけを決意したもので、今あらためてこの間のプロセスについて言うつもりはありません」との回答だった。

 実際、民進党内では「前原代表に騙された」「前原代表は確信犯的に我々を騙した」という怨念に近い声が上がっており、「前原くんの政治生命もこれで終わりだな」「小池という“魔女”に魔法をかけられた前原代表には困ったものだ」という見方も出ている。

 当然、そうした声は枝野氏の耳にも入っていることだろう。しかし、前原代表への恨み節は一切言わず、リベラル派の新たな門出に向けて「打倒安倍政権」という一点を見据えていた。

 希望の党の政策のなかで「脱原発」「消費税増税凍結」はリベラル受けする内容だが、一方で「安全保障関連法や憲法改正への賛同」のほか、優先順位が高いとはいえない「外国人の地方参政権反対」までもが“踏み絵”になっているといわれる。そのため、枝野氏は「残念ながら、(希望の党と)方向性が一緒とは思えない」と前原代表に伝えたという。

●「もっとも力強く、安倍政権を打倒する」

 立憲民主党の政策についてはどうか。枝野氏は「参加するみなさんと相談した上で」と断りつつ、「原発ゼロはリアリズムであり、工程表を示す」「消費税増税は将来的に負担はお願いすべきですが、今の経済状況では国民の理解は得られない」「憲法については議論は進め、未来志向で考えるべきだが、安倍政権の案は受け入れられない」(同)という三本柱を提示した。

 党の綱領や詳細な政策については、民進党のものを「ブラッシュアップしたい」(同)という。喫緊の課題は、安倍政権を1日も早く倒すことだ。枝野氏は、「このおかしな政治運営、マイナスな政治政策に対して、もっとも力強く戦う集団として、安倍政権を打倒する」と力強く語った。

 現時点での選挙戦略は、「小選挙区に全員を立てるのは現実的ではないものの、比例ブロックについては、できれば一定数立てたい」という。立候補者については未定。「幅広い市民の要望を受け、連携して1人でも多くの立候補者を当選させたい」(同)とのことで、ギリギリまで参加者を呼びかけるかまえだ。

 日本労働組合総連合会(連合)の神津里季生会長と面談を行った枝野氏は、「連合と立憲民主党の理念は共通している。私は、本日の面談で民進党時代からの支援は引き続きいただけるものと思っている」と語っており、今後も連合の支援は継続するようだ。

 その連合も、希望の党が民進党前議員を排除する動きには怒りを隠せない。そのため、党全体の応援はせずに個別に対応していくという。旧同盟系が希望の党を支持、旧総評系が立憲民主党を支持、という単純な構図でもない。共産党や社民党との選挙協力が進んでいるケースもあり、地域性なども鑑みて、どの立候補者を支持するか決めることも検討するという。

 ちなみに、小池代表の出馬について、枝野氏は「ほかのどなたが出馬するのかしないのかは、他人がコメントする性質のものではないと思います」と語った。

 立憲民主党が衆院選の台風の目となるのか、注目したい。
(文=長井雄一朗/ライター)